
【東京 田原町】浅草 ひら山
挽きたて・打ちたて・ゆでたて──。それが、おいしい蕎麦の条件で「三たて」といわれる。『浅草 ひら山』では、玄蕎麦の「丸抜き」から始めるので、さらに蕎麦の実の「剥きたて」が加わり「四たて」を実践している。

両国『ほそ川』、銀座『小十』などで修業を積んだ。
主人の平山周さん(39歳)はこう語る。
「石臼で製粉した蕎麦を、昼も夜も出す分だけその都度打っています。香りを大切にして、できる限り新鮮な蕎麦を提供したいのです」
蕎麦に加え、旬の食材を使った天ぷらが評判の店でもある。
「活魚は締めたてを使い、衣も具材に合わせ毎回作ります。蕎麦屋ではあまりない、天ぷら屋さんのやり方で揚げたてを一品ずつ出しています」
15席ほどのこぢんまりした店内から、カウンター越しに主人の立ち働く様子がよく見える。蕎麦をゆで、食材の下ごしらえをしながら天ぷらを揚げる。無駄のない動きに、思わず見とれてしまう。
どんな料理も手を惜しまず、出来たてを提供する。締め「たて」、揚げ「たて」……この店にはいくつの「たて」があるのだろう。
ニューヨークで建築を学んでいたときに蕎麦打ちを見たことが、日本の食文化を見直し蕎麦職人を目指すきっかけになった。帰国後、老舗の蕎麦店や日本料理店で修業を積み、5年前に店を開いた。
「季節の食材を使った料理を出す蕎麦屋がやれたらいいなと。カウンターでお客さんと会話ができて、オープンキッチンで臨場感もある、蕎麦屋らしくない店にしたいと思いました」
食材の香りが立ち上る
そんな主人の思いが結実した店でいただく天ぷらは、どれも細やかな手業が利いている。カリカリに揚げすぎず、テーブルに着いたときに中までじわりと火が通るように、絶妙のタイミングで天ぷらが届く。軽い食感のなかから、旬の食材の香りが立ち上る。このときばかりは、主人との会話を中断し、無言で箸を動かすのみである。


「揚げ油は、主に淡白な太白胡麻油を使っています。やはり蕎麦屋ですから、最後は打ちたての蕎麦を食べていただきたいのです。天ぷらをあまり濃い味にすると、それこそ蕎麦前だけで終わってしまいますからね」

目下、新しい蕎麦料理を開発中だという。さて、今度はどんな「たて」が味わえるのであろうか。

浅草 ひら山
住所:東京都台東区西浅草1-3-14
電話:03・5830・6857
営業時間:12時〜14時、18時〜20時30分 日曜・火曜は昼のみ
定休日:月曜(祝休日は営業)
交通アクセス:東京メトロ銀座線田原町駅より徒歩約3分(※)
※営業時間と休業日は変動あり。予約を推奨。
※掲載している天ぷらは取材時のものです。
取材・文/宇野正樹 撮影/齋藤 明
※『サライ』2026年5月号より












