60代・70代からの不調と痛みに効く！「キックボクシング・エクササイズ」のやり方
文／鈴木拓也
90代男性が杖なしで歩けるように
「60代・70代はまだ若手！」
そう言うのは、元キックボクサーの生井宏樹さん。
生井さんは、J-NETWORKライト級日本ランキングで１位に輝いた経歴の持ち主。
今は「接骨院Palledo」を営む柔道整復師として活躍している。
「若手！」というのは、さすがにキックボクシングの話ではない。生井さんが編み出した「キックボクシング・エクササイズ」のことだ。
これは名のとおり、キックボクシングの動作を、シニア向けの健康エクササイズに応用したもの。ジャブ、ヒザ蹴り、フック、ローキックからミドルキックまで、さまざまな難易度のバリエーションがある。
生井さんは、接骨院に併設したジム「PEACE PACE」で、シニアの人たちにこのエクササイズの手ほどきをしている。筋力低下で松葉杖をついていた90代の男性が、杖なしで歩けるようになるなど、効果は抜群。だから、還暦程度ではまだまだ若手というわけだ。
その生井さんの監修のもと、刊行されたのが『60代・70代からの不調と痛みに効く！ キックボクシング・エクササイズ』（メイツ出版）。ジムに通わずとも、エクササイズを独習できる注目の１冊だ。
今回は、初級・中級メニューからその一部を紹介しよう。
基本の構えからジャブへ
まず一番簡単なジャブだが、その前に基本の構え方から始めよう。
立ち姿勢で、利き手と反対側の足を前に出す。利き手が右手であれば左足を前に出し、右足を後ろに引く。
両手を握り、アゴの高さに持ち上げる。左手を前、右手を後ろに引く。脇を締め、拳と拳の間に顔を置く感じで。この際、アゴを引く。
この姿勢でジャブを打つ。基本的には左腕を伸ばすだけだが、コツがあって、それは「肩甲骨を入れる」。具体的には次のようにする。
肩甲骨とは、背中の上部にある大きな三角形をした骨です。その肩甲骨を前にズラすイメージで腕を前に伸ばしましょう。肩の内側が頬にくっつく程度が理想です。アゴが肩に隠れるぐらいまで伸ばせるようになると、エクササイズの効果がアップします。（本書22pより）
体幹を鍛えるヒザ蹴り
通常のボクシングとキックボクシングの違いは、後者は「蹴り」（キック）がルール上認められている点だ。
本エクササイズでも「蹴り」が登場する。そのなかで一番やさしいのがヒザ蹴り。基本、片足の太ももを上げるだけだが、ふだん片足立ちをする機会は少ないので、少々難しいかもしれない。
ともあれ、やってみよう。やり方は、基本の構えを取ってから、左足を半歩前に踏み込んで右ヒザを持ち上げる。
ヒザの角度は90度を目標に。それでヒザが、お腹ぐらいの高さに上がることになる。上げたら、そのままストンと下ろすのではなく、元の場所に戻すことを心がける。これは、「腹筋、背筋、股関節まわりの筋肉といった、体幹に刺激」を与えられるからだが、慣れるまではそこまで無理はしなくても大丈夫。
肩と腰にきくフック
フックとは、身体の左から右へ横様に宙を切るように打つパンチのこと。
まず基本の構えをとり、左手を肩の高さで体の横に広げる。そして右肩に向けて腕を真横に振るという一連の動作を行う。
これにも効果的に鍛えるためのコツがある。
ポイントはなるべく大きく振り切ることです。他のパンチと同様に肩甲骨を動かすことを意識し、背中を広げるイメージで腕を大きく振りましょう。（本書54pより）
＊ ＊ ＊
このエクササイズ、キックボクシングという激しい競技のイメージとは真逆のユルさがあると感じられるかもしれない。
しかし、繰り返しやってみると意外とキツくて息が切れるほど、立派な有酸素運動なのだ。それだけでなく、肩こりや腰痛の予防・改善になり、バランス感覚や体幹も鍛えられて転倒リスクも軽減。新鮮味があって続けやすいのも魅力なので、「ふだんから運動不足」という方はトライしてみてはいかがだろうか。
引用写真撮影：勝又寛晃
【今日の健康に良い１冊】
『60代・70代からの不調と痛みに効く！ キックボクシング・エクササイズ』
メイツ出版
文／鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube（Mystical Places in Japan）に掲載している。
