文・写真/鈴木拓也
日露戦争の帰趨を決定づけた日本海海戦の殊勲艦として知られ、今は「世界の三大記念艦」の一隻として、横須賀に係留されている戦艦『三笠』。
艦内は、艦長室や大砲が復元され、日本海海戦に関係した資料が展示される、ちょっとした博物館になっている。最近は、司馬遼太郎の代表作『坂の上の雲』のテレビドラマ化と、ゲーム「艦隊これくしょん(艦これ)」のヒットで来艦者が倍増し、2016年は25万人が訪れる横須賀有数の観光名所となった。
『三笠』の見どころは、手でさわれる30センチ主砲や、バーチャルリアリティーで日本海海戦の再現映像が見られる「VR日本海海戦」など、いくつもある。が、意外と見落とされがちなのが、精巧に作られた特注模型の数々だ。
内部には、模型ファンが感嘆する艦艇模型が何点も常設展示され、くわえて「艦隊コレクション」と銘打った期間限定の展示があり、さながら「艦艇模型博物館」となっているのだ。
まずは、常設展示の模型から見ていこう。
中央ホールには、「世界の三大記念艦」(『三笠』、英戦艦『ヴィクトリー』、米戦艦『コンスティチューション』)の精密模型が仲良く並んでおり、壮観なながめを堪能できる。
中央展示室には、『三笠』とともに日本海海戦に参加した戦艦『朝日』やロシア海軍の『イムペラートル・ニコライI世』などの大型模型が展示されている。
さて、期間限定展示の「艦隊コレクション」とは、通廊沿いのガラス製ショーケースに延々と居並ぶ1/500スケールの艦艇模型群をさす。日本海海戦時の日露両軍全艦艇、太平洋戦争期の日本海軍の全艦艇(一部同型艦除く)、海上自衛隊の現役艦艇あわせて約260隻が一堂に会するという、本邦初の試み。
日本海海戦の参加艦艇模型は、大人の模型サークルとして有名な「ミンダナオ会」が力作を提供。一部の艦艇は、喫水線から下の部分を省略した「ウォーターライン」版と、艦底部分も再現した完全版の2種類を展示する凝りよう。
さらに圧巻なのが、太平洋戦争期の大小の艦艇の数々。市販のプラモデルでなく、ゼロから作り起こしたという労作で、戦艦・空母はもちろん、2016年に重要文化財に指定された病院船『氷川丸』や、計画のみに終わった『B65型超甲型巡洋艦』まである。
数は少ないものの、海上自衛隊の現役艦艇も雄姿を見せる。ヘリコプター搭載護衛艦『ひゅうが』やイージス艦『あたご』といった主力艦だけでなく、掃海艇やSH-60K哨戒ヘリもありバラエティに富む。
「艦隊コレクション」は、「艦これ」効果もあいまって大好評を博し、2018年3月31日まで期間が延長されている。艦艇模型ファンでなくても一見の価値ありなので、横須賀方面に旅行の際は、ぜひスケジュールに加えておこう。
【記念艦 三笠】
■住所/横須賀市稲岡町82-19 三笠公園
■電話/046-822-5225
■公式サイト/http://www.kinenkan-mikasa.or.jp/
■観覧時間/9:00~17:30(4月~9月)、9:00~17:00(3・10月)、9:00~16:30(11月~2月)
■休艦日:12月28日~31日
■観覧料金/一般:600円、65歳以上:500円、高校生:300円、小・中学生:無料、障がい者:200円(介護者2人まで)
文/鈴木拓也
2016年に札幌の翻訳会社役員を退任後、函館へ移住しフリーライター兼翻訳者となる。江戸時代の随筆と現代ミステリ小説をこよなく愛する、健康オタクにして旅好き。