俳優の卵だった夫はその夢を諦めてプロポーズをしてくれた
最初に暮らしたのは家賃6万、築30年以上のアパート。その1つ下の階に暮らしていたのが今の夫。東日本大震災のときに顔見知りになり、仲良くなったという。当時の夫は俳優を夢見る劇団員だった。
「2歳下で、第一印象は美青年という感じ。背が低かったこともあって、とにかくかわいかったですね。震災のときに、私は当時まだブラウン管テレビを使っていたんですが、それが割れてしまって資源ごみに出すのを手伝ってくれたり、ティッシュペーパーが一時品切れになったときに家にあったストックをおすそわけなど、助け合っているうちに仲良くなりました。
付き合ってからはお互いお金はなかったけれど、一緒にいるのが楽しかった。他に東京で仲が良い人もいなかったのでほぼ一緒にいましたね」
夢追いな男性との結婚は遅くなるというが、結婚したいと言ってきたのは夫のほう。芽が出ないと諦めて就職すると同時にプロポーズを受けたという。
「夫は高校卒業後に大学に受かっていたのに、俳優になると親の反対を押し切って上京してきて、親とは絶縁状態。最初こそ下北沢のバーで仲良くなった人から劇団に誘われてとんとん拍子だったそうですが、そのときだけ。いくらオーディションに受けても受からない、劇団でもいい役はもらえないで嫌になったみたいでした。
すべてを諦めたから、その代わりにというようなプロポーズだったんですけど、私も30歳になっていたから早く結婚したかったし、煮え切らない劇団員よりも正社員になってくれたことを喜んでいました。
でも、正社員になったことで今まで断絶状態にあった義両親との交流が復活して、2年後に地元に帰ると言い出されてしまって……」
結婚を機にお互いの両親と和解。今まで絶縁状態だったからこそ見えなかった関係が明らかになる。【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。