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なぜ妻は夫に怒るのか?|脳の仕組みの違いで学ぶ、夫婦円満の秘訣『妻のトリセツ』

文/鈴木拓也

脳の仕組みの違いで学ぶ、夫婦円満の秘訣とは?|『妻のトリセツ』
最近の司法統計を見ると、夫が申し立てる離婚動機として「妻からの精神的虐待」が増加しており、不動の1位「性格の不一致」に次ぐほどまでになっている。
ここで言う「精神的虐待」とは、口調がきつい、急に怒り出す、夫の分だけ家事をしないといった言動を指す。

夫にしてみれば、妻がなぜそこまで怒るのか、真の理由がわからないことが多い。何らかの打開策を提示したところで、妻の機嫌は収まらない。なら、精神的苦痛を味わい続けるより、さっさと離婚したほうが楽では、となる。

ところが、妻の理不尽とも思える怒りは、「きずなを求める気持ちの強さゆえ」だと説明するのは、人工知能研究者で脳科学コメンテイターの黒川伊保子さんだ。

ベストセラーとなった著書『妻のトリセツ』(講談社)の中で、黒川さんは、脳科学的に男と女の感情の違いを分析することで、なぜ妻は夫に怒るのか、夫はそれにどう対応すべきかを、懇々と諭す。

例えば、「夫が気づかない、妻を絶望させるセリフ」というものがあるという。
その代表格は、「言ってくれれば、やったのに」。

昨日から切れている天井の電球を、妻が危なっかしく取り替えているのを見て、こんなセリフを吐こうものなら、妻はいっそう不機嫌になる。しかし、夫には、その理由がわからない。

黒川さんは、脳の性差が夫婦間のすれ違いを生んでいると説く。

女性脳は、大切な対象に意識を集中し、ちょっとの変化も見逃さず、相手が何も言わなくても、何を求めているか、どうすれば相手が嬉しいか、その意図を察して生きている。これは、物言わぬ赤ん坊を育てるために女性脳に装備された能力だから、「察すること」イコール「愛の証」だと信じているのだ。「察してなんぼ」の女性脳にとって、「言ってくれれば、やったのに」というセリフは、察することを放棄した言葉であり、「僕はあなたになんの関心もない」「あなたを大切に思っていない」と同義語なのである(本書83pより)

一方、男性脳には察する機能がついていないと指摘。だから、「言ってくれれば、やったのに」は、男性なりの思いやりから出た発言なのだが、妻には伝わらない。このシーンで言うべき言葉は、「気がつかなくてごめん。僕がやるべきだったね」だという。

これ以外にも、「だったらやらなくていいよ」、「つまりこういうことだろう?」、「今日何してたの?」といった言葉も妻を絶望させるという。思い当たる男性諸氏は、結構多いのではないか。

もう1つ、夫と妻のすれ違いを生む要因になるのが、会話に使う脳の通信回線の違い。黒川さんによれば、女性脳は、「心の通信回線」と「事実の通信回線」の2本を使って会話するという。

例えば、女友達の「事実」を否定しなければならないとき、まず「心」を肯定する。こんなふうに―「あなたの気持ち、よくわかる。私だって、きっと、同じ立場なら、同じことをしたと思う。でも、それは間違ってるよ」。男性目線からすれば、まどろっこしく思える言い方が紡ぎだされることになる。

男性には、「事実の通信回線」しかないそうで、「それは間違ってるよ」と、いきなり結論のみを提示しがちになる。が、これが、女性からすれば「存在そのものを否定された気分」をもたらし、夫婦間の溝を広げてしまう。

さらに、妻の「心の通信回線」を使った言葉は、男性脳の予想を超えた意味を含むことがあるという。一例を挙げると、夫婦喧嘩で妻から発せられる「勝手にすれば」の真意は「勝手になんてしたら許さないよ」という真逆の意味を持つ。

では、そもそも脳の構造が違う夫と妻が円満にやっていくには、どうすべきだろうか?
その処方箋については本書の後半で語られているが、それも女性脳の特性をふまえたやり方となる。その1つとして、結婚記念日を利用するものが出てくる。

まずは予告から。「来月の結婚記念日には、ふたりの思い出のあのイタリアンに行こう」と、少なくとも1か月前には伝えよう。(中略)肝心なのは、「時間」をあげること。言われた日から、記念日までの4週間を、記念日以上に楽しみ、味わい尽くすのが女性脳の特徴だからだ。(本書103pより)

もちろん、記念日当日は、妻にとって後々思い出深き日になるように趣向をこらすのも夫の務めだ。女性脳には、「大切にされた経験や、宝石のような言葉が1つあれば、いつまでもいつまでも大切に持ち続ける」という特性もあり、当日は過去の楽しい思い出を芋づる式に引き出す。よって、この日は妻との関係を良くする「ポイント1000倍デー」と心得て臨みたい。1年に1度の記念日ばかりでなく、携帯メールのやりとりや帰宅時のおみやげなど、日常の中でポイントを稼ぐコツについても披露されているので、心して読んでおこう。

* * *

本書を読んだら、夫婦の仲を末長く良好に保つのに、「こんなことまでしなければいけないのか」と嘆息する夫君も多いことだろう。しかし、「妻がガミガミ言うのは、夫と長く一緒に暮らしたいから」だと、黒川さんは言う。時には、妻の雷に打たれるのも夫の役目と達観すれば、長きにわたる結婚生活も悪くないと思える1冊だ。

【今日の結婚生活に良い1冊】
『妻のトリセツ』

http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000314373

(黒川伊保子著、本体800円+税、講談社)

『妻のトリセツ』
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

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