学歴コンプレックスの夫が落ちた大学に合格させる
娘が小学校高学年あたりから、勉強中心にシフト。この頃から、夫には別の女性の存在がちらつくこともあり、愛子さんはますます娘にのめり込んでいった。
「夫は1浪して東京の大学に進学してきた九州男児。私は東京生まれ東京育ちの社長令嬢ですから(笑)」
愛子さんの実家は、都心で不動産関連会社を経営している。
「夫のほうから熱心にプロポーズしたすえの恋愛結婚だったのですが、私のことを舅と姑からかばってくれなかったことで大嫌いになりました。まあ、大手企業に勤務して、給料も悪くないし、家も買ってくれたので、“オッカネー(お金)”だと思って、彼女がいようが、何をしていようが、片目どころか両目をつぶることにしたんです」
一般的に、子供の教育費には莫大な金額がかかる。愛子さんはその2倍を娘につぎ込んだという。0歳児から習い事に通っており、中学校から私立で、塾にも行っていた。
「夫には根深い学歴コンプレックスがある。一浪したのに、私立大学の中でもランクがあまり高くない大学にしか引っかからなかった。そんな夫と義両親にギャフンと言わせるためにも、娘を夫が落ちた大学に、現役で入れてやろうと思いました」
愛子さんは娘を超難関大学に進学させるために、なりふり構わなかった。娘が社会人になるまでにかかった“学校の授業料以外”の教育費は、ざっくり計算しても3000万円以上だという。学校の授業料を加えると、5000万円近くになる。
「高校時代から毎年、夏休みに行っていた海外の短期留学、大学時代に行かせたホームステイのお金を足したら、さらにとんでもないことになりますよ。私の実家も当時は裕福でしたので、お金の事なんて考えていませんでした」
これだけ使ってしまったために、老後資金はほとんどない。
「愛情と手間をかけてやったのに、娘はまともに仕事に就かない。せめて夫以上のランクの会社で働いてほしいのに、アパレルだとか、化粧品だとかのチャラチャラした会社に入っては、ブラックな職場環境を理由に辞めている。人様に言えない勤務先なんて、恥ずかしいですよ」
【貯金はあと200万円。頼みの綱の娘は非正規雇用で年収200万円以下~その2~へ続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。