生身の男性との恋愛は、気持ち悪さが勝った

新聞奨学生として過ごした学生時代は忙しくて恋愛どころではなかったが、社会人になれば恋愛のチャンスもあっただろう。

「恋愛というか、“モノ”として扱われることは数えきれないほどありました。まず、新卒時に取引先との飲み会で、40代の男性にラブホテルに連れ込まれそうになったことがありました。逃げましたけどね。90年代後半の日本は、今とは全く違います。女性をモノのように扱ってもいい時代だったんです」

上司や先輩からのハラスメントもあったが、毅然として対応したという。

「20代は、みんな恋愛をする。女友達も同期もあの人と付き合ったとか、告白されたとかそんな話が増えていく。初めて男性に触れたのは、24歳のとき。友達に誘われてダブルデートをして、葛西か品川の水族館に行ったんです。キスには応じましたが、汗、体温、口臭とか体臭が気持ち悪くて無理だと。私、恋愛を少女漫画で学んでしまったので、生身の人間の気持ち悪さに耐えられなかったのかも」

一方、仕事は好調だった。20代後半から30代は、大きな仕事を任せられて、充実した日々を過ごしていた。

「稼ぐお金も増えて、自由になるお金ができた。そこで私はオイルマッサージにハマったんです。熟練のセラピストが、私の体にオイルを塗り、筋肉やリンパのこりを的確に流してくれる。毎月、15万円分くらい使っていましたからね。今思えば、人の温もりやスキンシップを求めていたんでしょうね」

人生最初の”ゆらぎの扉”は妊娠・出産の可能性で開いたという。子供を産まずに人生を終えることについて、考えては落ち込んだ。

「38歳になったときに、“子供は産むなら最後のチャンスだ”と漠然と思ったんです。子供が欲しいと思ったことはないのに、産む人生もあったのではないかと揺らぎました。今思えば、きっとホルモンとか、本能のせいなんでしょうね」

独身のまま、体外受精で妊娠することを考えたこともあった。

「恋愛して妊娠することは無理だと思い、海外の精子バンクのサイトを見まくっていました。独身でも提供は受けられることは分かりましたが、実家とは疎遠だし、一人で産み育てることは現実的に難しい。不可能だとは知っていても、妊娠の妄想は膨らんでいく。自分がこれから出産するという体制を取ってイマジナリー出産したり(笑)。周囲の本格的な不妊治療をしている人の話も入ってきて、3年くらいは揺らいでいたと思います」

それが落ち着いた後にやってきたのは、恋愛を求める気持ちだった。周囲で魅力的な男性はすでに結婚している。そこで典子さんは、43歳のときに一大決心をして、マッチングアプリに登録した。

【同世代の男性とマッチングして会ってみたが……〜その2〜に続きます】

取材・文/沢木文

1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(小学館新書)がある。

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