文・写真/市川美奈子(海外書き人クラブ/台湾在住ライター)

四方を海に囲まれた台湾には、35基の灯台がある。「観光灯台」として一般開放されているのは、そのうちの22基。

台湾南部最大の都市「高雄(たかお)市」に位置し、高雄の発展の歴史を100年以上にわたって見守ってきた「高雄灯台」もそのひとつだ。

歴史のある高雄灯台。

1883 年に建てられた高雄灯台は、高雄市旗津(きしん)区旗後(きご)山の頂上にあることから「旗津灯台」「旗後灯台」ともいわれている。

この灯台は、八角形の構造をもつ台湾で唯一の灯台でもある。高さは15.2メートルと決して高くはないものの、白の本体と黒の装飾の凛とした佇まいが美しい。

旗津は高雄市街地の西側に細長く延びている半島で、高雄市の中心部にある「鼓山(こざん)」からフェリーで行くことができる。鼓山からはわずか10分ほどで旗津に到着。170人乗りのフェリーは観光目的だけではなく人々の生活の足としても重宝されており、朝5時から深夜2時まで、多いときには6分間隔で運航されている。非常に便利だ。

フェリーに乗り10分の船旅を楽しむ。

旗津のフェリー乗り場から高雄灯台までは徒歩で15分。フェリー乗り場周辺には、電動サイクルのレンタルショップがひしめいている。料金は2時間500元(約2500円)。灯台を見学した後、旗津島内をぐるっと見て回るのにちょうど良い時間設定だ。レンタサイクルで旗後山のふもとまで行き、そこから先は徒歩で灯台を目指すことにした。「山」といっても旗後山の標高は48メートル。ちょっとした散策にぴったりで、海風が心地よい。急勾配だが、そのぶん山頂に到達したときには達成感が味わえる。

電動サイクルをふもとに置いて山頂へ。
急勾配を登りきり、灯台の入り口に到着。

旗津は海鮮のおいしさに定評があり、高雄市内の人気観光地のひとつ。観光地にある灯台だけあって、灯台本体だけでなく敷地内も非常にきれいに整備されている。敷地内にあるカフェではコールドブリューのコーヒーや高雄灯台オリジナルグッズが販売されており、観光客で賑わっていた。

カフェにはイートインスペースもある。本格派のコーヒーを味わえる。

灯台からは眼下にある高雄港が一望できる。高雄港は台湾全体の約7割のコンテナ取扱量を誇る台湾最大の国際港で、さまざまな国籍の船が出入りしている。港を行き交う大型貨物船を眺めていたら、あっという間に時間が経ってしまった。

眼下に広がる旗津島内の風景も必見だ。建物は黄色、ピンク、黄緑などさまざまな色で彩られており、高雄の青空によく映える。

大型貨物船がひっきりなしに出入りする。
眼下に広がるカラフルな街並み。

高雄灯台は台湾の灯台で唯一、夜間も開放されている灯台だ。夜の帳が落ちる頃、灯台に灯がともる。100年前から高雄の発展を見守り続けている灯台を、ベテランの灯台守たちが日夜を問わず守っている。灯台守たちの日々の勤務に感謝し、灯台を後にした。

今回紹介した高雄灯台のほかにも、台湾最南端の屏東(へいとう)県にある「鵝鑾鼻(がらんび)灯台」や、澎湖(ほうこ)諸島にあって台湾最古の歴史を誇る「漁翁島(ぎょおうとう)灯台」など、さまざまな灯台が「観光灯台」として一般開放されている。

鵝鑾鼻灯台は1881年に台湾最南端のビーチリゾート墾丁(こんてい)に建造された灯台だ。台湾で最も光が強い灯台で、「東亜の光」といわれている。灯台から徒歩15分の場所には「台湾最南端」の碑が建てられている。

鵝鑾鼻灯台がある墾丁国家公園には豊かな自然が広がっており、天体観測スポットとしても知られている。特に4月から6月は南十字星の観測ができるため、台湾内外から多くの天体ファンが訪れている。

敷地内の建物も美しい鵝鑾鼻灯台。

台湾で最も古い歴史を誇る灯台は、1778年に建てられた漁翁島灯台だ。漁翁島灯台が面している台湾海峡は、秋から冬にかけて、秒速10メートルを超える猛烈な季節風が吹き荒れる。漁翁島灯台は、荒れ狂う台湾海峡を往来する船の行く手を照らし続ける存在だ。

灯台の入り口には「幸せのポスト」と書かれたピンク色の郵便ポストが設置されている。ここから手紙を送れば、旅の良い想い出になりそうだ。

漁翁島灯台。郵便ポストが良いアクセントになっている。

それぞれの灯台に、それぞれの歴史あり。灯台を通じて台湾の歴史を感じてみてはいかがだろうか。

高雄灯台
高雄市旗津区旗下巷34号
https://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003121&id=A12-00153
営業時間:10:00~21:00

鵝鑾鼻灯台
屏東県恒春鎮燈塔路90号
https://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003016&id=A12-00141
営業時間:(4月~10月)9:00~18:00、(11月~3月)9:00~17:00、月曜日定休

漁翁島灯台
澎湖県西嶼郷外アン村35隣195号(アンは土へんに安)
https://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003125&id=660
営業時間:(4月~10月)9:00~18:00、(11月~3月)9:00~17:00、月曜日定休

文・写真/市川美奈子 (台湾在住ライター)
民間企業・外務省外郭団体などの勤務を経て、2023年4月から行政機関の職員として台湾に駐在。早稲田大学第一文学部卒。趣味は台湾の観光灯台巡り。日本への一時帰国時には燈光会の「のぼれる灯台スタンプラリー」を楽しむ。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)の会員。

 

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