精神科医・和田秀樹が考える、90歳で「元気な人」と「枯れた老人」の分岐点とは【あなたの寿命を決める70歳からの選択】
時間は誰にでも平等に流れますが、体や心が衰えていく人もいれば、エネルギッシュで元気なまま過ごす人もいます。そこにはどんな差があるのでしょうか。
高齢化医療の第一人者で精神科医でもある和田秀樹先生によると「老化は“感情”から始まります。何の対策も取らないでいれば、体・脳機能を維持できなくなっていきます」とのこと。そこで、元気な高齢者として人生を謳歌するための様々なヒントを和田先生の著書『あなたの寿命を決める70歳からの選択』（宝島社）よりご紹介。今回は、高齢期特有の病気と、その対策方法を解説します。
せっかくなら最後に「いい人生だった」と思えるような生き方をしたいもの。ここに紹介したヒントを活用してよりよい幸せを手に入れてみませんか。
監修／和田秀樹
知っておきたい！ 高齢期に現れやすい病態
・臓器全般の機能が低下するため、複数の病気を併発しやすくなる
・免疫機能が低下するため、病気にかかりやすく、治りにくくなる
・普段使わない部分の機能の低下が、若い頃より進みやすくなる
活動的に暮らし病気を遠ざける
年齢を重ねると老いる、これは自然の理（ことわり）です。誰もこのルールから逃れることはできません。細胞の機能が低下することによって、体全体に不調が出やすくなる、すなわち病気にかかりやすく、治りにくくなります。
高齢になること自体が病気のリスク因子となるのです。高齢期に現れやすい病態は、次のとおりです。
１．臓器全般の機能が低下するため、複数の病気を併発する「多臓器疾患」が多くなる。
２．特に70代以上では、認知症や転倒による骨折、失禁などの「老年症候群」が現れやすくなる。
３．免疫機能が低下するため、病気（特に感染症）にかかりやすく、治りにくくなる。
４．病気による体力の衰えに、独居による孤独感など「社会的要因」が重なれば、うつ病発症のリスクとなり、「生活の質」に支障をきたしやすくなる。
５．日常的に使っていない組織や臓器の機能低下（廃用性萎縮）が進み、脳や体を使っている人と使っていない人の差が開きやすくなる。
老化に伴って発症しやすくなる病気として挙げられるのは、認知症、うつ病、がん、心疾患、脳血管疾患、肺炎。このうち、認知症とうつ病は生活の質を左右します。一方、がん、心疾患、脳血管疾患、肺炎は死に至ることもある病気です。
こうした病気を恐れて、体に悪いからと好きな食べ物を控えたり、したいことをガマンしたりすることは、ストレスになってかえってよくありません。
精力的に生きるのは悪いことではない
特に男性の場合、欲求の一切を捨て去った「枯れた老人」を理想とするような風潮がいまだにありますが、果たして本人は幸せといえるでしょうか？
更年期になると、男性は男性ホルモンが、女性は女性ホルモンが減少し、以下のような症状が現れやすくなります。
１．肌つやが悪くなる
２．性欲が衰える
３．男性は勃起（ぼっき）不全が生じる
４．女性は骨粗（こつそ）しょう症になりやすくなる
男性ホルモンの減少は、社交性の低下にもつながるほか、知的機能、特に記憶力の衰えを生じさせます。更年期以降の女性の場合は、男性ホルモンが増えるため、社交性が増すことがわかっていますから対照的です。
さらに、前頭葉の萎縮が始まれば、意欲や創造性の低下、感情を制御する力の衰え、神経伝達物質の減少によるうつ病リスクの増大も懸念されます。
いつまでも元気でいるためには、枯れた晩年は忘れて、下記のようなポイントを押さえて、性ホルモン量を維持することが大切なのです。
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『あなたの寿命を決める70歳からの選択』（和田秀樹 監修）
宝島社
和田秀樹（わだ・ひでき）
1960年、大阪府生まれ。精神科医。ルネクリニック東京院院長。東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て現職。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。著書に『70歳が老化の分かれ道』（詩想社新書）、『80歳の壁』『ぼけの壁』（ともに幻冬舎新書）、『60歳からはやりたい放題』（扶桑社新書）など多数。
