
人生百年時代と言われるようになり、50代からでも投資は決して遅いものではなくなりました。政府もNISA(少額投資非課税制度)などで国民の投資を後押ししています。
株式投資をやっている方にとって、もっとも頭を悩ませるのは買い時と売り時の決断ではないでしょうか。
そこで、参考にしたいのが、『投資初心者の僕がプロたちから学んだ、正しいお金の増やし方』(徳間書店)です。元TBSアナウンサーで、アメリカで起業するなど、ビジネスの世界でも活躍する国山ハセンさんが、投資初心者だったご自身の体験も交えて、投資のイロハについて、わかりやすくまとめた一冊。
今回は、国山ハセン著『資初心者の僕がプロたちから学んだ、正しいお金の増やし方』(徳間書店)の中から、「買い時・売り時のサイン」を紹介します。
「定点観測」は絶対不可欠
「買い時や適正価格って、どうやって判断するんですか?」
投資の世界でもっとも難しい問題の1つです。以前、とある会食の場でお会いした個人投資家の方がこんなことをおっしゃいました。
「株価が○○○円まで落ちたとき、“安い”と思ったから買いました」
僕は身を乗り出し、「なぜその株価を“安い”と判断できたんですか?」と質問。けっこう食い下がったものの、その方は口ごもって明確な答えをくれませんでした。「教えてくれないなんてケチ!」と心の中で舌打ちしたものです。器が小さいですね、我ながら(笑)。
今ではわかります。その方が口ごもった理由が。それは数式やテクニカルな分析で説明できるものではなく、日々
の観察から自然と身についていく「相場感」に根差していたからでしょう。
プロが使う言葉で言えば、市場全体の雰囲気を示す「地合い」や、特定の価格帯(レンジ)で株価が動きやすいことを見極める「レンジ相場」といった感覚に近いものだと思います。要するに、「このあたりまで値下がりしたら、買いが入って値上がりする」「この水準を超えると売られやすい」といった“相場のクセ”がなんとなくつかめる。
僕の相場感を育ててくれたのは、TeslaとNVIDIAの2銘柄でした。
不思議なものでTesla 株を毎日チェックしているうちに、「◯◯◯ドルを切ったら買いだな」という自分なりの感覚が自然と生まれます。たとえば「Teslaの株価が300ドルを下回った。数日後には300ドル台に戻った」といった動きを何度も見ていると、「なるほど、Tesla株は300ドル付近で下げ止まりやすいのか」と気づくのです。
毎日同じ銘柄を観察し続けるこの方法がいいのは、自分なりの「買い時ライン」が日々アップデートされることです。
たとえば、Teslaの株価は2025年の9 月に400ドル台まで上がりました。でも、2025年の上半期を振り返ると、株価は200ドル台から400ドル台の間の行ったり来たりを繰り返していました。だからそのころ僕は「300ドルあたりが買い時かな」となんとなく感じていたのです。
しかし、その後400ドル台が続くようになると、「あ、基準が変わったな。今度は400ドルを下回ったら買い時かも」と、自分の中の基準が最新の情報に更新されていくのです。しかも、複雑な計算も専門的なチャート分析も不要。僕のような一般の投資家にとってはもってこいの方法です。
ニュースが出たときにはもう遅い
この「定点観測」によって買い時を見極めるという方法。ただ株価の動向を眺めるだけの単純な方法ですが、これをやるかやらないかで投資の結果は大きく変わります。
なぜか? 多くの人は“ニュースになってから”行動しようとするからです。
たとえば、「Microsoftの時価総額が4 兆ドルを突破!」というニュースを見た瞬間、「よし、Microsoftは買いだ!」と勢いでクリックしてしまう。ところが、その時点で実は株価は上がりきっていて、買ったそばから一転して株価がどんどん下がっていくかもしれない。これが「高値づかみ」と呼ばれる最悪の事態です。投資で失敗する人の典型的なパターンです。
もしMicrosoft の株価を毎日チェックしていれば、そうした高値づかみはかなりの確率で防げるでしょう。
具体的にはこういう流れです。毎日、証券アプリを開いてMicrosoftの株価をチェックする。これを1 週間も続ければ、「あ、最近500ドル台前半で推移しているな」と気づきます。1ヶ月続ければ、「400ドル台後半が底値っぽいな」と見えてきます。3ヶ月続ければ、「最近ちょっと加熱気味だな」「このへんで一度調整が入りそうだな」という勘が働くようになります。
すると、あるとき「時価総額が最高値を更新!」といったセンセーショナルなニュースが出たとき、「あ、これは今ピークだな。買うのは調整が入ってからだ」と冷静に判断できる。
でも、多くの人はこの定点観測を「面倒くさい」と感じてやりません。これが、僕のような凡人投資家にとっては朗報です(笑)。
投資の世界で成功する人は、特別な情報を持っている人ばかりではありません。ほかの人よりほんの少し早く“気づける”だけで有利になる。ちょっとだけマメな人間になるだけで、面倒くさがりの投資家たちから頭ひとつ抜けることができるのです。
どんな有望株でもいきなりフルベットは禁物
「これだ!」と思う未来の企業を見つけたとき、人はどうしても全力で賭けたくなってしまう。
でも、僕の師・中島聡さん(元Microsoft の伝説的エンジニア)はとても慎重です。たとえ「この会社はすばらしい!」と感動しても、一気に大金を投じることは絶対にしません。
中島さんのやり方はこうです。
まずは“唾をつける”くらいの少額で試しに買ってみる。そして、新製品発表や決算、CEOの発言などを注意深くチェックしながら、そのつど「本格的に買い増すべきか」を慎重に判断するそうです。
買い増しを決断したあとも焦りは禁物です。たとえば50万円投資すると決めたなら、5万円ずつ10ヶ月に分ける。これはいわゆる「ドルコスト平均法」と呼ばれる手法です。株価が高いときは少なく、株価が安いときは多く買えるため、結果的に高値づかみを避けやすい。我が師の教えは、なんと理にかなった手法なのでしょうか。
ところが、弟子を自負する僕が師匠の教えに背き、やらかしてしまったことがあります。
OpenAIのCEO サム・アルトマン氏が関わるOklo(オクロ)という原子力関連の企業があります。僕はOkloは急成長すると直感しました。なぜなら「生成AI が社会インフラになる→データセンター需要が急増→電力需要が高騰→原子力が再評価される」という未来のシナリオが頭の中でつながったからです。しかも、ネット証券の個別株ランキングでも上位。もう完全に舞い上がっていました。
実はこの企業、もともと中島さんのメルマガで知った銘柄です。ただし師匠は「まだよくわからない」と慎重な姿勢でしたが、僕はといえば「あのサム・アルトマンが関わってるなら間違いない!」と思い込んで、株価60ドルのときに一気に30万円分を購入したのです。
……翌日、株価は10 ドルも急落しました。見事な高値づかみで、モニターの前でただ呆然。笑うしかありませんでした。
※投資にはリスクがつきものです。自己責任において無理のない範囲で行いましょう。本記事は、特定の銘柄株をお勧めするものではありません。
「あれだけ師匠から学んできたのに、俺はいったい何をやってるんだ……」と情けなくなってしまいました。
もちろん、頭ではわかっているんです。でも、いざ買うとなると「このチャンスを逃したら後悔するかも」「毎月買うのって面倒だな」といった感情が理性を退けてしまう。
知識として“正しい方法”を理解していても、それを実行できなければ何の意味もありません。感情に流されてしまう人間の弱さを、自分の身をもって証明してしまいました。
この僕の失敗談は、ぜひ反面教師にしてください。「良い子は絶対に真似しないでください」と心から思います。
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投資初心者の僕がプロたちから学んだ、正しいお金の増やし方
著/国山ハセン
徳間書店 1,760円(税込)
国山ハセン(くにやま・はせん)
1991年生まれ、東京都出身。中央大学商学部卒業。2013年、TBS テレビに入社。数々の番組でメインMC などを務め、2021年8月からは報道番組『news23』のキャスターも務める。2022年末をもってTBSテレビを退社し、ビジネス映像メディア「PIVOT」に参画。さまざまな動画コンテンツの企画・制作に携わり、なかでもMCを務める『MONEY SKILL SET(マネースキルセット)』『MONEY SKILL SET EXTRA(マネースキルセット・エクストラ)』は資産運用の学びの番組として大きな人気を博している。
2025 年、アメリカでFOX UNION Inc. を立ち上げ、日本発のグローバルメディア「UnKnown」を合わせてローンチ。
著書に『アタマがよくなる「対話力」』(朝日新聞出版)がある。
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