文/鈴木拓也
新潟県に元気なシニアが多いワケ
後期高齢者の1人当たりの医療費が全国で一番少ないのが、新潟県。
それだけ元気なシニアが多いということだが、その理由を探究して、答えは「食生活」にあると発見。書籍『医師がすすめる新潟式食事術』(アスコム)を著したのが、医師・五十嵐祐子さんだ。
新潟県民の食生活を統計で見ると、根菜、豚肉、枝豆の消費量が全国1位。魚介類や発酵食品もよく食べるなど、際立った特徴が多い。そして、これらの食材は、健康維持・増進に効果的なものばかりだという。
例えば、根菜。栄養学的に、根菜は食物繊維が豊富。しかも、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がバランスよく含まれている。前者には、腸内細菌の善玉菌を増やし、後者には悪玉菌の増殖を防ぐ効果があって、腸内環境を整えてくれる。新型コロナウイルスの流行で、免疫の重要性がクローズアップされているが、免疫機能の良し悪しにも腸内環境が大きくかかわっているのをご存知の方も多いだろう。
「だからこそ、根菜をたくさん食べてほしい」と力説する五十嵐さんだが、根菜をおいしく食べられる新潟の郷土料理が「のっぺ」だ。
のっぺは、同じ新潟県内でもバリエーションがあるが、サトイモをメインに、ニンジンやゴボウなどの根菜を小さく刻んで、だしで煮込むのが基本のつくり方。
実は、サトイモの消費量も新潟県が1位。この根菜には、ガラクタンという「免疫力活性促進作用や脳の活性作用、さらに消化促進作用」、「血圧を下げ、血中のコレステロール値を下げる働き」を持つ物質が含まれているという。
新潟県民の健康の秘密は、のっぺにかぎらない。二日酔い対策に効く枝豆をつまみとしてよく食べ、たんぱく源としてビタミンB1豊富な豚肉や抗酸化物質を含む鮭が、しばしば食卓にのぼる。ふだんの食事がすぐれて健康的なのが、この県の食生活の特色になっていると、五十嵐さんは、本書の中で指摘する。
根菜をふんだんに用いた「長生きののっぺの素」
ここで紹介する「長生きののっぺの素」は、五十嵐さんが、上越地域医療センター病院の栄養士長・水沢麻奈美さんと共同で開発したレシピ。食物繊維の多い数種の根菜・きのこに鶏ささみ肉と干し貝柱を加えた、ボリューム満点で風味もよいおすすめ料理だ。
【材料(5パック分)】
・サトイモ:中5~6個(200g)
・ニンジン:中1本(100g)
・レンコン:100g
・タケノコ(水煮):1/2パック(100g)
・かまぼこ:4cm(50g)
・鶏ささみ肉:100g
・しいたけ:中4個(50g)
・まいたけ:1/2パック(50g)
・干し貝柱:5~10個
・だし汁:500ml
・酒:大さじ2
【作り方】
1 食材はすべて、ひと口大で同じような大きさに切る。サトイモは皮をむき塩もみをし、ぬめりを取っておく。干し貝柱は、酒に30分漬ける。
2 だしとほぐした干し貝柱を酒ごと入れて、ひと煮立ちさせておく(耐熱容器に入れてレンジで1分加熱でもOK)。
3 サトイモ、ニンジン、レンコン、タケノコをやわらかくなるまでゆでる。
4 ささみ肉もしっかり中まで火が通るまでゆでる。
5 3、4としいたけ、まいたけ、かまぼこをフリーザーバッグ5枚に均等に入れ、2も均等に分けて入れる。
6 口を開けて粗熱をとる。
7 中の空気を抜きながら口を密閉し、冷凍庫で凍らせる。
本書には、この「長生きののっぺの素」を使うアレンジ料理が幾つか掲載されている。そのひとつ、10分でできる一番簡単な「お手軽のっぺ」の作り方がこちら。
【材料(2人分)】
・のっぺの素:1パック
・めんつゆ(3倍濃縮):大さじ1
【作り方】
1 食べる前日に、のっぺの素1パックを冷蔵庫に入れる(当日であればパックごと流水で解凍)。
2 鍋にのっぺの素を入れ、めんつゆを入れる。
3 ひと煮立ちしたらできあがり。
健康効果抜群のナスを堪能できる「新潟ご飯の素」
一世帯あたりの野菜消費量でも全国トップの新潟県。特に「新潟県民は無類のナス好き」だという。
ナスには、三大栄養素(炭水化物、脂質、たんぱく質)やビタミン、ミネラルがほとんど含まれない。しかし、五十嵐さんは、特筆すべき栄養素として皮に含まれるナスニンを挙げる。
このナスニンには強い抗酸化作用があります。そのため活性酸素による細胞の損傷を抑え、アンチエイジングや抗がん作用があるとされています。またコレステロールを抑制する働きが認められています。(本書117pより)
また、全般的に栄養分が少ない点が、ダイエット食として重宝できる側面がある。つまり、「全体のカロリーや糖質量を抑えてボリュームアップ」が可能な嵩増し食材として活用できるわけ。
そんなナスの持ち味を生かし、健康食材の豚肉やきのこ類を加えたのが、「新潟ご飯の素」だ。
【材料(5人分)】
・ナス:250g
・豚ひき肉:100g
・エリンギ:40g
・しめじ:30g
・えのき:30g
・サラダ油:適宜
・砂糖:大さじ1.5
・みりん:大さじ1.5
・しょう油:大さじ2
・酒:大さじ1.5
・はちみつ:大さじ1/2
・水溶き片栗粉:水小さじ1~2に、片栗粉小さじ1を溶いたもの
・豆板醬(またはかんずり):小さじ1/2(お好みで加減)
【作り方】
1 ナスは縦に4等分した後、2cm幅程度に切り、水に10分漬けてあくを抜く。きのこ類は2~3cm幅に切る。
2 フライパンにサラダ油をひき、豚肉を炒め、豚肉に火が通ったら、きのこをすべて入れてしんなりするまでよく炒め、ナスを加えてさっと炒める。
3 豆板醬以外の調味料をすべて混ぜ合わせ、水溶き片栗粉を加えて、2にからめる。
4 最後に豆板醬を加えて味を調える。
※タッパーに入れて、5日間の冷蔵保存可(冷凍もOK)。
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五十嵐さんは、故郷の新潟に帰省するたびに、畑仕事や釣りなどにいそしむ、元気なお年寄りの多さに感心したという。また、医師としての20年の経験の中で気づいたのは、「健康のベースは食事にある」ことだとも。本書の中には、他にも、普段の食卓の参考になるアドバイスやレシピが掲載されている。健康長寿の多い新潟の人たちにならい、新潟式食事術を日ごろの食生活に取り入れてみてはいかがだろう。
【今日の健康に良い1冊】
文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)で配信している。