仕事と恋人を一度に失い、29歳で「ただ生きている状態に」
やりたいことが見つからないままフリーターを続けていた25歳のとき、弟が結婚。そのことがきっかけで紹介予定派遣を経て正社員になる。
「弟の結婚で、急に現実を突きつけられた気がしました。家庭を持てるような年齢なんだ、大人なんだって。それまで結婚を意識するような長い付き合いもしていなかったので、まずは就職だと思って、建築設備の点検などを行う企業の事務の仕事を始めて、半年後に正社員になりました。一度目の就職と同じような仕事内容ではあったんですけど、正社員という重みは20歳のときとは違いましたね。やっと大人になれたと思いました」
その就職先で出会ったのが唯一結婚の約束をした相手だった。しかし、結婚を意識したときに問題が生じて、お互いの親を巻き込んだ結果、別れることになったという。
「詳しくは言えないのですが、信仰の違いです。相手の家族が熱心な活動をされているようで、彼は熱心ではないものの親に求められたら活動はするから、一緒にしてほしいと言われました。うちの両親はまったく興味がないし、私自身も信仰などは自由に選ばせてほしかった気持ちがありましたし。何度も何度も話し合いをしたのですが、平行線のまま、終わりました」
当時は同棲状態にあり、由美さんは実家に戻ることに。顔を合わせることが辛くなり、会社も退職した。両親は何も言って来なかったという。
「結婚がダメになったときに母親から帰って来ていいと言われていたから、すぐに荷物をまとめて実家に帰りました。元々彼の名義で借りていたマンションだったのでそんなに荷物もなかったですから。
仕事も辞めて、しばらく家でぼーっとしていました。当時、私は29歳でした。本当にただご飯を食べて寝るだけの生活だったのに、両親は何も言いませんでした。ありがたかったですけど、気を遣われている感じは伝わっていましたね」
一度は結婚を目指す心境になるも、最終的に結婚しないと決めたのはいつなのか。【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。