
国産コーヒー豆のいま
コーヒーの栽培に適した地帯をコーヒーベルトと呼ぶ。赤道を挟み北緯25度と南緯25度の間に、コーヒーを栽培するほとんどの国が含まれる。今回訪れた沖縄( 島嶼部含む)は北緯24〜28度で、コーヒーベルトの端に位置している。
コーヒー栽培に果敢に挑む農園が現れており、沖縄本島北部の名護市の「振慶名(ぶりきな)珈琲園」もそのひとつだ。現在は約1000坪の農園に、約300本のコーヒーノキを定植させ栽培している。
沖縄にコーヒーが伝わったのは明治初期とされる。昭和初期に木村珈琲(現キーコーヒー)が栽培に着手したが途絶えてしまった。
「沖縄のコーヒーが知られ始めたのはここ10年ぐらいでしょうか」と語るのは、農園主の宮城禎明さん。宮城さんがコーヒー栽培を始めたのは2015年のこと。「始めた当初は、沖縄の環境下での栽培がどれほど困難なことか充分に理解していなかった」という。
標高が低く沖縄の赤土は排水性が悪く、気候も夏は暑すぎ、冬は寒すぎることから、沖縄では高品質なコーヒーは作れないといわれていたという。
スペシャルティコーヒー認定
宮城さんは先達から技術指導を受けながら、土壌改良などに取り組み2020年に初収穫にこぎつける。そして翌年に初出荷、2022年に「スペシャルティコーヒー」(※国際審査機関「コーヒー品質協会(CQI)」が認定する最高品質のコーヒー)の認定を受けた。久米島のしらせコーヒー園と同時の認定で、2016年の安田(あだ)珈琲(沖縄県国頭村)に次ぐ国内2番目の快挙であった。


「新しいコーヒーの産地として沖縄を確立させたい。そのために、日々邁進します」──宮城さん
出だしから、とんとん拍子にいっているように見える振慶名珈琲園だが、自然が相手の農作物であれば、不作の年もありすべてが順風満帆とはなかなかならない。なにより、完全なオーガニック栽培を貫きながら、栽培から収穫、精製のすべての工程を、宮城さんがひとりでこなすのである。
宮城さんに収穫から生豆(なままめ)ができるまでを見せてもらった。コーヒーチェリーは色や状態を見極めながら、手摘みで収穫する。そののち、皮むき、脱殻を経てやっと生豆が現れるのであるが、この間に熟成、発酵、乾燥、選別を何度も繰り返すので、収穫から生豆の出荷まで長いときは4か月以上もかかる。野菜や果物のように、収穫したらすぐに出荷とはならないのがコーヒーなのである。これほど手をかけるがゆえに、出荷量には限りがあり、振慶名珈琲園の豆のほとんどが県内のコーヒー店などで消費されている。
「収穫量も限りがありますので、ここに直接来たことがある人にしか豆は売りません」
沖縄ならではのコーヒー
「われわれが仮に80点の豆を出荷したとしても、ローストで失敗したら当然そこで終わりです。ローストがうまくいっても抽出に失敗したら、お客さんにはおいしいコーヒーが届きません。われわれ生産者、ロースター、バリスタと関わるすべての人がちゃんと仕事しないと、100点満点のおいしいコーヒーはできないんですよ」
そうやってでき上がる一杯のコーヒーの上流を遡れば、生産者のとてつもない労苦の現場があった。即ち、それがスペシャルティコーヒーが生まれる現場なのだ。
「沖縄でいいコーヒーはできないといわれてきましたが、さまざまな試行錯誤により結果がついてきた。どこかの国のコーヒーに近づけるのではなく、沖縄でしか味わえないコーヒーを知ってもらい、新しいコーヒー産地として確立させたいと思っています」
宮城禎明(みやぎ・ただあき)さん (振慶名珈琲園 農園主)

沖縄県那覇市生まれ。東京で広告関係の仕事に20年間従事。帰郷後、2015年に有機JAS認証を受けた完全オーガニックのコーヒー農園を開園。2022年に国際的なQグレードのスペシャルティコーヒーの認証を受けた。50歳。
コーヒー豆の発酵〜乾燥〜脱殻






取材・文/宇野正樹 撮影/齋藤 明












