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いじめの内容はエスカレート。階段から突き落とされることもあった

美玖さんがいじめられたのは中学生のとき。1人の友人とのケンカがきっかけだった。いじめは少しずつエスカレートしていき、ケガをしてしまうこともあったという。

「最初は1対1のケンカだったんです。そうだったはずなのに、徐々に相手の子のほうにクラスのみんなが味方していき、ケンカをしてから数日で1人ぼっちになっていました。1人になったことは自分の性格の悪さもあるんだろうなって受け入れていたんです。1人になることは嫌だったけれど、私にはまだ勝気な性格が残っていたので平気なふりをしていました。

でも、いじめは無視から物を隠されたりいたずらをされるようになっていき、椅子や机の中に画鋲を置かれたり、最終的には階段から突き落とされたりもするようになっていきました。階段の上から突き飛ばすと大けがになってしまうからか、階段の真ん中ぐらいでぶつかってきたり、押されたりしていましたね。転んだ後には『触っちゃった、汚い~』と笑っていた声を今でも覚えています」

美玖さんはいじめに遭っていたことを誰にも言えなかった。それには兄が関係していたという。

「兄は優等生で、私が中学に入学したときには兄のことを覚えている先生がたくさんいました。兄との思い出話を先生たちは話しながら、私にも期待しているような目を向けていたんです。だから、私がいじめられていると学校に訴えると、兄の名前を汚してしまうと思ってしまっていました。私も兄ほどではなかったものの成績は良かったので、先生たちの期待に応えたいという思いもありました」

当時の美玖さんの頭の中はいじめに遭わないようにいかに回避するかで頭がいっぱいだったという。そのことが不眠の原因となり、授業にも集中できなくなって成績が下がってしまったという。

「親にもいじめに遭っていることは伝えていなかったので、毎日普通の顔をして学校に行くしかありませんでした。毎日夜には時間割りとにらめっこしながら、この休み時間はここで過ごそうとか、移動教室へは移動中に何かされるかもしれないから迂回して向かおうとか、予定を立てていました。夜にそんないじめられることを想像していたら、眠れないようになってしまって、寝不足から全然授業に集中できなくなりました。

成績が下がった私に対して、親は塾に通わそうとしましたが、同じ学校の子たちが多く通う塾ではそこでもいじめに遭う可能性があった。だから大丈夫と言い続けていたら、親から頼まれた兄が家で勉強を見てくれることになったんです」

汚れた教科書を見られて泣いた妹に、兄が取った行動とは。【~その2~に続きます】

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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