文/印南敦史

当然のことながら、栄養状態がよければ実年齢よりも若々しく見えるに違いない。そもそも栄養状態を底上げすることができれば、加齢とともに高まっていく健康不安を抱えながら生きるよりもずっと建設的である。
では、どうすればいいのか?
意外なのは、「健康長寿を全うするためには牛乳がいい」という考え方だ。
『医師が教える長生きする牛乳の飲み方』(和田秀樹 著、アスコム)の著者によれば、牛乳は完全栄養食に近く、たんぱく質を補いやすく、免疫細胞の材料となるコレステロールがとれるなど、さまざまな効能があるというのだ。
牛乳の健康効果8
1 骨や歯を丈夫にする
2 筋肉をつくる
3 腸内環境を整える
4 血圧を調整する
5 ストレスを緩和
6 睡眠の質を高める
7 食べ過ぎ防止
8 美肌効果
(本書72〜73ページより抜粋)
しかも、牛乳はとくに中高年によいのだとか。
1日のたんぱく質の摂取目標の目安として、少なくとも体重1kgあたり1g以上が望ましいと私は考えています。例えば、体重60kgの人であれば60g。これはあくまでも最低限の量になります。中高年以降はたんぱく質の吸収がうまくできなかったり、とれていても体内でうまく使えなかったりする人のなんと多いことか!
ですから、意識して多めにとることを私は強くおすすめします。高齢者なら、体重1kgあたり1.2gを目安に、60kgの人ならできれば72gを目指してほしいところです。(本書47ページより)
タンパク質の摂取量が少ないと、筋肉量が減ることになる。すると、歩く速度が遅くなったり、握力が弱くなったり、階段の上り下りがしんどくなるなど、日常生活が不便になるだろう。
たんぱく質不足は、中高年以降の人にとっては健康を脅かす大きなリスクがあります。肉をたくさん食べるのはしんどいというときでも、牛乳はお手軽なお助け食品になります。胃腸が弱い人や食欲がなくても比較的飲みやすく、ラクにたんぱく質を補給できます。「毎日牛乳」を心がけ、水代わりに飲んでほしいくらいです。(本書48ページより)
牛乳を嫌う人は、コレステロール値が上がることを心配しているのではないだろうか。事実、肉を多く食べるアメリカでは、コレステロール値が高いと急性心筋梗塞のリスクが高まるといわれている。しかし、これは食生活の異なる日本人にはあてはまらないと著者は断言している。
かつて日本応用老年学会理事長を務めた医学博士・柴田博教授の行った調査で、コレステロール値が低いと死亡率がグンと高くなることがわかっています。対象となったのは、総コレステロール値が220mg以上でシンバスタチンという薬を投与された35〜70歳の男性と、閉経した女性です。(本書54ページより)
注目すべきは、血中コレステロール値が180mg/dl未満のグループは死亡率が高いこと。200〜279 mg/dlの3つの群の死亡率においてはほぼ同じであるものの、199mg以下になると高まり、180mg以下では一気に高まるというのである。
ちなみに現代の医療では、総コレステロールの基準値は144〜199mg/dl、要注意値は200〜259mg/dl、異常値は260mg/dlとされているそうだ。
たとえばコレステロール値250mg/dlで「要注意」とされ、コレステロール降下剤を処方される。たしかに280mg/dlの群は心筋梗塞の死亡率が上がるが、この群には先天性のリスクである「家族性高脂血症」を持つ人が多く含まれている。
そのため、この人たちを除くと、「コレステロール値が高いのはダメ」という考え方はとても危険だということがわかると著者はいうのである。
私は常々言っています。
「コレステロール値を下げるな」と。
コレステロール値が高くなると思われて悪とされ嫌われている牛乳や肉は、むしろ飲んだり食べたりしたほうがいいのです。
(本書55ページより)
バランスのよい食事をとることは大前提だが、それでも栄養素は足りていないと考えたほうがいいそうだ。だからこそ、補助的に飲むものとして牛乳はとても便利だというのである。
ヨーグルト、豆乳、アーモンドミルク、オーツミルク、ココナッツミルクもよいようだが、牛乳を中心にこれらも織り混ぜつつ、食生活を改善してみるべきかもしれない。

和田秀樹 著
1540円
アスコム
文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。
