取材・文/坂口鈴香

写真はイメージです。

シニア世代は電動アシスト自転車の運転に注意

前回は、アラカン世代の転倒事故について、多様な場面での事例を紹介した。

(「思わぬところにキケンが! アラカン世代で増える転倒事故の事例1」https://serai.jp/living/1267559、「アラカン世代で増える転倒事故事例【2】思わぬところにキケンあり!」https://serai.jp/living/1267561

その後、筆者のもとに自転車で転んだというアラカン世代の声が多く寄せられた。趣味のクロスバイクやロードバイクで、転倒し骨折したという人が複数いた。入院するほどの重傷だったという人もいて、健康のためにはじめた自転車で体を痛めるという、文字通り「本末“転倒”」の事例だ。

一方、電動アシスト自転車に買い替えたら、それまでの自転車と要領が変わったのか、転倒して肋骨を折ったというのはYさん(63)だ。「車輪が太くて、車体感覚がつかめなかった」という。

明石節子さん(仮名・65)も、電動アシスト自転車で漕ぎ出したとたん、スピードについていけなくて転倒、手首を骨折したと嘆く。しかも自転車で転倒したのは2回目だという。

「普通の自転車は発進時に負荷がかかっているのでゆっくり漕ぎ出せるのですが、電動アシスト自転車はいきなり想像以上のスピードが出るので、心身の準備ができていなかったんだと思います」と顧みる。

転倒事故を起こして自転車が怖くなり、乗るのをやめたという声も聞く。明石さんは事故後、電動アシスト自転車のアシストモードを「弱」の設定にして、発進時のスピードを抑えるようにした。また停止中はペダルに足を置かず、姿勢を整えてから慎重に発進するようにしているという。

シニア世代が電動アシスト自転車を購入する際は、アシストの調整がしやすいもの、身長に合ったものを選ぶことが大切だ。必ず試乗し、販売店のアドバイスをもらいながら選定してほしい。また購入後は、車の少ないところで練習して、電動アシスト自転車特有のスピード感や重量感に慣れてから道路に出ることをおすすめしたい。

自転車で転倒、骨折。急遽母をショートステイに

電動アシスト自転車で転倒し、手首を骨折した明石さんは、この事故により母親(89)との生活が大きく変わってしまった。「骨折は治っても、母親との生活は元には戻らない」とため息をつく。

父親が60代で亡くなって以来、母親と同居して30年ほどになる。この数年は、足腰が衰え、デイサービスに行く以外は外に出ることがなくなっていた。室内でも何度か転倒し、骨折を繰り返していたが、2年前に大腿骨を骨折して入院したときには、ケアマネジャーから「そろそろ施設を考えてはどうですか」と提案された。

「そのときは、自宅に母を戻してもまだ介護できるだろうと、軽い気持ちで判断して自宅に戻したんです。それがこんなに大変になるとは思っていませんでした」

自宅に戻った母親は、一気に状態が悪化し要介護4になった。明石さんの介護負担も大きくなっていた。

「朝はベッドから車いすに移乗させて、トイレのたびに介助します。夜になるとまたベッドに移して、夜中も数回のトイレ介助と、床ずれが起きないように体位変換もしています」

というのも、以前ショートステイを利用したとき、たった2、3日で母親の背中が赤くなっていたのだ。褥瘡が怖いので、夜中の体位変換は欠かせなくなった。夜中の介護は明石さんの夫も手伝ってくれてはいたが、睡眠不足の日々が続き、明石さんの疲れもたまっていたのだろう。自転車で転倒して骨折したのは、そんなときだった。

手首を骨折していたので、母親を介助するのは難しい。急遽、2週間のショートステイをお願いしてホッと一息ついた。しかし、2週間後、再び母親の介助ができるまで手首が回復しているとは思えなかった。医師も「難しいでしょう」と首を振る。

ケアマネジャーに相談すると、「もうすぐ、ある特別養護老人ホーム(特養)の空きが出ますよ」と知らされた。

【後編】に続きます。

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

 

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