取材・文/池田充枝

2021年は、伝教大師最澄(767~822)の1200年の大遠忌にあたります。

最澄は、真言宗を開いた弘法大師空海とならんで、中国にわたって仏教を学び、新しい平安仏教の一翼を担った名僧です。

最澄は「悟りに至る道はすべての人に開かれている」という平等思想を説いた『法華経』に心惹かれ、この教えをいしずえとする天台宗を日本で広め、その生涯は、あらゆる人々を救うという『法華経』の説く理想の世界を実現することに捧げられました。

国宝 聖徳太子及び天台高僧像
十幅のうち 最澄
平安時代・11世紀
兵庫・一乗寺蔵
(展示期間:東京会場/10月12日(火)~11月7日(日))展示会場:東京、京都

最澄が創建した延暦寺は、東に琵琶湖を、西に京の都を見下ろす比叡山に立ち、ここから多くの高僧を輩出し、彼らが説いた多様な教えは日本文化に大きな影響を及ぼしました。

この秋、最澄の1200年大遠忌を記念した特別展「最澄と天台宗のすべて」が開かれています。(11月21日まで)

国宝 尺牘(久隔帖) 最澄筆
平安時代・弘仁4年(813)
奈良国立博物館蔵
(展示期間:10月12日(火)~10月31日(日))展示会場:東京

本展は、東京国立博物館を皮切りに、九州国立博物館、京都国立博物館の3会場で開催され、各会場で地域的な特色をいかした展示が行われます。

本展の見どころを、主催者にうかがいました。

「本展では、全国で守り継がれてきた天台の宝物が一堂に会します。出品される彫刻のなかには各寺院で『秘仏』として日頃は拝観できない寺宝が多数含まれており、会場で秘仏を拝観できるまたとない機会です。

重要文化財 薬師如来坐像
平安時代・12世紀
岐阜・願興寺(蟹薬師)蔵 展示会場:東京

本展の見どころのもうひとつは、比叡山延暦寺の『根本中堂』の一部を再現した展示です。根本中堂は延暦寺の総本堂であり、最澄が建てた草庵に始まります。現在の建物は、織田信長の焼き討ち後に徳川幕府の援助を得て再建されたもの。会場で堂内の様子を部分的に再現し、その空間を体験していただくことができます。

慈眼大師縁起絵巻(中巻部分) 絵:住吉具慶筆・詞書:胤海筆
江戸時代・延宝8年(1680)
東京・寛永寺蔵
(中巻展示期間:10月26日(火)~11月7日(日))展示会場:東京

また、ここ東京会場は、『東の比叡山』と言われる寛永寺の所在地ですが、徳川幕府と強固な関係を築いた天台宗は関東で地盤をかため、太平の世を支えました。本展では江戸天台の名宝にもご注目ください」

仏教美術の粋が集結しています。会場でじっくりご鑑賞ください。

重要文化財 伝教大師(最澄)坐像
鎌倉時代・貞応3年(1224)
滋賀・観音寺蔵
展示会場:東京、九州

【開催要項】
伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」
会期:2021年10月12日(火)~11月21日(日)会期中、一部展示替えあり
会場:東京国立博物館 平成館
住所:東京都台東区上野公園13-9
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://saicho2021-2022.jp/
開館時間:9時30分から17時まで
休館日:月曜日
料金:展覧会公式サイト参照
アクセス:展覧会公式サイト参照
※本展は事前予約制(日時指定券)を導入しています。詳細は展覧会公式サイトでご確認ください。
巡回:九州国立博物館(2022年2月8日(火)~3月21日(月・祝))
京都国立博物館(2022年4月12日(火)~5月22日(日))

取材・文/池田充枝

 

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