子どもにどこまで期待していいのか。上限がわからない
両親とは別々に定期的に連絡を取り合っているものの、離れて暮らしていることもあって、親のことを考える時間は少なかったとのこと。しかし、今振り返ると、康則さんにもある価値観が芽生えていたと振り返ります。
「いつからそうなったのか、同僚や先輩に出身大学を聞いてしまう自分がいました。学歴で判断していることを知られてしまうと軽蔑されることはわかっているんです。だから口にすることはないけど、自分よりできるかどうかを確認することがクセづいていました。何か自分が仕事で劣っている箇所があると、そこで安心するようになっていました。自分よりも優秀なら仕方ないと、違うならまだ大丈夫だと、この人よりも上の部分があると思いたかったんでしょうね」
現在も自身の子育てで奥さまと揉めることが多くあるそうです。
「私のような価値観を持たないためには、自分と同じように育ててはいけないという思いがあります。でも、自分はちゃんと育ててもらえたという思いをどうしても否定できなくて。上の子は小学生なんですが、本人が諦めそうになっていることをできるように手伝ってしまいます。でも、それが諦めるという子どもの意志を尊重していないと、嫁との言い合いになっているところでもあって。今は何にでもなれる時期なのに、いけないことだと思えないんですよね。せめて息子にだけは。でも、それも女性軽視の考え方なのかな……。何が正解かわからなくなってしまっています」
「子育てに正解はない」とは言いますが、「マニュアルが欲しい」と康則さんは語ります。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。