文/柿川鮎子

愛犬家にとって、春は本格的な「予防」の季節。狂犬病、ワクチン、フィラリア予防と、やらなければいけないことが盛りだくさんです。

「今年はコロナのせいか、ステイホームの影響か、暖かくなったのが早いせいか、ペットの健康管理意識が高まっていて、フィラリア検査や狂犬病の予防接種にいらっしゃる方が増えてきていますよ」と言うのが、ひびき動物病院院長の岡田響先生。今回はコロナ禍の愛犬の健康診断を効果的に行うポイントを教えて頂きました。

ポイント1:フィラリア予防の検査を効果的に使おう

犬を飼育していれば必ず行うのがフィラリア予防です。フィラリア症は犬にとって長い間、恐れられていた病気でしたが、効果的な予防薬が普及して、ほぼ防げる病気となりました。

フィラリア予防のためには必ず血液検査を行います。これは、フィラリアに罹患していないかを確かめるために必要な検査ですが、岡田先生はこのフィラリア予防の検査を健康管理に役立てて欲しいとアドバイスしてくれました。

「いろいろな考え方はありますが、私自身はフィラリアの検査は毎年の健康診断の一部として認識していただけるよう、飼い主さんに推奨しています。

ペットの犬猫の健康診断は1年に1回、中年以降は1年に2回が推奨されていますので、そのうちの1回として、良い機会になると思います」と岡田先生。

確かに、健康診断を2回受けるのは大変ですが、フィラリア予防の検診は必ず行うものなので、それを1回の健康診断に加えてしまえれば、抵抗なく年2回の検診を受けることが可能になります。

「今時期に実施するフィラリア検査と一緒にできる検査は、それ単体では簡易的な検査ではありますが、普段おうちでは見えない愛犬の状態を、きちんと診ることができる貴重な機会となります」(岡田先生)。

ポイント2:健康診断は検診前の準備が重要

一般的な健康診断では、獣医師による触診や目視による身体検査、血液検査、尿検査、糞便検査、レントゲン検査、超音波検査、ホルモン検査、眼検査、心電図、体脂肪測定などさまざまな検査が受けられます。

健康診断の内容と費用などがホームページに記載されているところもあるので、どんな検査を受けられるのか、事前に調べてみるのもよいでしょう。

岡田先生は「良い健康診断を受けていただくために、動物の無事を知ることで、飼い主さんが心配に思っていることを解決できるような検査を行うことを意識しています。お口が臭いなとか、お尻をこするとか、気になるところはいつも教えてほしいです」と言います。

「飼い主さん自身が愛犬のどこを診てもらいたいのか、希望がある場合は事前に先生に伝えておくとよいと思います。そして毎日の生活で、愛犬の様子に変化があったら、それを必ず伝えることです。

例えば食欲の変化やおしっこ・うんちの変化、お散歩の時の歩き方、何度も舐めて気にしている場所や、耳が臭い、 目やにが多い、体にしこりが見つかった、などなど、ぜひ教えて欲しいですね。

こうした飼い主さんが気づく愛犬の変化は、もしかすると病気のサインかもしれません。診察室ではなかなか説明しにくい、気になる行動や仕草は、スマートフォンなどで動画撮影しておくと、検診の時に役立つことがあります」と、事前の準備の重要性を説いています。

ポイント3:健康診断の日の食事と水に注意

健康検査を受ける日は8時間以上の絶食が一般的です。厳密には12時間以上が理想だそうです。確かにヒトの人間ドッグや内視鏡検査でも、半日以上の食事制限が普通となります。

犬や猫も、食事に左右される血液検査の項目があります。また、画像検査では、食渣(しょくさ、食べ物のカスなど)や便の陰影が診断の邪魔になることがあります。8時間、絶食をしても、胃腸の中に食事内容物が残っていることも。せっかく検査を受けるのですから、正確な情報を可能な限り集めたいものですね。

とはいえ、犬に「明日検査だからごはんは食べられない」と理解してもらうのは無理です。岡田先生も、「私としては、せっかく検査を受けるのだから、正確な結果が知りたいところですが、検査前の注意事項をお伝えすると『先生!朝ごはん抜きは無理〜』って言う飼い主さんは必ずいらっしゃいます」と言います。

ひびき動物病院では「それぞれの飼い主さんのご家庭の事情があるので、一通りお話した後で、うちではできる範囲で実施しています」と柔軟に対応されていました。

また、万が一、食事制限中にこっそり食べてしまった場合、知らなかったことにして、検査を受けて大丈夫なのでしょうか?「いいえ、検査すれば中身が見えちゃいますので、事前に言ってもらったほうがいいです。診断力に差が出てしまいますから。食事制限されているのに食べてしまった場合は、その日の検査は延期にしたほうがいい場合もありますよ」と、岡田先生。かかりつけの先生には正直に告白しましょう。

さらに、「検査を受けに来てくれる飼い主さんは、それだけ愛犬のことを大切に思っている証拠ですから、良い飼い主さんです。食事制限ができずに食べちゃっても、そんなに怒る先生はいないと思いますよ」と安心させてくれました。

飲水は3時間前までは大丈夫な病院が多いようです。岡田先生も「暑い時期などは熱中症の予防の観点からも、必要以上の飲水制限はおすすめできません。ただし、尿検査に差がでることがあるので、いつも飲んでいるお水の1日量と検査の日に飲んでいそうな量を、一緒に教えてほしいです」と、飲水のポイントも教えてくれました。

ポイント4:費用は前もって聞いておく

一般的なおまかせコースがある場合はそれを利用するのも良いでしょう。病院ごとに活かせる部分が強調されたオリジナル健康診断メニューもたくさんあります。

そして、せっかく受けるのならば、先生に確認や相談をして、必ず受けてほしい検査と、うちの子に必要になる検査があるのか?、などの検査項目を決めて、検診を受けた方が良いでしょう。

健康診断は予約が必要なコースと、当日すぐにできるコースがありますが、内容を決める時に、おおまかの費用を聞いておくと、安心です。

岡田先生によると、「飼い主さんは『余計な検査はされたくない』ですし、私たちも『余計な検査はしたくない』との考えで実施していますが、省いてしまった検査で病気を見逃してしまえば、これほど大きい損失もありません。ですから全部できればそれに越したことはないのですが、かかりつけの先生と『うちの子はどの検査を選ぶべきか』を相談されるのも、効果的な検診を受ける一つの方法です」と言います。

ポイント5:検査を受けっぱなしにせず次につなげる

健康診断の目的は、「飼い主さんと愛犬が元気で長生きできるようにするため」に行うもの。病気の早期発見にも役立ちます。そしてそれは東洋医学でいえば未病と養生というところにもつながっていきます。

健康診断で愛犬の健康状態の確認ができてホッとしたら、『さらに良い状態や楽しい生活を送るためには、何をすべきか』をもう一歩踏み込むべきだと岡田先生はアドバイスしています。「健康診断を受けて、納得してそれっきりになってしまう飼い主さんもいらっしゃって、これがとてももったいない気がします」と言います。

「毎日の生活の中で、ちょっとしたこと、たとえばおやつの習慣や、食事の偏りの補正、お散歩コースの見直しなど、少しの工夫で健康維持につながるケースがあります。

うちの子に合ったほんの少しの改善で、さらに病気を防げたり、健康な状態を長く保てるかもしれません。かかりつけの先生とコミュニケーションをとって、こうした(うちの子に適した)アドバイスをもらえたら良いなと思います。気軽に色々聞いてみて欲しいですね」。

「今年の健康診断は、コロナで人と犬に大きなストレスがかかった後なので、健康診断に関して私は例年以上に注視しています。どんな変化が起きているのか?その傾向がわかれば、飼い主さんにもより明確な助言が可能になるかもしれません」と岡田先生も期待しています。

コロナ禍で生活に変化があった飼い主さんには、ぜひとも受けて欲しい愛犬の健康診断。コロナ第4波を意識しながら、愛犬と長く楽しく過ごしていくための手段として、ぜひかかりつけの動物病院と健康診断について、相談してみてください。


取材協力/岡田響さん(ひびき動物病院院長)
神奈川県横浜市磯子区洋光台6丁目2−17 南洋光ビル1F
電話:045-832-0390
http://www.hibiki-ah.com/

文/柿川鮎子 明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

 

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