取材・文/ふじのあやこ

一緒にいるときはその存在が当たり前で、家族がいることのありがたみを感じることは少ない。子の独立、死別、両親の離婚など、別々に暮らすようになってから、一緒に暮らせなくなってからわかる、親やきょうだいのこと。過去と今の関係性の変化を当事者に語ってもらう。
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文部科学省の発表によると、令和5年の小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は732,568件(前年度681,948件)であり、前年度から50,620件(7.4%)増加。認知件数は新型コロナウイルス感染症の影響で令和2年度に一旦減少したが、その後3年連続増加し、過去最多となった(令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査)。
今回お話を伺った美玖さん(仮名・44歳)は、中学生のときにいじめに遭い、家族でそのいじめに立ち向かった過去を持つ。
正反対の性格だったが、きょうだい仲は良かった
美玖さんは両親と6歳上に兄のいる4人家族。小学校のときの美玖さんは活発な子で、友人たちの中心にいるようなタイプだった。美玖さんは当時の自分を「性格は悪かった」と振り返る。
「思ったことをはっきりと口に出すような子でした。それを素直で子どもらしい性格だと言えば聞こえはいいですが、自分勝手なだけで性格は最悪だったと思います。嫌いな子に対しては平気で嫌いと面と向かって言っていました。その子に何か危害を加えるようなことをしていなかったけれど、いじめられていると捉える子もいたと思います」
6歳上の兄とは、年齢差から学校が被ることはなかった。美玖さんが小学校に入学したときには兄は中学生。兄は頭が良く、生徒会に入っていた優等生タイプ。美玖さんとは性格がまったく違ったが、仲は良かったという。
「6つも離れていたら、喧嘩にはなりません。きょうだい喧嘩なんてしたら、一方的に私が負けるだけ。そのぐらい力の差があったので、兄と揉めていると母親が仲裁に入ってきていました。
兄と仲が良かった理由は、親が共働きで、親が帰ってくるまで一緒にいてくれたのが兄だったからです。母親が仕事で遅くなるときには兄と2人で料理をして、晩御飯を食べることもありました。2人とも料理は上手じゃなくて、あの頃はインターネットでレシピなんて検索できなかったから、母親が作っていたように見よう見まねで作るしかなかったんですよね。だから、味付けが変になることが多かった。それをまずいってお互いに言い合いながら食べたことを覚えています」
【いじめの内容はエスカレート。階段から突き落とされることもあった。次ページに続きます】
