仕事の挫折を乗り越えマンション購入で人生をリセット
恋愛離れの原因は“縁”によるものだけではなかった。配属先で売り上げを伸ばし20代で店長に抜擢。仕事ぶりが評価され、ワンクラス上のブランドへ異動が決まったことも大きい。満たされないプライベートの穴を埋めるかのごとく、がむしゃらに仕事へ打ち込んだという。
「入社した頃は30歳までには絶対に結婚して会社を辞め主婦になろうと決めていましたが、仕事が面白く、実際30歳を迎えた時は自分の人生を考えられる余裕さえなかったですね」
ところが36歳になった時、彼女が担当していたブランドが売り上げ低迷によって廃止に追い込まれた。
「ブランド廃止はショックでしたね。あの頃は会議のたびに上から叱責されるストレスを、部下に辛く当たって解消するような毎日で、人間関係もボロボロ。入社して初めて挫折を味わいました。真っ先に会社を辞めることを考えましたけど、身の振り方を相談するパートナーがいない。この先の生活を考えると思いきれないんです。当時、相手がいたら迷わず結婚していたと思いますね」
結局は退職に踏み切れず、婦人服ではなく生活雑貨を扱うショップの店長として新たなスタートを切った。業績は悪くなかったが、自分の手腕で顧客を開拓するこれまでとはまったく違う接客に戸惑いを覚えた。マニュアルを伝えれば、誰もが同じように回せる仕事にやりがいを失っていた。
「そんな悩みを、独身の元上司の女性に相談したところ、“結婚の予定がないなら私のように家でも買ったら。ローン返済しなきゃならなくなるから、仕事のモチベーションが上がるわよ”とアドバイスされまして、38歳の時、思い切って横浜市内に20年ローンでマンションを購入しました。父が“この先、結婚しても何もしてやれないよ”と、頭金の一部を出してくれた時はうれしいような、寂しいような複雑な気持ちでしたね」
それでも上京から20年目にして手に入れたマイホームは快適だった。窓を開けると隣家の壁が迫ってくる今までの賃貸物件と違い、高層階の部屋は見晴らしがよく、遠くみなとみらいまで見渡せました」
20年のローンも重荷ではなかった。逆に「あと20年、何とかがんばらないと」と、やる気がわいてきたという。
【しかし、マンションを買って開けた新たな人生プランがまさかの展開に…~後編~に続きます】