取材・文・写真/小坂眞吾(『サライ』編集長)
日本橋髙島屋は9月25日に新館がオープンし、都市型ショッピングセンター(S.C.)として新たなスタートを切った。新館は7階建てで、食料品や雑貨を主体にしたライフスタイル重視のフロア構成が、従来の百貨店とは大きく異なる。
ライフスタイルを第一に重んじる私たち、サライ世代のオジさんにとって、どんな魅力があるのか。オープン直前のプレスプレビューで探ってみた。
5階に広がる「オジさんの楽園」
百貨店といえばとかく女性重視で、男性、特にオジさんは疎外感を感じるものだが、髙島屋新館の5階は、全く逆だ。バング&オルフセンのオーディオ、フェリージの鞄、文具、スニーカーなど、エピソードを何時間でも語れそうな道具類が集結。フロアの一角には、超クラシックな理髪店「ザ・バーバー」まであって、まさにオジさんの楽園である。
その「ザ・バーバー」の隣に構えるのが「三陽山長」だ。日本の職人の技で、日本人の足に合うドレスシューズを作り続け、靴好きに愛されるブランドの新店舗は、間口が広く開放的。陳列商品の数をあえて抑えて、ゆったりした空間となっている。これには、顧客が心ゆくまで靴談義に花を咲かせられるように、という狙いがあるという。
店の奥には靴の修理工房があり、ガラス越しに作業の様子をじっくり眺められる。工房には年季の入った機械や道具が所狭しと並び、まる一日でも眺めていられそうだ。
店舗入口には「シューズセラー」が鎮座する。靴6足とシューケアの道具一式を収納できるのだが、本体に青森ヒバ、中の間仕切りに北海道のヒノキを使い、飛騨高山の家具職人が蟻継を駆使して製作するという逸品。
ワイン好きにワインセラーがあるのだから、靴好きにシューズセラーがあってもいいじゃないか、というのが発想のきっかけだとか。下駄箱ではないので、玄関ではなく、書斎や寝室に置いてほしいという。
6足というのは、1週間を1サイクルと考えてのこと。毎週末、次の週の仕事と服装を考えて靴を曜日順に並べ、磨いておく。そんな使われ方を想定している。ヒノキは未塗装の白木で、靴にとって重要な湿気を調節する機能もある。受注生産で税抜90万円から。
このシューズセラーが訴えるのは「靴とともに生きる人生」だ。枕元に置いて毎晩、ウイスキーを飲みつつ靴磨き……。オジさんにしかわからない至福の時である。
【三陽山長 日本橋高島屋S.C.店】
電話:03-6281-9857
営業時間:月〜日 10時30分〜20時
タイユヴァンお墨付きのカーヴはワイン入門に最適
日本橋髙島屋S.C.では、新館オープンに合わせて本館も一部リニューアルする。酒好きの私が惹かれたのは、本館8階に出店する『レ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京』だ。
タイユヴァンは言わずと知れた、パリ最高峰のフレンチレストラン。食とワインの調和を哲学とする。そのタイユヴァンの眼鏡に適ったワインだけを扱うのが、このカーヴ(蔵)だ。パリ、ベイルート(レバノン)に続き、世界で3店舗目となる。
フランス産を主体に、タイユヴァンお墨付きのワインがずらりと並ぶが、1本4000円前後からと意外なほどリーズナブル。知人宅への手土産や、日常のちょっとした記念日にちょうどよい。
店の奥にはワインバーを併設。カウンター席とテーブル席があり、グラスワイン20種類と、アミューズやチーズとのペアリングが体験できる。グラスワイン700円から、ペアリングセット1200円から(ともに税抜)と至ってリーズナブル。ワインの基本を知り、ウンチクを深めるのにうってつけだ。
日本酒については饒舌になるのに、ワインとなると途端に寡黙になる。そんな私のような御仁に、ぜひおすすめしたい。
【レ・カーヴ・ド・タイユヴァン 東京】
電話:03-3548-0858
営業時間:ワインショップ 10:30~22:00、カフェ&バー 11:00~22:00(LO 21:30)
休み:不定(日本橋髙島屋店に準ずる)
※日本橋高島屋S.C.公式サイト
https://www.takashimaya.co.jp/nihombashi/
取材・文・写真/小坂眞吾(『サライ』編集長)