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暮らし

年をとったら若いとき以上に「おしゃれ」になる|不良老年という生き方

文/印南敦史

自由に生きる、それが「不良」|『不良という矜持』
2000年に初版が発売された『不良老年のすすめ 心意気がいちばん』から19年。『不良という矜持』(下重暁子 著、自由国民社)は、著者がふたたび「不良」をテーマに掲げた新刊である。

「矜持(きょうじ)」とは誇りやプライドを意味するが、それは同時に、自分のなかで密かに芽を出し、水をやり少しずつ育ててきた確固たる信念のようなものでもある。

では、「不良」はどうか? こちらは著者の解釈においては、枠にはまらぬ自由な人間のこと。やむを得ず学校や組織の枠に入ったとしても、やはりそれは自分の人生。

つまり「不良」の裏側には、職業の顔などに染められることなく、自分自身の人生を自由に思う存分生きたいものだという強いメッセージが込められているのだ。

そのような考え方を軸とした本書では、「どうすれば枠にはめられず自由に生きられるか」についてのヒントが対話形式で紹介されている。今回は「おしゃれ」について触れた第五章「不良老年は、『本物』をとことん追求する」のなかから、いくつかを抜き出してみたい。

―――年をとると身なりに無頓着になる人が多い気がします。どうせあとは死ぬだけなんだから、おしゃれになんか気を遣うのは無意味でしょうか?(本書140ページより引用)

この問いに対して著者は「おしゃれは本当に大事」なものであると答えている。特に年をとったら、若いとき以上に気を使うべきだとも。

理由はいたってシンプルだ。若いときなら、なにもしなかったとしても若さだけできれいに見えるだろう。多少おかしな格好をしていたとしても、若さでカバーできるわけだ。

ところが、年をとったらそうはいかない。いい加減な格好をしたりくたびれたものを着ていたりしたら、本当に醜く見えてしまうのである。

たとえば、街中を歩いている年寄り。みんなくすんだような色ばかり着てるじゃない?(中略)
「みんなに合わせて無難な格好しておけばいいや」って考えてるのかしら? そんなふうに適当に済ますんじゃなく、自分に似合う素敵な格好を、気合を入れて考えてほしいと思うんですけど。
特に、男はひどいわね。男の何のお構いもなしっていうのは、本当にどうしようもない。「ボロは着てても心は錦」っていうけど、せめてサマになるボロを着てほしいわよね。(本書140ページより引用)

なかなか手厳しいが、的を射た発言ではある。ちなみに著者のパートナーは、著者以上に身なりに気を使っているのだとか。自宅で食事をする際にも「ジャージやスエットはダメ。きちんとした格好をしろ」と釘を刺すという。

そのため、ふたりで外出するときも、TPOをわきまえた格好をしてくれるので気が楽なのだそうだ。

誰かと連れ立って歩くなら、お互いを引き立て合う格好を考えてみる。おしゃれって、ただ着飾るんじゃなくて、そういうバランス感覚も大事だと思います。(本書142ページより引用)

気が緩んでいると「普段着でいいだろう」などと思ってしまいがちだ。だからこそ、この考え方は心にとどめておきたいものである。

――モノクロやグレーの服ばかりという人は多いと思います。でも、こういう色合いって地味じゃないですか? ますます年寄り臭く見えませんか?本書146ページより引用)

なるほど、そうかもしれない。が、おしゃれなものは概ね地味であると著者は言う。地味なものをシックに着こなせるか、じじむさく、ババ臭くならないように着られるかどうかが大事だということだ。ただしそれは、日本人にとっては難しいことでもある。

おしゃれには、生き方そのものが出る。だから、モデルとはまったく違う、ハッと目を引くような存在感を感じさせる着こなしができたら本当に素敵だなと著者は感じているという。

そして、そういう着こなしができる人は、たぶん日常生活もおしゃれなのだろうと推測してもいる。といっても、気取った生活をしているということではない。普段からさりげなく気持ちよく暮らしたいと言う意識が身についているため、それがよそ行きの服装にも滲み出てくるというのである。

日本には「よそ行き」って言葉があって、普段着よりよそ行きの方が大事と言う風潮があるけど、本当はそうじゃないと思う。
だって普段の方が長くて、普段がその人自身を作り上げていくわけでしょ。だからおしゃれでもなんでも、よそ行きより普段どうしているのかが大事なのよ。(本書148ページより引用)

まったくそのとおりである。また、これに続く「身についていないおしゃれほど格好悪いものはない」という言葉にも納得させられる。そうならないためにも、おしゃれになりたいのであれば、よそ行きに気を遣うのではなく、毎日の普段着にこそこだわるべきだということなのだろう。

* * *

歯に衣着せぬ物言いが痛快で、読んでいると思わず顔がほころんでしまう。いろんな意味での「不良」になるためにも、サライ世代にば読んでみる価値がある一冊である。

『不良という矜持』

下重暁子 著

自由国民社

定価 1,210 円(本体 1,100 円 + 税)

2019年10月発売

『不良という矜持』

文/印南敦史
作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』などがある。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)。

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