
プリンと聞いて真っ先に思い浮かべるひとつが、江崎グリコの「プッチンプリン」だろう。2022年に発売50周年を迎える。なぜこんなにも長く愛され続けているのか?

「弊社のプリンが発売されたのは、昭和47(1972)年です。当時、スーパーでヨーグルトは売られていましたが、デザート類はほとんどありませんでした。そこで目を付けたのが、洋菓子店や喫茶店で人気を誇るプリンでした」(プッチンプリンのマーケティングを担当する江崎グリコ・柳澤香さん)
一口目からプリンとカラメルを一緒に食べるにはどうしたらいいかという難題を解決すべく、カップの底のツマミをプッチンする方法にたどり着くのだが、人気の理由はそこだけではない。
「実は、プッチンプリンの味のお手本はシュークリームなんです。あのカスタードクリームのコクと飽きのこない味わいを再現すべく、開発に取り組みました」(同前)
世代を繋ぐプリン

洋菓子研究家の吉田菊次郎さんは、それまでのプリンのように蒸して作らないことで生まれた、プッチンプリンのツルンとした食感が「画期的だった」と評価する。
「味や香りが口から鼻に抜け、美味しさをしっかりと感じてもらいたい。結果、生まれたのが、あのツルンとした食感です。喉ごしの良さは、食べ続けても飽きないための工夫でした」(柳澤さん)
味にはまだまだ秘密がある。通常のプリンには入っていない原料が含まれているという。
「コクを実現するために、練乳が入っているんです。元々、グリコ協同乳業が生み出した商品ですので、当初から牛乳にも気を配っていました。現在も、国産卵やバターなど原材料を厳選して、安心で美味しいプリンを作り続けています」(同前)
プッチンプリンは発売以来、少しずつ改良を重ねている。例えば、下表のように、さまざまなフレーバーの商品や常温で携行できる「ちょこっとプッチンプリン」の開発、また公式ホームページ上ではいろいろな「プッチンプリンレシピ」も提案している。
「お客さまから“孫と一緒に食べて昔を懐かしく思い出した”と言っていただくことが増えました。これからも世代を繋いでいきたいですね」(同前)
プッチンプリンの歴史
●1972年 グリコプリン発売

「プリンなど売れない」という社内の反対を押し切り、苦労の末に商品化へ。
●1974年 名称をプッチンプリンに変更

●1990年 ファミリー向け3個パック発売

●1993年 ビッグサイズが登場

●2006年 超特大サイズが誕生

●2008年 運試しを兼ねた商品を発売

●2012年 冷や奴風の商品が登場

●2013年 ギネス世界記録に認定

●2014年 たっぷりソースの商品を発売

●2015年 真っ黒な商品が登場

●2018年 一口サイズを発売

●2020年 植物原料の商品が誕生

卵、乳不使用で植物原料のみで作られた「植物生まれのBigプッチンプリン」。
●2021年 ミルクコーヒー味を発売

●2022年 発売50周年

取材・文/角山祥道 写真提供/江崎グリコ

プリンの原型が誕生したのは500年以上も昔。イギリスの船員食として偶発的に出来上がりました。やがて日本に伝来し、食文化として花開きます。昨今では個性豊かなプリンを提供する店が増え、老若男女が舌鼓を打っています。
特集では「ハレの日」に食するに相応しい東西の名店の味を厳選して紹介。さらに「伝説の職人」と称されるパティシエによる、家庭で作れる極上レシピも特別公開。
