文/永松茂久
人と話をするとき、誰もがうまく話したいと思いますよね。でもそう思いすぎて、必要以上に力み過ぎ、相手に不快な思いをさせてしまうことがあります。では相手に思いを伝えるには、どんな話をすれば良いイメージを持ってもらえるのでしょうか。
自分の話したいことではなく、相手が求める話をする
皮肉な話ですが、「うまく話そう」と思えば思うほど、相手に「もう会わなくていいかな」と思われるきっかけを作ってしまうものです。
押したら引かれる。これは、人間関係の基本的な力学です。
「うまく話そう」という姿勢が透けて見えると、多くの場合、相手は「自分に取り入ってメリットを得ようとしている」と受け取り、気持ちが離れてしまうのです。
「お役に立ちたい」という気持ちで話すと、それは自然と相手にも伝わり、相手もあなたの言葉に真摯に耳を傾け始めます。
常に心がけておくべきことは、
「自分の話したいことではなく、相手の求めている話をする」
ということなのです。
「正しい話」ではなく「好かれる話」をする
一見、決まりや正論で動いているように見える世の中のほとんどは、実は感情に基づいて動いています。
簡単に言うと、ビジネスも、友人関係も、コミュニティも、「好き嫌い」がすべてなのです。
私たちは子どもの頃、親や学校の先生から、「好き嫌いで人を判断してはいけません」と言われました。しかし、本音の部分では、親や学校の先生たちも好き嫌いで動いているのが現実です。
そういう意味では、日常のささいな会話においても、「自分が話したいこと」ではなく「相手の求めている話」をする。
「正しい話」ではなく「好かれる話」をする。それが「また会いたい」と思われる人になる一番のキーポイントとなります。
売り込むのではなく、相手に役立つ情報を届ける
ビジネスも同じです。
例えばあなたが営業マンだとした場合、同じ商品でも、お客様に好感を持たれなければ、お客様はあなたから商品を買おうとは思いません。
最終的にものをいうのは、人として好かれるかどうかなのです。
自分が売りたいものについて一方的に話してしまうと、どんなに素晴らしい商品でも売れません。
そうではなく、「お役に立ちたい」という気持ちを持って話すと、もれなく相手の要望に応える話、好かれる話ということになります。
例えば、すぐに自分の仕事に結びつかなくても、「前に、こういうことで困っているっておっしゃっていましたよね。実はこんな情報がありまして……」と、相手にとって耳寄りな話をする。
一見、非効率に思えても、相手優先で「好かれる話」をする人こそが、ゆくゆくは大きなチャンスをつかむのです。
ここを察し、相手にとって必要で喜ばれる話をできる人が、最終的には大きな利益を手にするのです。
永松茂久(ながまつ・しげひさ)/株式会社人財育成JAPAN 代表取締役。大分県中津市生まれ。2001年、わずか3坪のたこ焼きの行商から商売を始め、2003年に開店したダイニング陽なた家は、口コミだけで県外から毎年1万人を集める大繁盛店になる。自身の経験をもとに体系化した「一流の人材を集めるのではなく、今いる人間を一流にする」というコンセプトのユニークな人材育成法には定評があり、全国で多くの講演、セミナーを実施。「人の在り方」を伝えるニューリーダーとして、多くの若者から圧倒的な支持を得ており、講演の累計動員数は延べ45万人にのぼる。2016年より、拠点を東京麻布に移し、現在は執筆だけではなく、次世代育成スクールである永松塾、出版コンサルティング、イベント主催、映像編集、ブランディングプロデュースなど数々の事業を展開する実業家である。著作業では2020年、書籍の年間累計発行部数で65万部という記録を達成し、『人は話し方が9割』の単冊売り上げで2020年ビジネス書年間ランキング1位を獲得(日販調べ)。2021年には、同じく『人は話し方が9割』が「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」にて、「特別賞/コロナ禍を支えたビジネス書」を受賞。著書に『喜ばれる人になりなさい 母が残してくれた、たった1つの大切なこと』(すばる舎)、『在り方 自分の軸を持って生きるということ』(サンマーク出版)、『30代を無駄に生きるな』『20代を無難に生きるな』『影響力』『言葉は現実化する』『心の壁の壊し方』『男の条件』『人生に迷ったら知覧に行け』(きずな出版)、『感動の条件』(KKロングセラーズ)など多数あり、累計発行部数は200万部を突破している。