確定拠出年金の内容や活用法について、皆さんはどの程度ご存知でしょうか。今回は確定拠出年金のメリットとデメリットについて詳しくご紹介します。特にデメリットについては「知らなかったがために損をした」と、思わぬ落とし穴にはまらないように、注意すべき点について整理しておきたいと思います。
内容や仕組みをしっかり理解すれば、デメリットを排除してメリットを享受することができます。安心して老後の資金作りができるよう役立てていきましょう。
目次
確定拠出年金のメリットとデメリットとは?
企業型確定拠出年金のメリットとデメリット
個人型確定拠出年金のメリットとデメリット
年金と一時金、受け取りはどちらがお得?
まとめ
確定拠出年金のメリットとデメリットとは?
世の中の大きな流れとして、会社が用意する従業員のための退職金制度は従来型の「確定給付型」から「確定拠出型」に変わりつつあります。この裏事情としては、少子高齢化や低成長、超低金利を時代背景とした「企業のリスク許容度の低下」が挙げられます。
従業員への退職給付額を確保するために必要とされる予定利回りに対して、実際の運用利回りが届かず、その不足額を会社が穴埋めするといういわゆる「逆ざや」問題が会社財務を圧迫しています。そして、経営を揺るがすほどの深刻な事態が多く生じました。
そこで、従来の「確定給付型」から「確定拠出型」に制度移行することによって、掛け金の運用リスクを従業員個人の自己責任とし、会社は「逆ざや」リスクから解放されることになるわけです。
このような裏事情を知ればこそ、私たちは一見「デメリット」に映る「自己責任」に正面から向き合い、自らの力で退職金をしっかり育て上げることにより、蓋を開けてみれば「メリット」であったと判断できるような結果にしたいものです。
企業型確定拠出年金のメリットとデメリット
企業型確定拠出年金の良い面、悪い面についてみていきましょう。
メリット
企業型確定拠出年金のメリットは、3つの税金優遇です。
▷積み立てる掛け金
給与に上乗せされて拠出される掛け金は、所得とならずに非課税扱いになります。さらに、個人的にマッチング拠出をする場合の追加の掛け金も、所得控除の対象となります。こちらは企業側で年末調整されますので、従業員の方は特に手続きをする必要はありません。
▷運用益
運用中に利子や配当を受け取ったり、売却して利益が出たときは、所得として通常は約20%の所得税・住民税がかかりますが、確定拠出年金制度に関しては無税扱いとなります。
▷受け取る給付金
60歳以降に一時金として受ける場合は、退職所得控除が受けられます。年金として受け取る場合には、公的年金等控除が利用できます。
デメリット
企業型確定拠出年金のデメリットは、主に以下の3つとなります。
▷運用リスクを負う
企業は掛金を拠出してくれるだけで、その後の運用商品の選択やその運用結果について責任を持ってくれません。つまり、運用結果については従業員の自己責任になるのです。
▷流動性がない
確定拠出年金の掛け金は、原則60歳になるまで解約して現金化することができません。特に自分の給与からマッチング拠出が可能な場合には、上限額ギリギリまで拠出しがちです。しかし、一度拠出してしまうと流動性を失うことをあらかじめ認識しておきましょう。
▷運営管理機関を選べない
運用商品のラインナップは、会社が採用している運営管理機関によって異なります。取扱商品の数が多ければ多いほど、自由度があり好ましいのですが、自分で選択できないので、与えられた選択肢の中から選ばざるを得ないことになります。
個人型確定拠出年金のメリットとデメリット
個人型確定拠出年金の良い面、悪い面についてみていきましょう。
メリット
個人型確定拠出年金いわゆるiDeCoのメリットとして、企業型と同様に「3つの税金優遇」を受けられますが、それに加えて「運営管理機関を自分で選択できる」ことも挙げられます。こちらは企業型確定拠出年金のデメリットの一つとして紹介したものです。
企業型にしても個人型iDeCoにしても、運用成果が自分の退職金となるわけですから、無駄なく効率的な資産運用を行うことが求められます。その際にとても重要なのが、選択する運用商品です。自分の投資期間とリスク許容度に見合った質の良い運用商品を選べるか否かが結果に大きく影響を及ぼします。
特に長期投資が基本となるため、選べる投資信託が手数料の高いものばかりの商品ラインナップだと、重たく足を引っ張られる運用を続けることになります。
会社からの拠出金は与えられた商品ラインナップから選ぶとしても、せめて個人の拠出分はiDeCoを利用したいところです。iDeCoと併用可能な制度であれば、給与からのマッチング拠出を利用せずに、取扱商品が豊富である運営管理機関を自分で選べるというiDeCoのメリットを活用することを検討してみましょう。
デメリット
iDeCoのデメリットは、企業型と同様に「1.運用リスクを負う」ことと「2.流動性がない」ということが該当します。もう一つデメリットを挙げるとすると、運営管理機関で設定されている諸手数料は自己負担になるということです。
運営管理機関によって、口座開設手数料や口座管理手数料などが決められています。これらの手数料については企業型では会社が負担するのが一般的ですが、iDeCoの場合は個人の負担となります。注意するのは、運用期間中にかかる口座管理手数料で、毎月100円~600円台と運営管理機関により、かなり幅がありますので必ずチェックしましょう。
年金と一時金、受け取りはどちらがお得?
確定拠出年金の受け取りは、原則60歳以降「年金」として受け取るか、「一時金」として受け取るか、または「両方の組み合わせ」にするかを選択することができます。
「年金」か「一時金」のどちらがお得かはケースバイケース。「一時金」の場合は、退職所得控除が使えますが、人によって控除枠が違うので、メリットを活かせる金額が異なってくるのです。
例えば、会社からの退職金で控除枠を使い切ってしまうような場合、iDeCoは「年金」による受け取りにするなど、状況に合わせて最適な選択を検討する必要があるのです。
まとめ
確定拠出年金のメリットとデメリットについてご理解いただけましたか? 長い人生を豊かに楽しく暮らしていくためには、便利な道具を使って無駄なく準備することが大切です。
確定拠出年金は、老後の生活資金を準備するためのとても便利でお得な道具の一つですね。正しい知識を身につけてぜひ上手に活用してみてください。
●構成・編集/内藤知夏(京都メディアライン HP:https://kyotomedialine.com FB:https://www.facebook.com/kyotomedialine/)
●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)
株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。
株式会社SMILELIFE project(https://www.smilelife-project.com)