【ビジネスの極意】売り手市場で辞めない新卒社員を採用する方法

せっかく採用した新卒社員が、一人前になる前に辞めてしまう。会社としての損失は大きい。だが、どの会社でも持っている悩みでもある。

リーダーシップとマネジメントに悩む、マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」から、辞めない新卒社員を育てる方法と採用についての考察を紹介しよう。

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新卒社員の自立のため、人材採用において注意したいこと

「何とか採用した新卒社員が、結局モノにならずに辞めてしまう!」

これはどの企業でも共通する永遠の悩みではないでしょうか。最近は、新卒社員に温かく接したのに不満を持たれて、結局辞められてしまうというケースもあります。

この裏にあるのは、新卒社員ならではの二つの誤解が考えられます。新卒社員に“やさしく接する”という意味合いを勘違いされて、誤解を促進しているケースもありますが、本当のやさしさは新卒社員ならではの二つの誤解を解いてあげることにあります。誤解を解くことで、新卒社員は自立して会社の戦力になってくれるのです。

ここでは、新卒社員によくみられる「二つの誤解」を指摘するとともに、人材採用時のポイントについて説明しましょう。

新卒社員の誤解その1:いつまでも会社の「評価者」であり続ける

一つめの誤解は、新卒社員がいつまでも会社を「評価」する意識を持ち続けてしまうことです。

もちろん、いつの時代も学生というのはどの企業が入社するのに値するか、経験値が少ないなりに一生懸命評価するものです。「仕事にやりがいは持てるのか」「自分の能力を発揮できる労働環境か」「給料の額は満足できるか」…など、さまざまな軸で会社を評価し、これはと思える会社に入社することになります。

特に近年の就職活動は売り手市場であるため、学生の「評価者」としての立場が強くなっています。多くの企業が人材不足に頭を悩ませており、優秀な学生をこぞって奪い合う構図がしばらく続いています。

学生の視点からみると入社に値する会社の選択肢が増える状況となり、ますます評価者としての立場が強まっていきます。さらに、学生は、消費者としての側面もあります。業種にもよりますが、消費者は、役務を提供される側として会社を評価する立場にあります。ですから、自然と、会社を評価するという視点を持って入社してくることになります。

しかしながら、外部の環境がどうであれ、入社した瞬間に、学生は新卒社員として会社から評価される立場に変わります。これが現実です。にも関わらず、入社してからも、「何か問題があったら、社長である私に直接言いなさい」や「若い感覚で、違和感を感じることがあれば、上司にどんどん提案しなさい」などと発言すればどうなるでしょうか?

新卒社員は評価者の立場を捨てることができず、むしろそれがさらに強化されていくことになります。そして、「誰に何を言っても変わらないこの会社はダメな会社だ」「この提案を採用しないなんてあり得ない」と会社を評価し続け、不満を持って辞めていくことになるのです。

いち早く新卒社員を会社の戦力にしたいのであれば、新卒社員に「あなたは会社を評価する立場から、会社に評価される立場に変わったのだ」ということを明言しなければいけません。

一見厳しいようですが、立場の変化をはっきり認識できていない状態は、「自分の役割を果たす」という意識を乏しくさせ、新卒社員の成長を阻害してしまうのです。さらに、この誤解を持ったまま、他の会社に行っても、現実を認識しないままでは、遅かれ早かれ、同じ事が繰り返され、無駄に時間を経過させることになります。本当のやさしさとは、“現実”にしっかりと目を向けさせることなのです。

新卒社員の誤解その2:いつまでも「教えてもらえる立場」であり続ける

二つめの誤解が、いつまでも自分は答えを教えてもらえる、と思い込んでいることです。

学生時代は、保護者や行政がお金を出すことで物事を学ぶ期間です。例えば大学は、支払った費用に見合うサービスを提供します。学びの機会は平等に提供されており、学生にとっては懇切丁寧に教えてくれる学校が「いい学校」です。

しかし、社会人にとって学びの機会は平等に提供されるものではありません。入社直後の新卒社員向け研修ならいざ知らず、その後業務に必要な知識は自発的に獲得する必要があります。また、上司や先輩に仕事について教わるときも、受動的に待っているだけではいつまでも教えてもらうことはありません。

それなのに、社長や上司が先回りして手取り足取り教えてしまったら、「自分は教わって当然」という誤解を正すどころか、かえって強化してしまうことになります。そのうち「うちの会社は仕事について何も教えてくれない」などと筋違いの不満を持つようになるのです。

新卒社員に、会社では自ら“学び”を獲得しなければならない存在であることを伝えましょう。学生とは、立場が根本的に異なります。このような誤解を解くことで、新卒社員の成長スピードが変わってくるはずです。

誤解を解けるか人材採用時に見極めること

以上のような二つの誤解を強固に持ち続けている状態では、新卒社員は、戦力化するのがとても困難です。したがって、誤解を解くためにも入社後すぐに「あなたは会社に評価される立場になった」「あなたは学びを自ら獲得する必要がある」ということを、はっきりと言葉で伝えてあげる必要があります。

人材採用段階では、二つの誤解を持っていてもある意味で仕方がありません。基本的には誤解を解き、現実を理解させることは上司の責任です。事前に理解できているかはさほど重要ではありません。ただし、しっかりと現実を認識した際に、受け止め、変化することができるかを見極めるためには、採用段階での学生の「素直さ」を見極めるといいでしょう。

素直に意識を切り替えられる新卒社員こそが、会社から高く評価され、積極的に学んで成長できるのです。

甘やかすことは本当のやさしさではない

新卒社員の誤解を解かず手取り足取り温かく教えてあげることが、新卒社員への「やさしさ」であると勘違いされている社長や上司は多いものです。

しかし、本当のやさしさとは、長い目で見て社員を成長させられることです。

・ 会社を評価するのではなく、会社に評価される立場であることを自覚する。
・ 会社に教えてもらうのではなく、自らが“学び”を獲得しなければならないことを自覚する。

この二点をはっきり伝え、少しでも早く学生ならではの誤解を解くようにしましょう。

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いかがだっただろうか。辞めない新卒社員を育てるには、会社員としての意識を育てることが重要であり、採用には、いかに成長していくかを見極める目が必要だ、ということがおわかりいただけただろうか。

引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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