文/鈴木拓也

画像はイメージです。

「人生には、終わりがある」と、頭ではわかっていても、若い頃にそれを実感するのは難しい。この先、何千年もあるかのように時間を空費してしまうのも、若さゆえ。ある意味それは、若者の特権といえるかもしれない。

しかし、髪に白いものが混じる年代に入ると、変化が生じる。人生の終わりをリアルに感じ始めるのだ。そして、「残された時間」を有意義なものにしようと模索する。

でも、具体的に何をどうすればいいのか?

そんな悩めるミドル世代に寄り添うのは、作家の佐藤優さん。著書『残された時間の使い方』(クロスメディア・パブリッシング https://book.cm-marketing.jp/books/9784295411727/)では、「時間」というキーワードを軸に様々なヒントを提示する。

時間が搾取される現代社会

本書のなかで佐藤さんは、そもそも残された時間すら「時間泥棒」によって搾取されていると警鐘を鳴らす。

「時間泥棒」とは、ミヒャエル・エンデの小説『モモ』に出てくる、他人の時間を奪おうとする謎の男たち。資本主義社会を象徴する存在として描かれているが、この現実世界でも「巧妙に姿を変え、擬態し、私たちの生活に忍び込んでいます」と、佐藤さんは記している。

その代表例が、SNSやゲームだという。SNSは便利なコミュニケーションツールだし、ゲームは気分転換にもってこい。しかし、依存性が高く、度を越して時間を使いがちになる問題点を挙げる。これは、消費をさらに促そうとする資本主義社会の負の側面だという。

また、いかにも自らの意志で決めた事柄も、実は社会構造の枠内で「選ばされている」可能性を指摘する。例えば、独身男性が結婚を考え、家族のために一生懸命仕事を頑張ろうと決心した場合。一見して本人の意志であるが、主夫業という選択肢もあることを、最初から除外している。つまり、男性は外で働き、女性は家庭を守るという、昔ながらの社会規範の枠内での選択になっている。こうした枠は、社会にくまなく張り巡らされているため、かえってそれに気づきにくい。

主体的な時間を持つ

そうした社会の罠を避ける一手段として、佐藤さんは、真の意味での主体的な時間を持つことをすすめる。これについて、次の説明がある。

主体的な時間とは自分自身が主体的に、意識的に何かに取り組み、計画性を持ちつつ自分でコントロールする時間のことです。
例えば休日に自分が行きたかった場所に、旅行に行く計画を立てて実行する。自分の趣味の写真を撮る時間を確保したり、好きな作家の読書会に参加する。あるいは資格をとるための講座に通うということです。(本書072pより)

対して、受動的な時間は、他者に決められ、なおかつコントロールされる時間だ。上司の命令で、嫌な仕事をするのはその典型だろう。半ば依存症的に遊んでいるゲームも、主体的な時間とは言い難い。こうした時間をゼロにするのは難しいが、主体的な時間の比率を増やす努力はすべきだと、佐藤さんは力説する。

そのために必要なポイントが、「目的の明確化」。仕事や家庭における目的を明確にすることで、おのずから時間の使い方も主体的になる。最初は難しいかもしれないが、続けていけば、そうした時間の使い方もうまくなっていくという。

定年後はゼロ地点からのスタート

佐藤さんは、人生の目的を考えるにあたり、年齢も大事な要素になると説く。

その年齢とは45歳。それより前は「足し算の時間」で、それ以降は「引き算の時間」となる。つまり、未知の知識・体験をどんどん足していくのが前半生で、後半生は新しいことに無理に挑戦せず、目的ある人生を送る。

挑戦しないと言われると、なんだか後ろ向きな感じがするが、そうではない。むしろ、これまで培った豊富な経験をベースに、「残りの人生をより豊かに、かつ楽しく生きることができる」と、佐藤さんは書いている。

さらに、引き算の時間になってからのほうが、「人生の大きな転換や展開がある」とも。例えば、仕事においては副業や独立など、職業経験の浅い頃にはできなかった取り組みが、無理なくできる可能性が出てくる。

注意したいのは、いつまでたっても足し算の時間の意識が抜けきれないことだ。特に、定年後に雇用延長で勤め続ける場合、役職や肩書が外れて、年収も下がるのがふつう。にもかかわらず、足し算の時間のままでは、マイナス思考や被害妄想に囚われやすくなってしまう。

佐藤さんのアドバイスは明快だ――「ゼロ地点からのスタートだと割り切る」のである。過去の栄光は捨て去り、収入の基準も「コンビニのアルバイト」でよしとする。こう割り切れば、以前なら考えもしなかった仕事が視野に入ってきて、選択の幅が広がり、心の余裕も得られる。このことは知っておいて損はないと、佐藤さんは言う。

* * *

このように本書には、45歳以降の人生を充実したものにする指針が、数多く盛り込まれている。忙しい割に、人生が空回りしている気持ちがぬぐえないなら、一読をおすすめしたい。

【今日の暮らしに役立つ1冊】
『残された時間の使い方』

佐藤優著
定価1760円
クロスメディア・パブリッシング

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2026年
4月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

小学館百貨店Online Store

通販別冊
通販別冊

心に響き長く愛せるモノだけを厳選した通販メディア

市毛良枝『百歳の景色見たいと母は言い』

花人日和(かじんびより)

和田秀樹 最新刊

75歳からの生き方ノート

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店