
竹中半兵衛ふたつの墓所
ライターI(以下I):『豊臣兄弟!』第23回で、菅田将暉さん演じる竹中半兵衛が亡くなりました。秀吉(演・池松壮亮)の家臣たちに囲まれて、遅咲きの桜でしょうか、花びら散る中での美しい最期でした。縁あって秀吉のもとに集った仲間たちが揃っていて、なんだか目頭が熱くなりました。ここ最近で一番泣きました。
編集者A(以下A):竹中半兵衛が亡くなったのは6月ですから、現代の暦では7月。遅咲きってことはないと思われますが、今回はそんな野暮なことはいいっこなしです。半兵衛は三木城攻めの最中に亡くなっていますから、あの高台の場所は、平井山の陣中ということになるかと思います。先日、現地に行ってみましたが、太閤道や最期を迎えた眺望のよい場所だと思われる主郭跡など、現地の現況がドラマの中でかなり忠実に再現されているようで、感慨深かったです。木々の間から見る三木(南西に三木城)の町が、劇中の陣中からの眺めと同じ場所で撮った? と思うくらいのアングルでした。それをVFXで合成したんでしょうか。
I:ああ、そういう話を聞くと、私も三木に行きたくなりますね。

A:さて、竹中半兵衛の墓所ですが、「秀吉本陣跡の平井山」のふもとに位置し、のどかな田園風景の一角に白塗りの練塀に囲まれて建てられています。周囲には「軍師竹中半兵衛最期の地」という幟がはためいています。羽柴秀吉の与力とはいえ、三木合戦のさなかに病死した三木の人々にとっての敵将への供養を地元の方々は受け継いでこられたようです。墓所の傍らには、「参詣者の皆さま」と地元の自治会名で発せられた説明板のほかに「竹中半兵衛の墓」の説明板があり、「一世の軍略兵法家として知られた竹中半兵衛は」で始まる説明には、半兵衛が亡くなった際に「秀吉はお先まっくらと人前をはばからず遺体にとりすがったといわれます」と書かれています。今も命日には毎年、地元の方々による供養が行われているとのことです。
I:地域の方々が熱心に供養されているのですか。頭が下がりますね。
A:半兵衛の墓地には、平日にもかかわらず、何人もの人がお参りしていました。皆さん、マナーよくお参りされていて、中には飲み物や線香を携えて訪れる人もいるようでした。大河ドラマを見て私と同じように半兵衛の墓参りをしたいと思ってこられたのか、あるいは今も軍師竹中半兵衛の生きざま、知略に憧れを抱いてお参りにこられたのかなと思いました。心の中で思う「同志感」が心地よいですね。中には墓前で踊りを奉納されている方もいました。

I:地図を見てみましたが、行きやすい場所、というわけでもなさそうですね。
A:確かにアクセスがいいとは言えない場所ですね。墓参のために用意された駐車スペースもありません。周囲の道路は車が一台通れる程度なので、しっかりお参りしたい場合は、徒歩5分ほどの「秀吉本陣跡」に設けられた駐車場に車を止めるのがいいかと思います。駐車場への道には門があり、17時で閉鎖されますので、夏季は要注意です。それにしても450年以上も前の武将の墓参に来られる方がこれほど多いとは、と思いました。
I:自分だって行ってるじゃないですか。

A:実は、三木市内には竹中半兵衛の墓所がもうひとつあります。秀吉本陣のある平井山とは山中で地続きのようなのですが、実際に訪れるには、山道はありませんので車で10分ほど移動しなければなりません。場所は、市内にある栄運寺の裏山に位置します。三木市のホームページには「あまり知られていない」と記されていました。その記載のとおり、裏山への入り口にこそ、「竹中半兵衛の墓 ボランティア友の会」という看板がありますが、藪の中を登り始めると、もうほとんど獣道です。時折、ファイルに入った手製の案内板があるのですが、これがかなりわかりにくい。蜘蛛の巣が多くて、あまりお参りする人も多くはないという印象です。ネットの過去情報によると、途中で「竹中半兵衛墓→」という矢印入りの木製看板があった時期もあったようですが、今はありませんでした。
I:気軽には到達できない場所なのですね。
A:最初はすぐに場所がわからなくて、山道の突き当りにある行者堂と呼ばれるところまで行ってしまいました。実はもっと手前で右に進む道があったんですよね。あとで気づいて行ってみたら、道を逸れてからほどなくして開けた場所に出て、そこに半兵衛のものと伝えられる墓がありました。裏には「天正七年六月十三日」の文字がうっすら残っていて、感慨深いものがありましたね。墓の向かいに塚のようなものもありましたが、何かはよくわかりませんでした。平日ということで、竹中半兵衛の墓地に静かにお参りできたのは良かったです。
I:なかなか貴重なお参りになりましたね。

●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり











