「こんな人生を続けたくない」と思った
いじめ加害者は一切罪悪感を持つことなく、いじめ被害者は自分を無価値だと追いつめていく。子どもの頃に比べて「自立しなくてはいけない」という思いが芽依さんの中に強くあったという。
「学生時代と違って、会社だけがすべてじゃないとはわかっていました。高校や大学のときにできた友人もいましたし。でも、社会人になっても人付き合いがうまくいかない自分は本当にダメなんだなって。『仕事ができない』という周囲からの言葉で大人として不合格をつけられた気持ちになりました。
ちゃんとした大人になれないんだったら、もうこんな人生続けていても意味がないって思うようになりました。当時は一度就職したら3年は働かないと再就職できないと言われていましたから」
朝出勤のときに着替えようとすると、立ちくらみや吐き気によって起き上がれなくなった。当時実家で暮らしていた母親の前で泣いてしまったことで会社での芽依さんの状況が伝わってしまう。
そして、芽依さんは再び母親に助けられる。
「母親は私が働いている会社と話をしてくれて、辞めることができました。私は母親に話した後に会社には一度も行っていません。すべて親が行なってくれました。
過保護とか、モンペ(モンスターペアレント)と言われるかもしれませんが、私はそれで助かりました。あのとき、社外に友人はいたのに、相談することもできなかった。親が気づいてくれなければ……、どうなっていたかな。少なくとも、今笑えている自分は想像できていませんでした」
芽依さんは「いじめられている理由を周囲に言えないのは、ただ恥ずかしいから。いじめられていることは自分の恥部であり、さらけ出すことで余計惨めになってしまうから」と語る。
いじめは受けた側にだけ傷となって残る。芽依さんは実際にいじめ加害者だった小学校時代の過去の話はよく覚えていなかった。今回の話を聞いて、いじめ被害者だけでなく、加害者に対する教育も必要だと強く感じた。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。