取材・文/池田充枝
2021年は、伝教大師最澄(767~822)の1200年の大遠忌にあたります。
最澄は、真言宗を開いた弘法大師空海とならんで、中国にわたって仏教を学び、新しい平安仏教の一翼を担った名僧です。
最澄は「悟りに至る道はすべての人に開かれている」という平等思想を説いた『法華経』に心惹かれ、この教えをいしずえとする天台宗を日本で広め、その生涯は、あらゆる人々を救うという『法華経』の説く理想の世界を実現することに捧げられました。
最澄が創建した延暦寺は、東に琵琶湖を、西に京の都を見下ろす比叡山に立ち、ここから多くの高僧を輩出し、彼らが説いた多様な教えは日本文化に大きな影響を及ぼしました。
この秋、最澄の1200年大遠忌を記念した特別展「最澄と天台宗のすべて」が開かれています。(11月21日まで)
本展は、東京国立博物館を皮切りに、九州国立博物館、京都国立博物館の3会場で開催され、各会場で地域的な特色をいかした展示が行われます。
本展の見どころを、主催者にうかがいました。
「本展では、全国で守り継がれてきた天台の宝物が一堂に会します。出品される彫刻のなかには各寺院で『秘仏』として日頃は拝観できない寺宝が多数含まれており、会場で秘仏を拝観できるまたとない機会です。
本展の見どころのもうひとつは、比叡山延暦寺の『根本中堂』の一部を再現した展示です。根本中堂は延暦寺の総本堂であり、最澄が建てた草庵に始まります。現在の建物は、織田信長の焼き討ち後に徳川幕府の援助を得て再建されたもの。会場で堂内の様子を部分的に再現し、その空間を体験していただくことができます。
また、ここ東京会場は、『東の比叡山』と言われる寛永寺の所在地ですが、徳川幕府と強固な関係を築いた天台宗は関東で地盤をかため、太平の世を支えました。本展では江戸天台の名宝にもご注目ください」
仏教美術の粋が集結しています。会場でじっくりご鑑賞ください。
【開催要項】
伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」
会期:2021年10月12日(火)~11月21日(日)会期中、一部展示替えあり
会場:東京国立博物館 平成館
住所:東京都台東区上野公園13-9
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://saicho2021-2022.jp/
開館時間:9時30分から17時まで
休館日:月曜日
料金:展覧会公式サイト参照
アクセス:展覧会公式サイト参照
※本展は事前予約制(日時指定券)を導入しています。詳細は展覧会公式サイトでご確認ください。
巡回:九州国立博物館(2022年2月8日(火)~3月21日(月・祝))
京都国立博物館(2022年4月12日(火)~5月22日(日))
取材・文/池田充枝