文 /小林幸子

小林幸子の「幸」を招くルール

ファン歴50年以上の方はもとより、若者やネットユーザーからも「ラスボス」と称され、幅広い層に圧倒的な人気を持つ小林幸子さん。小林さんの「今が楽しい、自分らしい人生」をおくるための秘訣とは? 齢を重ねるたび、元気と勇気、パワーを増し続ける、ラスボス流「言葉の魔法」を初披露!

ラスボスは何度も進化する

知識やテクニックだけじゃない。大切なのは“志”が立派かどうか。次々と未知の世界の扉を開けて新たなことに挑む、その原動力はどこにあるのか。そして、進化を重ね続ける秘訣とは?

ルール19

このメッセージは小林幸子さんの直筆です。

「こんちくしょう!」。これ、実は私が大切にしている言葉のひとつなんです。はしたない? いいんです、だって本当に悔しい時にしか使わない言葉なんですから。
 
2019年2月、芸能生活55周年記念曲第一弾を発表しました。湯川れい子さんに作詞していただいた『ポーカーフェイスにさよなら』です。

このミュージックビデオを、東京国立博物館の表慶館で収録したのですが、ここにゲストとして参加したのが、紅白にも出場した人気グループ・純烈の皆さんです。

メンバーのひとりが直前に騒動で脱退し、5人組から4人組になったばかりでした。

騒動以前から動いていた企画でしたが、「ご迷惑をおかけするので」と彼らから、辞退の申し出がありました。

問題を起こしたメンバーはすでに、責任をとって芸能界を引退しています。

それでも連帯責任をマスコミから執拗に追及されるのが、芸能界というところ。私には彼らの悔しさが痛いほどわかりました。

だったら私にできることをしようじゃないの!

私は予定通り、純烈の皆に出ていただくことにしました。少しでも彼らの後押しになれば、と考えたからです。

彼らにとってこの仕事が、4人体制での初仕事だったようです。

「大丈夫よ! これをバネにしてがんばって」

私は彼らに、こう声をかけました。

実際、「悔しさ」という感情は、ものすごいエネルギーを秘めています。

「悔しさ」は人生のバネです。

「悔しさ」によって、思いもよらない力がわいてくるんです。

過去を引きずると新しいことはできない

先に事務所騒動で四面楚歌になったと話しましたが、ホント、悔しかったなあ。

思わぬかたちで突き落とされ、そこで私は初めて、千尋の谷の深さを思い知りました。

「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」と言いますが、あれはライオンの親が、子どもに与える愛の試練。こっちは、愛なんて関係ないところで引きずり落とされたんですから、悔しさもつのります。

でもね、またまた登場しますが、さだ兄に、こう言われたんです。

「幸っちゃん、過去のことはもう引きずるな。そうじゃないと、新しいことはできないぞ」

たしかにそうです。

誰かを怨んでも、先には進みません。

仕返しにエネルギーを使うなんてバカげています。

怨みはバネにならないのです。そこに囚われてしまうから。

悔しくて当然。悔しさのエネルギーは、仕返しじゃなくて、相手を見返すことに使えばいいのです。

涙も流しませんでした。「泣く」ことにエネルギーを消費したくなかったんです。とにかく悔しさをバネに、前に進もう。そう決意しました。

そんなさなか、運命的に出会ったのが、ニコニコ動画でした。ニコ生への出演は、先方からの依頼でした。先にも触れましたが、今も「何で、出るようになったんですか?」と聞かれることがありますので、詳しい経緯をもう少し説明しておきますね。

最初は、新曲『茨の木』のプロモーション番組をやらないか、というお誘いだったのです。ところが、当時の私は、名前こそうっすらと聞いたことがありましたが、ニコ動がまったく何のことかわかりません。

携帯も、スマホじゃなくてガラケーでしたからね。本当に「インターネット? 何それ?」の世界(笑)。

ニコ動で若い世代とのつながりを実感

でも、スタッフが口をそろえて「面白い!」と言うので、だったら乗ってみようじゃないの、ということになったんです。

それが初めての番組となった「小林幸子降臨!『茨の木』夢は捨てずに生放送 presented by dwango.jp」(2012年10月22日放送)。ところが、指定のスタジオに行ってみたら、これが狭い!

しかも撮影はテレビカメラではなく、一眼レフ。「えっ、これで撮るの?」と驚いたことを覚えています。

いざ、放送が始まると、さらに驚き。リアルタイムに視聴者の反応が文字で表示されるし、その書き込みも「降臨」とか「ラスボス」とか、面白いものばかり。『茨の木』のMVが流れたら「歌うまい!」ってコメントが来るし。

何より、ネットの世界を通じて、今まで触れあうことのなかった若い世代の人たちとつながっていることを実感できました。

もし、千尋の谷に突き落とされていなかったら、今でもネット世界と縁遠かったかもしれません。

苦労や悔しさがなかったら、「よし、やってやろう!」と思わなかったかもしれません。

さらにそれから、あの紅白でボカロ曲『千本桜』をニコニコ動画とコラボして歌うことになるのですから、皆さんと一緒にすごいムーブメントを起こしたと、我ながら感心しています。

一、「こんちくしょう!」と思っても誰かを怨まない

一、悔しさのエネルギーは相手を見返すことに使う

一、苦労や悔しさが、新たな出会いをもたらすことがある

小林幸子(こばやしさちこ)
1953年、新潟県生まれ。64年、『ウソツキ鴎』で歌手デビュー。その後、長く低迷期が続いたが、79年、『おもいで酒』が200万枚を超える大ヒットとなり、日本レコード大賞最優秀歌唱賞をはじめ数々の賞を受賞。同年、NHK紅白歌合戦に初出場。以来、34回出場し、その「豪華衣装」が大晦日の風物詩と謳われる。近年は、若者やネットユーザーの間で、「ラスボス」と称されるようになり、ニコニコ動画への「ボカロ曲」の投稿やアニメ『ポケットモンスター』の主題歌を歌うなどして、“神曲”を連発している。

ラスボスの伝言
~小林幸子の「幸」を招く20のルール~

小林幸子 著
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