写真はイメージです

40代後半から50代半ばの女性が、「新しいことに挑戦」する様子を目にすることが多い。離婚や結婚、移住や家の購入、転職や独立、最近は留学やリスキリング(学び直し)、もそこに加わる。しかし一方で、心身の“ゆらぎ”に悩む世代でもある。更年期による心や体の乱れ、育児や介護やお金の不安、家族のために献身しても“当たり前”と思われる虚しさ。世間からの疎外感を覚える人もいるだろう。“ゆらぎ世代”の女性が感じている“現実”を、25年間に1万人近くのインタビューを行ったライター・沢木文が紹介する。

最近、美容外科医が増えているとの報道が目立つ。厚生労働省が3年に1度実施する『医療施設静態調査』の最新版(2024年)を見ても、美容外科の診療所数は、2020年は1404施設だったのに、3年間で2016施設と4割増えている。

これには、医師が従来の保険診療では稼げない現実と、利用者が増加していることが重なったことが推測されている。2つの要素が重なり、「直美」(ちょくび)という言葉を見かけるようになった。これは、医師が国家試験に合格した後、2年間の臨床研修後、“直接”美容外科に就職することを意味する言葉だ。

東京23区内に住み、フリーランスでバイヤーやPRの仕事をしている由紀代さんは、「若々しく綺麗でいたい、現役でありたいもの。更年期で揺らぎ始めてから、特に美容外科に助けられてきた」と言う。

【これまでの経緯は前編で】

眉間やおでこに注射を打ち、シワを伸ばす

若々しく華やかな容姿を保っている由紀代さんが、美貌にうつろいを感じたのは、46歳の時。それまではエステなどで若く見える外見を維持していたが、とうとう間に合わなくなったのだ。

「おでこのシワを伸ばすのは10万円くらいだったかな。ボトックスという薬液を皮膚の中に入れてシワを目立たなくさせるんです。ただ、“安くなる”という理由から、あるクリニックにお願いしたら、担当は腕が未熟なお医者さんだったみたい。要はその医者の練習台ってことです」

注射を打って、シワは伸びたものの、薬液を入れすぎたようで、眉が動かなくなってしまったという。

「眉はとても大切で、表情を作るのに大きな意味があるんです。それがパンと固定してしまうと、怖くなる。この時に“腕がいいお医者さんを選ばなくてはダメなんだな”と痛感しました」

時間の経過とともに、その効果はなくなっていく。3か月ほどで元に戻ると、別のクリニックの門を叩いた。

「当時ネットがないから、口コミでいい病院を探しました。いろんな人に話を聞くと、多くの人が美容施術を受けている。と言っても、さすがにメスを入れたり、骨を削るまでしている人は少数派。私のように“ちょっと若く”いたい人には、美容医療が欠かせないんです」

少し若くなり、自分に自信がつくと、恋人もできる。由紀代さんは46歳の時に50歳の経営者と知り合い、4年間同棲をする。

「このまま結婚するのかと思っていたら、相手には15年以上別居していて顔も見ていない妻がいたんです。あの時に、私は怒りが爆発。植木鉢を投げて、マンションをめちゃくちゃにしてしまった。今の体力ではできません。50歳はまだ若いから、あれだけ怒れたのでしょう」

それには、更年期の揺らぎもあったという。気持ちのアップダウンが激しく、相手の些細な行動も許せずに、怒鳴り散らしたこともあったという。

「更年期は最後に“女”が爆発する期間というか、自分でも暴れ馬みたいだと思っていました。怒った自分に自己嫌悪になって寝込んだこともありました。私の存在そのものを、自分で否定するような日々……よく生きていたと思います」

ホットフラッシュという汗が滝のように流れる体の変化や、だるさにも悩まされた。

「40代後半から50代前半は揺らいでばかり。あと、仕事とお金の不安もありました。まだ、ジュエリーのバイヤーをしていたのですが、景気が本格的に悪くなり、取引先が倒産したり廃業したりして収入が減った。さらに、体力もセンスも“ババア”になっていることに、公私ともに直面するんです。人生が中途半端で風に流されているような揺らぎは、経験しないとわからないと思う」

そんな揺らぎを支えたのが、美容だったという。

【美容があれば、男は要らないかもしれない……次のページに続きます】

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