老後を過ごしたいのは夫ではない
幸三さんに報告をすると、「これはウチの会社の元役員です」と驚いていました。
男性の年齢は73歳。妻とも幸三さんとも全く接点がない管轄の役員で、明治政府の元勲の末裔とも言われている有力者だそうです。
「なんで妻が元役員と一緒にいるんだ?」と首をかしげながら、「この報告書、私が持っていたら妻との仲が決定的に悪いものになってしまう。しばらく預かってください」と幸三さんがおっしゃって、私たちのカウンセリングルームを出ていきました。
その3日後、幸三さんから「妻はあの役員の愛人だったんです」と連絡があったのです。
幸三さんはあの後、親しい同僚に「〇〇さんって、ウチの女房と接点あったか?」と聞いたら、同僚はハッとして「幸三、あれはマミちゃん(妻)の若い頃の話だ。今更蒸し返すのはやめたほうがいい」と言った。
幸三さんはさらに同期入社の友人達に聞くと、皆、様子がおかしい。そこで、寿退社した同期の女性に連絡すると、「マミちゃん(妻)は、〇〇さんと不倫の恋をしていたのヨ」と教えてくれたという。
その関係は、結婚後も続いており、幸三さんは「知らぬは亭主ばかりなり」という状況だったという。
「元同期の女性は、“幸三君が今でいうモラハラでしょ。だから私もマミちゃんからずいぶん相談されたり、〇〇さんも助けになっていたみたいよ”と言っていました。あと、私は息子が高校時代に反抗期になったとき、“反抗する息子に学費は払わない”と言い、そのまま忘れてしまっていたのですが、その費用も元役員が払っていたそうです」
幸三さんは聞けば聞くほど“一本気”というか、物事を自分のいいように解釈をするようなところがあると感じました。妻はずっとそれに耐えており、老後は元役員と過ごそうとしていたのではないかと推測されます。ちなみに元役員には子供はおらず、妻は5年前に他界しているとか。その日はそれで話が終わったのですが、その1か月後、幸三さんから再び連絡がありました。
「とりあえず、私から妻に離婚を言い渡しました。すると、“あらそう”と普通に受け取って、離婚届けにサインをしてくれたのです。息子に連絡したら“ママもパパも頑張ったよね”と笑っていました。届はまだ提出していないのですが、妻からは“パパも気付いているみたいだけど、私は○○さんを看取るつもり”と言って出て行ったのです。とはいえ、私も熟年離婚をされてしまったと会社に言いたくはないので、65歳まで届を出すのはやめます。私自身、妻に対してすでに愛情がなかったのかもしれません」
熟年離婚と言うと、妻から夫へ言い渡すイメージがありますが、最近は夫から切り出すことも増えています。その背景には妻の経済的安定や、浮気があるケースがあることが多々あります。
探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/