『豊臣兄弟!』制作統括(チーフプロデューサー)の松川博敬さん。(写真/NHK提供)

編集者A(以下A):大河ドラマ『豊臣兄弟!』がいよいよ後半戦に突入するというタイミングで、制作統括の松川博敬さんの取材会が行なわれました。今回は私が参加しています。松川さんは子供のころから大河ドラマファンで、歴史好き、特に豊臣秀吉をリスペクトする方です(https://serai.jp/hobby/1256337)。まず冒頭ではこれまでの「手応え」を話してくれました。

第27回の「本能寺の変」以降、さらに視聴者の熱量が上がっているなということをひしひしと感じています。我々も自信を持って出した「本能寺の変」の回と、その後に続く第28回「急げ秀吉」での中国大返しの辺りがすごく出来が良かったと我々も思っているので、そこが視聴者の皆さんに伝わって、皆さんの熱量も上がってきたのかなと。

特に狙いとして、小学生など、今まで大河ドラマに触れてこなかった視聴者の層を取り込みたいという意図があります。SNS上はおそらくそういう層ではないと思いますが、役者さんも含め、市井の皆さんの親戚だとか知り合いから、「子供が一生懸命見ている」といったお声をいただいています。子供さんが一生懸命見ているというのは、大変勇気づけられますね。

I:小学生をはじめとする子供たちに見てほしいというのは、放送前から目指していたことです。前回2月の取材会でも、そこは強調していたことです。松川さんの話はさらに続きます。

印象的なことでいうと、大河ドラマをはじめ、NHKのロイヤルカスタマーは60代から70代ですが、そうした方々からのお声として、孫が一生懸命見ているから、これまで大河ドラマを見ていなかった娘すら見始めている、みたいな内容のお手紙をいただいたりして、世代を超えて見ていただけることもとても嬉しいなと思っています。

第27回の「本能寺の変」以降、秀吉が2段、3段、ギアを上げて、もう天下取りにまっしぐらになっていく。一方で、小一郎ももちろんギアを上げているんですが、ちょっと心がついていかない、という兄弟の温度差をずっと兄弟軸では描いてきたつもりです。第33回で北庄城(北ノ庄城)が落城し、そこでも小一郎は大変心を痛めるわけですが、そこで吉岡秀隆さん演じる千宗易(利休)との出会いがあって、小一郎の方がお兄ちゃん以上にさらにギアを上げて、ついに二馬力で天下取りに向かっていくという、天下一統編の後編に入るというのが第33回です。

A:松川さんの熱量を感じる話が続いて、第34回以降の話も語ってくれました。

第34回、35回で、小牧・長久手の戦いを描きます。第34回は「最強のライバル」というタイトルなのですが、徳川家康(演・松下洸平)が主役の回というのをやってみました。家康がどうして羽柴との決戦に挑むかというところを彼の苦難の半生を振り返りながら描くという、かなり異色な回になっております。それで、家康が覚悟をもって、第35回の小牧・長久手の決戦に向かうという流れになっています。

吉岡秀隆の千利休

I:第33回で、吉岡秀隆さんが演じる千宗易(後の利休)が登場しました。意外や意外、吉岡さんは大河ドラマ初登場なのですが、松川さんは、そのキャスティングの意図について問われてこう語ってくれました。

物語が後半になってきたときに、我々が先にキャスティングをしてしまうのは少し危険だなということがけっこうありまして。八津さんが描くキャラクターがけっこう独特なものなので。千利休はとても有名な人物で、皆さんも一般的なイメージを持っていらっしゃると思いますし、僕らもイメージを持っているので、先にキャスティングすることはできたのです。でも、やっぱりどういうポジショニングでどういう役割を果たすのかというのが見極められない限り、なかなか動き出せないなということがあって、キャスティングの開始はすごく遅れました。こんな時期に、まだ決まっていなかったんですか? と吉岡さんご本人もおっしゃるくらい遅かったんですね。

第33回の脚本ができて、ああ、こういう人なんだ、なんかすごく柔軟な「わし、好きやないねん、茶」と言ってしまうような人なんだ、と。だけど、すごく本質的なヒントを与える人というところで、私の一存ではなく、チームの皆で決めさせていただきました。仲野太賀さんからも少し意見をいただいたりしました。それでオファーをしたという次第ですね。なぜ吉岡さんだったかというと、なんだかおもしろそうだったから。このドラマのキャスティングで一貫しているのが、当たり前のキャスティングをしないというか、ちょっと意外なところを狙ってそこで生まれる化学反応を楽しみたいなと思っていて。千利休は過去作品ですと仲代達矢さんなどが演じられていましたが、僕のイメージしている千利休役の方々というのは、実は思っているよりも20歳くらい年配で、もう80代になっていたりするのですが、吉岡さんに関しては、ちょっと意外なところを狙ったというのがけっこう大きかったです。でも、結果、納得できるキャスティングになったかなと思っています。

吉岡さんの千利休の登場回はもうできあがっていて、何度か見ていますが、すごく魅力的ですね。この時代において、とても軽やかで、立場を越えて臆することなく意見が言える、すごく柔らかい感じのキャラクターになっています。関西弁にも挑戦してもらって、吉岡秀隆さんの新たな一面が見られるのではないかと思っています。利休は第33回も主人公の秀長に大変大きなヒントを与えますが、今後もそういう役回りです。兄弟に大事なヒントを与えたり、家康との会談など、場をセッティングしたりします。そういう場を設けて、黙々と武将同士の話を聞いているけれど、最後にぽろっと本質的なことを言ってヒントを与える、みたいなポジションですね。利休に関しては、自分から主体として政治的な動きをするような感じではないです。

A:松川さんも話していますが、大河ドラマでは、鶴田浩二さん、仲代達矢さん、古谷一行さん、石坂浩二さんなどが千利休を演じています。そうした方々とは違った千利休になるのでは、と想像しています。キャスティング発表のタイミングで触れましたが、千利休と小一郎秀長は、その没年月日が近接しています。利休と秀長、利休と秀吉、そしてそれを巡る秀長と秀吉の関係が、このドラマの成否を印象づけるものになるのかもしれないと思っています。要注目です。

関白秀次は、後半戦のキーパーソン

I:羽柴一族の中で、男子に恵まれたのは秀吉の姉とも(演・宮澤エマ)の家系です。3名の男子が誕生し、そのうちの長男が秀次になります。宮部継潤(演・ドンペイ)を調略する際に、人質含みの養子となった万丸です。

A:万丸はその後に、三好の養子に入るなど、羽柴家のために身を呈してきたわけですが、秀次と名乗って、秀吉の後継者としての地位をしめるようになります。演じるのがアイドルグループHey! Say! JUMPの山田涼介さんです。秀次のキャスティングについて、松川さんはこう語ってくれました。

実は第40回台のキーパーソンは秀次なんですね。秀次のプリンスっぽい、でもちょっと危なっかさも感じさせる部分が山田涼介さんにぴったりだと思ったのが、キャスティングした理由です。

天下を取った豊臣兄弟の確執も今後描かれていくのですが、そこで秀次が暗躍するようなストーリーになってきます。これも新機軸かなと思っています。秀次は秀吉の後継者になると自覚していて、プライドも高いのですが、この後、豊臣ファミリーの中で少しずつ歯車が狂っていく。大変おもしろい役柄になっています。

秀次のプリンス感と鋭さ、危うさというか……豊臣兄弟のふたりと、山田涼介さんの秀次の三者の話が第40回台で展開していきますので、とても重要な人物になっています。

I:いよいよ後半戦に突入の『豊臣兄弟!』。ひょうひょうとしていた松下洸平さんの徳川家康の決断からの小牧・長久手の戦いに始まり、いわゆる「豊臣政権」がどのように具現化していくのか、それをどう描いていくのか、要注目ですね。

A:「大河ドラマは壮大なエンターテイメント」というところからぶれず、なおかつ、歴史ファンも納得できる展開になるよう期待しています。

【放送情報】
大河ドラマ「豊臣兄弟!」
NHK総合 毎週日曜 20時~ほか
※NHK ONEで同時・見逃し配信中

●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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