■コロンボ、ムンバイを経て女王船の描くアラビアンナイトの世界へ

『クイーン・エリザベス』世界一周クルーズも残り約1カ月となり、4月10日、スリランカのコロンボに到着しました。

旧称セイロンと呼ばれたこの国は紅茶の生産地として有名ですが、そのきっかけは、木の病気で滅びかけていたコーヒー畑を紅茶の大規模農園に変え、成功したことだといわれています。1985年に首都は隣接するスリ・ジャヤワルダナプラ・コッテに移りましたが、行政部門の移転などがあまり進まず、今もなお元首都コロンボが同国の政治・経済・商業・貿易の中心地として繁栄しているそうです。

1アラブ アブダビのクイーン・エリザベス歓迎」

1877年に設立されたコロンボ国立博物館は、スリランカ最大・最古の博物館で、白い荘厳な建物の内部にはキャンディ王朝の玉座や、スリランカ独特の悪魔払いに使われた仮面のコレクションなどが展示されています。

コロンボ市内で100年以上の歴史を持つアソカラマヤ寺院は、黄金色の大仏や涅槃仏を祀り、数多くの仏教画が釈迦の生涯や極楽浄土への道を説いていました。

2コロンボ黄金色の大仏

4月13日朝、海の彼方にインド門が見え始めました。インドのムンバイで最も目立つモニュメント・インド門は、英国王ジョージ5世とメアリー妃のインド訪問を記念し建設されたサラセン様式の壮大なアーチ門です。

3インド門

一方、ラブルナムロード沿いにあるマニ―・バーワンはイギリスからの独立運動指導者マハトマ・ガンジーがムンバイ滞在中(1917年から1934年)に住んでいた家です。今は博物館となり、多数の蔵書に囲まれた図書室、小さな寝台に愛用したスリッパと杖が置かれた寝室など、在りし日のガンジーの姿がしのばれる場所となっています。1948年、狂信的なヒンドゥー教徒の銃弾に倒れましたが、非暴力、不服従主義を指導した「独立の父」マハトマ(偉大な魂)ガンジーは、多くのインド人が賛美してやみません。

4ガンジー寝室

アジア紀行を終えた『クイーン・エリザベス』が次に目指したのはアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビでした。連邦を構成する7つの首長国はアブダビ、ドバイ、シャルジャ、ラアス・ル・ハイマ、アジュマン、ウムアルカイワイン、フジャイラで、その内のアブダビにあるアブダビ市が連邦の首都となっています。石油産地でもあるアブダビですが、最近、海外観光客誘致の観光開発にも力を入れ、その象徴の一つがヤス島にできたヤス・マリーナサーキットです。2009年には、UAE初のF1アブダビグランプリがこのサーキットで開催されました。

そこで、新しいアブダビの一面を知るため「ヤス・マリーナサーキット」見学ツアーに参加しました。到着すると早速、沢山の車が置いてあるヤスセントラルに案内され、レースカーのコックピット(運転席)試乗体験となりました。とても狭いスペースで、太った外国人男性の中には運転席から出られなくなり引っ張り出してもらう人もいるほどでした。次は全長5.554km、コーナー数21、反時計回りに走るというコースの解説を聞きながら観客席に座り写真撮影。

5ヤスサーキット表彰台

さらに、感激したのはF1名物「勝者のシャンパンファイト」が行われる本物の表彰台に行き、カップを持って記念撮影ができたことでした。その他出場ドライバーが集まり、レース進行、注意事項などの確認をするブリーフィングルーム、機器をそろえたコントロールセンターやメディアセンターなどサーキットの裏側も見ることができました。実は「ヤス・マリーナサーキット」は2014年のF1最終戦アブダビグランプリが行なわれる場所。11月23日、快音をとどろかせ疾走するカーレースと、どのドライバーがあの表彰台に上がるのか今から楽しみです。

6ギャラパーティー入場

次の寄港地ドバイでは、2014年『クイーン・エリザベス』世界一周クルーズのハイライトが用意されていました。それは、マディナ・ジュメイラホテルで開催された「世界一周乗客のためのギャラパーティー」。部屋に届いた招待状には、ドレスコードの欄に「ブラックタイ」と記載されていました。これは、燕尾服にはホワイトタイ(白の蝶ネクタイ)、タキシードにはブラックタイ(黒の蝶ネクタイ)をつけるという服装のプロトコル(儀礼上のしきたり)からきている言葉で、男性はタキシード、女性はそれに釣り合うイブニングドレスなどを意味します。

7鷹を腕に乗せる

当日は、着飾った衣装の紳士淑女が、ぞくぞくと迎えのバスに乗り込み、会場のメディナ・ジュメイラホテルに到着。中庭に赤いじゅうたんを引き、アリスター・クラーク船長をはじめ機関長などの上級士官が招待客一人ひとりを握手と共に迎えました。池のほとりには、べドウイン(アラブ系遊牧民)テントのような場所をしつらえ、晩餐前のカクテルと共に、アラブ首長国連邦の国鳥である鷹を腕に乗せる体験や、アラビア文字で名前を書いてもらう余興が披露されました。アラブの王族たちにとって鷹は特別な鳥であり、高価な鷹の中には鷹用のパスポートを持ち、主人と共に海外へ行くケースもあるそうです。

日が暮れ始めると、アラブ太鼓隊の先導で宴会場がオープン。ローマトマトのテリーヌ、トリュフ入り大ヒラメのローストなど、次々に運ばれるご馳走に舌鼓を打ちながら、ベリーダンスに手拍子を打ち、最後は乗客たちの舞踏絵巻が夜中の12時過ぎまで続く華やかさ。女王船が演出したアラビアンナイトは、忘れられない夢の一夜物語を見せてくれました。

8ベリーダンス

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