
わが国では毎年およそ100万人が「がん」と診断されています。これを国民一人の生涯で見ると、実に2人に1人ががんにかかることになります。一方で、かつては不治の病と恐れられたがんも、今では6割以上が治るようになりました。
中高年になったら、もしもに備えて、事前にがんと向き合うための情報をもっておきたいもの。
そこで役立つのが、静岡県立静岡がんセンター名誉総長の山口 建医師が監修した『がんになったとき知りたいことが全部のってる本』(発行:主婦の友社)です。
今回は、『がんになったとき知りたいことが全部のってる本』(主婦の友社)の中から、がん治療が始まったことを想定して、「入院するときの心がまえ」と「痛みや不快感を抑える支持療法」を紹介します。
入院するときの心がまえ
●落ち込むこともあるがひとりで抱えず相談を
がんと診断され治療方針が決まると、詳しい検査や手術、放射線、抗がん薬などによる治療を行うために、必要に応じて入院が決まります。たとえば手術の場合、手術当日のスケジュールや、手術後から退院までの流れに関するオリエンテーションがあります。多くは、「クリティカルパス」という治療計画表を提示されるので、入院生活がイメージしやすくなるでしょう。
入院生活では、思うように体が動かなかったり、今後について不安で落ち込んだりすることも少なくありません。これは自然な反応です。疑問や不安があれば、医師や看護師に伝えてください。ひとりで抱え込まず気持ちを言葉にするのは、心のストレスを軽くする第一歩になります。
入院前には、必要な持ち物や手続き、連絡先などをノートに整理しておくと安心です。好きな本や使い慣れたタオルなど、リラックスできるものを持っていくのもよいでしょう。
入院は心身ともに負担が大きいですが、回復に向かうための大切な時間です。周囲の人に助けてもらいながら、入院生活を上手に乗り切っていきましょう。
【Point】入院前に歯科治療をすませておこう
入院前に歯科治療を検討するのは、口の中の感染やトラブルを防ぎ、安全に治療するため。虫歯や歯周病があると、手術や抗がん剤治療後に感染を起こす可能性がある。誤嚥性肺炎などの予防にもつながる。
●入院するときの持ち物例
・洗面用具
・食事道具(箸、スプーン、コップ・湯呑など)
・衣類(下着、寝間着など)
・フェイスタオル/バスタオル
・室内履き
・お薬手帳
持ち物は、病院によって違う。院内の売店で購入できるほか、病棟でレンタルできるものもあるので、必ず事前に確認しておこう。

痛みや不快感を抑える支持療法
●症状、副作用や合併症に配慮し治療の負担を減らす
支持療法とは、がんそのものへの治療とは別に、症状の緩和を目指し、治療に伴う副作用、合併症、心のつらさを和らげるための治療・ケア全般を指します。かつては、「副作用はつらいもの」とされていました。
しかし現在は、支持療法の技術の進歩とともに、患者さんの生活の質(QOL)を保ちながら、治療を円滑に進めることができるようになりました。支持療法は、「がんと診断されたとき」からがん治療と並行して行われるのが標準的です。
手術、放射線、薬物による治療では、吐き気、痛み、食欲低下、倦怠感、感染症など、さまざまな体調の変化が起こることがあります。吐き気止めや痛み止めの薬を使う身体的ケア、口内炎を防ぐ口腔ケアや栄養管理、脱毛・皮膚の変化に対する外見のケア(アピアランスケア)を含め、患者さんができるだけ楽に治療を続けられることを目指します。また、不安や不眠などに対する心理的サポート、リハビリテーションによる障害予防・軽減も重要です。
つらい症状が出たらがまんせずに医師や看護師に伝えることが大切。安心して治療に臨めるようサポートしてくれます。
【Point】がんのリハビリテーション
一般的には術後、体の機能低下を防ぐことを目的に行われる。たとえば、肺がん手術前の呼吸訓練など、予定されている治療に伴い起こることを想定し、治療前からリハビリを始める。予防とともに、治療後に生じる障害を軽減させることを目指す。

支持療法は、チーム医療で行います。主治医以外にも、皮膚症状は皮膚科医師や創傷ケア専門の認定看護師、口腔粘膜炎は歯科医師と歯科衛生士、身体機能障害にはリハビリテーション科の医師・理学療法士などが担当します。
参考:山口 建『高齢者とがん』(中央公論新社)
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がんになったとき知りたいことが全部のってる本
監修/山口 建
主婦の友社 1,760円(税込)
山口 建(やまぐち・けん)
静岡県立静岡がんセンター名誉総長、高松宮妃癌研究基金理事長、慶應義塾大学客員教授。
医学博士。1950年、三重県紀北町生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、国立がんセンター(現・国立がん研究センター)研究所副所長、静岡県立静岡がんセンター総長、宮内庁御用掛、政府のがん対策推進協議会会長、国際がん研究機関科学評議会委員などを経て現職。高松宮妃癌研究基金学術賞(2000年)、ISOBMアボット賞(国際腫瘍学バイオマーカー学会賞、2014年)を受賞。研究領域は乳がん治療、腫瘍マーカー、ゲノム医療、がんの社会学。著書に『親ががんになったら読む本』(主婦の友社)、『高齢者とがん』(中央公論新社)がある。







