江戸時代、浮世絵版画は現代におけるSNS等にも相当する情報メディアとしての役割を担っていました。なかでも、旅の情景を生き生きと伝えた代表作が、歌川広重(1797-1858)による保永堂版「東海道五十三次」です。江戸時代後期に高まった旅行ブームを背景に大きな人気を博し、広重の出世作となりました。

江戸日本橋から京都に至る東海道の旅情を、四季の移ろい、天候や時刻の変化とともに描き出し、臨場感あふれる風景描写となっています。「蒲原 夜之雪」や「庄野 白雨」などの作品にみられる広重ならではの創造力も随所に発揮されています。

保永堂版 東海道五十三次之内 蒲原 夜之雪 江戸時代 天保4~5年(1833~34)
保永堂版 東海道五十三次之内 庄野 白雨 江戸時代 天保4~5年(1833~34)

MOA美術館で開催の「広重 東海道五十三次 版画×PHOTO」は、全55作品を一挙公開するとともに、現在の風景写真と見比べて現代の東海道の旅も紹介します。(5月15日~7月7日)

本展の見どころを、MOA美術館の学芸員、金沢和泉さんにうかがいました。

「当館では2023年から、作品に描かれた場所の現在の風景を撮影し、比較展示をするプロジェクトに取り組んでいます。単にその地を撮影するのではなく、視覚的に美しく、できるかぎり作品に忠実になるよう、構図や季節、天候などを考慮して撮り溜めてきました。今回は全55図のうち、35箇所の作品において比較展示を行う予定です。

保永堂版 東海道五十三次之内 日本橋 朝之景 江戸時代 天保4~5年(1833~34)
日本橋 現在 (C)Sano Ishikura

比較すると、広重の表現の豊かさに改めて気付かされます。展覧会のメインビジュアルでもある「箱根 湖水図」は、中でも広重の創造力が発揮された一枚です。実際の姿よりも、東海道最大の難所を強調するように切り立つ山を描き、谷間には大名行列が小さく描かれています。モザイク調の色彩豊かに刷り分けられた岩肌と、湖水の青、そして富士山の白が美しい配色です。現在の風景は作品に合わせて夕暮れ時に撮影しました。空の橙色、山の青や霞の色などの色彩が、まさに作品そのものです。

保永堂版 東海道五十三次之内 箱根 湖水図 江戸時代 天保4~5年(1833~34)
箱根 現在 (C)Sano Ishikura

本展では、全55図を一挙展観する他、「東海道五十三次」を1億5千万画素の高精細画像として撮影したデジタル素材を活用し、横21メートル、高さ3.5メートルの大画面に投影します。版画特有の透明感や摺(す)りの凹凸などを、実際にお楽しみいただけたら幸いです」

会場で、大画面に映された高精密画像の作品世界に没入する、新しいかたちの広重版画をお楽しみください。

【開催要項】
広重 東海道五十三次 版画×PHOTO
会期:2026年5月15日(金)~7月7日(火)
会場:MOA美術館 展示室1,2,4,5
住所:静岡県熱海市桃山町26-2
電話:0557・84・2511
公式サイト:https://www.moaart.or.jp
開館時間:9時30分~16時30分(入館は16時まで)
休館日:木曜日
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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