選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
アフリカ南東部に浮かぶ大きな島、マダガスカルの音楽といっても、ほとんどの人は想像もつかないかもしれない。『聖なる木』は、マダガスカルのギタリスト3人によって組まれたマラガシー・ギター・マスターズによる、ギターのクールで美しい響きを楽しめるアルバムだ。
マダガスカル南部の音楽スタイル、ツァピキを代表するテタ・ジャン・クロード、モザンビーク海峡に面した港町に生まれ、アンタンルイ族の伝統音楽を背景とするクリサン・ザマ、エレクトリック・ギターを操るマダガスカルのジミ・ヘンとも呼ばれるジョエル・ラベスル。
彼らの一糸乱れぬアンサンブルは心地よく、また研ぎ澄まされた都会性もあり、ブラジル風かつジャズ風でもある、愁いを帯びたメロディが耳をとらえる。
マダガスカルでは演奏する側と聴く側という分け隔てをする考え方がないのだという。そんな雰囲気を想像しながら耳を傾けてみるのも楽しい。
【今日の一枚】
『聖なる木』
マラガシー・ギター・マスターズ
2017年録音
発売/アオラ・コーポレーション
電話:03・5336・6957
販売価格/2500円
文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)
※この記事は『サライ』本誌2018年10月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。