“マザコン”の一言に、目の前にリモコンが飛んできた
結婚後は、同棲中からの大きな変化もなく、夫は義母と美貴さんのどちらかを優先したりはしなかった。しかし、いつまで経っても対等のまま。義母との関係は美貴さんが我慢できるかにかかっていた。そんな我慢をお構いなしに、義母は同棲中から始まった敵対心を小出しにしてきたという。
「お互いの仕事が忙しかったから、籍を入れた後に落ち着いたら新婚旅行を考えようとなっていたんです。それなのに、義母が新婚旅行を家族旅行にしようとして、行きたい旅行先を伝えてきました。それにも腹が立ちましたが、よりムカついたのは夫が『必ず休みを取るよ』と笑顔で言っていたこと。私は新婚旅行は仕事に無理が生じても行きたいと言ったのに、そのときは『今は無理を言える時期じゃないから』と突っぱねたくせに」
義母に強く言えない美貴さんの怒りはすべて夫に向かってしまう。
「ケンカの中で、思わず『マザコンは気持ち悪いよ』と言ってしまったんです。夫は『母親を大事だと思っていることを気持ち悪いなんて言うな!』と叫びながら、身近にあったクッションやリモコン、ティッシュケースなどを私に投げつけてきました」
そこから現在も美貴さん夫婦は冷戦状態で、別々の部屋で暮らしているという。
マザコンになる一因として、幼少期の母親との距離感をうまく掴めていないまま大人になったことが挙げられる。過保護や甘やかしなどで子どもの自立心が養われなかったことが要因だという。母親のことを大切に思うこと自体に、子どもとしておかしなところはない。しかし、親よりも自分で選んだ相手(他人)を大切にできないのは、精神的な自立ができていないという可能性が高い。美貴さんの夫は、自分の選択した相手よりも母親を選んだのがその証。そのことに夫本人が気づけない限り、美貴さん夫婦が改善するのは難しいだろう。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。