50代で揺らぐ、体調と経済不安
一時的に、本気で恋人を作ろうと思ったのは、テレビドラマ『最後から二番目の恋』(2012年)が放送された45歳のとき。
「45歳のシングル女性と51歳のシングルファーザーが、隣同士から距離を詰めていく物語で、本当に素敵なんです。あの世界観に憧れて、作品の舞台の鎌倉にドラマが好きな友人と何度も行きました。彼女はずっと独身だったので、一緒に引っ越そうかと話したこともありました。
あのドラマのヒロインと私は同じ歳。だから、私も恋愛できると思い、その年の同窓会や飲み会に行くようにしたのですが、同世代で清潔感があって優しい人は、既婚者ばかり。これが現実なんです」
容姿に対する不安もあった。
「白髪があると恋もできないと思い、髪を染めていました。でもたるんだ体はどうしようもない。それが見られるのが怖いと思い、恋愛は早々に白旗をあげました」
ドラマのような素敵な恋に憧れながらも、それは遥か彼方にある。老いはどんどん近づいていき、恋愛の相手になりそうな男性はいない。
「更年期になったのもこの頃。娘の毒舌に病むほど傷ついたり、気分が沈みがちになりました。そうするうちに、だるさや手足のしびれ、頭痛などが時々起こり、病院で血液検査すると更年期だという。
私たちの世代には、“生理があるうちが女”という刷り込みがある。だから、だんだん元気がなくなった。仕事こそ頑張りますが、あとはダラダラしていた。46歳ごろから51歳に閉経するまでの5年間は、突然汗が出るホットフラッシュや、手足が氷のように冷たくなることもあって、心身ともに辛かったです」
営業先で大量の汗が出て、タオルで拭っていたこともあった。
「疲れやすく、立てなくなって公園のベンチで座っていたこともありました。でも、閉経してしまうと、スパーンと元気になる。50代は体調が揺らぎます。不調を理由に仕事を休んだり辞めなかったりしたのは、本当に良かった」
その背景には、洋子さんが持ち家ではなく賃貸生活を続けていることにもあった。
「買いそびれたんです。皆に買ったほうがいいと言われていたのに、覚悟が決まらず先延ばしにしたんです。引っ越しが嫌だとか、娘の転校を避けたいとか、子育てを通じて培った人間関係も手放しがたいなど、“買わない理由”はいくらでも出てくるんですよ」
40代は家を購入する、本当に最後のチャンスだと感じたという。
「貯金がある程度あるから、郊外なら一括でも購入できますし、生活の変化にも耐えられる体力がある。でもぐずぐずしちゃったんです。手持ちの貯金は目減りする不安があるし、一生続く、維持費と固定資産税のことを考えると踏ん切りもつかない。当面の生活費に不安はありませんが、退職後のお金をどうするか、お金のことで本格的に気持ちが揺らぎ始めたのは、50代後半から」
【娘も独立、これから一人になるなら、伴侶がいた方がいいと結婚相談所へ……その2に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(小学館新書)がある。
