永遠の都・ローマ。ヨーロッパきっての観光地として名高い地だが、ほとんどの観光客はホテルに滞在し、せいぜい数日見物して他の場所に移動してしまうだけだろう。じっくり腰を落ち着けて、暮らすように旅してみたい……この夏そんな憧れを叶えたのが、元・出版社勤務の中川豊さん(66歳)。ローマの中心部に部屋を借りて1か月、ゆったり気ままに見て回り、食べて回ったローマの旅の記録を紹介いただきましょう。
前回の記事: ここにも穴あそこにも穴!ローマ「穴めぐり」散歩記【イタリア・ローマを歩く 第2回】
今回の旅の拠点にしているアパートは、ローマの中心ナボーナ広場のすぐ近くにある。その広場を起点に、私の好きな画家・カラヴァッジョ(1571~1610)の作品を巡る「黄金ルート」を歩いてみようと思った。
カラヴァッジョの作品は、ナボーナ広場周辺とポポロ広場近くの3つの教会に、あわせて7点ある。美術館では味わえない環境で、天才の技をじっくり体験するには、教会を訪ねるのが一番だ。
また近くには、カラヴァッジョが起こした殺人事件の現場である路地もある。最後に訪ねてみよう。
教会の礼拝堂は昼間でも暗いので、著名な絵画、彫刻の前には照明が設置されているのだが、これを点灯するには料金が必要となる(作品の前にきちんと料金投入口が設置されているのだ)。そのための硬貨を数枚、ポケットに用意して、アパートの部屋を出た。
■1:サン ルイージ デイ フランチェージ教会
ナボーナ広場にある3つの噴水の水音を聞きながら、歩き始める。3分もかからず、最初の目的地である「サン ルイージ デイ フランチェージ教会」に着く。ここでは、左側奥の礼拝堂で、カラヴァッジョの出世作『マタイ3部作』が見られる。
■2:サンタゴスティーノ教会
フランチェージ教会から歩いて1~2分で、「サンタゴスティーノ教会」に到着。ここでは、左側入口寄りの礼拝堂で「巡礼の聖母」が見られる。
サンタゴスティーノ教会に隣接している、ローマ最古のアンジェリカ図書館も訪ねた。壁を埋め尽くす羊皮紙の本に、圧倒された。
■3:サンタ マリア デル ポポロ教会
フランチェージ教会から歩いて20分で、ポポロ広場に到着する。その北側に位置する「サンタ マリア デル ポポロ教会」では、左側奥の礼拝堂で「聖パウロの回心」「聖ペテロの磔刑」が見られる。
■4:パッラコルダ通り
ポポロ教会を出て、ナボーナ広場まで戻ってきた。そして今日のカラヴァッジョ徘徊の締めくくりは、この広場の近く、スクローファ通りの横道にあたるパッラコルダ通りへ。カラヴァッジョが夜毎徘徊していた通りであるとともに、彼が殺人事件を起こした、いわく付きの通りである。
昼間はどうということはないが、夜は人通りも少なくひっそりとしている。剣の交わる音を思いながら、近くのトリュフ料理の店へ向かった。
訪ねた店は『リストランテ・ピエトロ・ヴァレンティー二』(http://www.ristorantepietrovalentini.it/)。いつでも季節のトリュフが用意されている、裏路地の名店だ。
さて、今回はカラヴァッジョを訪ねてローマの教会を回ったが、次回はあらためて、カラヴァッジョ作品を収めているローマの美術館をまわってみようと思う。
(データは2016年7月時点のものです。)
写真・文/中川豊
1949年生まれ。メディア プロデューサー。出版社を定年退職後、現職。1971年インドへの旅以来、中近東、アフリカ、南米など約60カ国を旅する。近年は仏、伊、布哇を中心に「暮らしているかのような旅」を続ける。
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