世界最高峰の食の都・京都。表通りでなく、一歩足を踏み入れた路地裏に、地元の人が通う小体で旨い店はある。その中でも、とりわけ新しくて、あまり知られていない食事処を選りすぐった。

最新美味処「京都は小体な店ほど面白い」

正統派の和食を供する地元愛あふれる新店

KAZUKA多佳.(カズカ) (左京区田中下柳町)

本日の一献3300円のコース最後は天ぷら。天使の海老、万願寺とうがらし、鱚、しいたけなど。追加で鱧やアスパラなど季節の食材も。
菜種油と胡麻油をほどよく合わせ、温度を見ながら、見事な手つきで天ぷらを揚げていく。揚げたての天ぷらは格別の味わいだ。

正統派の和食と揚げたての天ぷらをお値打ち価格で味わう

「正統派の和食と揚げたての天ぷらをお値打ち価格で味わえる」と地元京都人の間で耳目を集めるのが、ここ『KAZUKA多佳.』だ。「本日の一献」と名付けられたおまかせは、八寸の後にお凌(しの)ぎの寿司、お椀、造り、煮物、天ぷらという充実の内容。それが、3000円台というから、通いたくなる。

店主の依岡秀多(よりおか・ひでかず)さん(59歳)は、京都のホテルで腕を磨き、料理長も務めた経験豊富な実力派。50代のうちに自分の店を持ちたいと、昨年、出町柳で開業を果たした。

「繁華街からも距離があり、小さな店です。地元の方の食堂のような場になればと思い、価格も控えめを心掛けました」と話す。

そのためには、高級素材はできるだけ使わず、ひたすら手間暇かけて丁寧に作ることだと言う依岡さん。たとえば、海老の天ぷらも才巻海老ではなく海外産で高品質の天使の海老を使うことで価格を抑えるそうだ。

「作りたてを味わっていただくのが一番。ゆっくりやっていきたい」と信念を貫く。

八寸4種盛り。左から利休麩と海老、鰻のコンフィの串、百合根豆腐、ホヤとクラゲのこのわた和え、焼き味噌、ヒラメの細巻き寿司。
店主の依岡秀多さんと奥様の佳代さん。ふたりの家庭的なもてなしも心地よく、それもこの店に足を運びたくなる理由だろう。

KAZUKA多佳.

京都市左京区田中下柳町9-7
電話:090・9704・2644
営業時間:12時~13時30分、17時~21時
定休日:月曜、日曜夜
交通:京阪鴨東線出で町柳駅から徒歩約3分

取材・文/中井シノブ 撮影/高嶋克郎

 

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※この記事は『サライ』2022年10月号より転載しました。

 

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