首に十字のネックレスをかける高山右近(演・市川知宏)。(C)NHK

ライターI(以下I):『豊臣兄弟!』第42回です。十字のネックレスをつけた高山右近(演・市川知宏)が秀吉(演・池松壮亮)に召喚されました。秀吉は「召し出されたわけは、わかっておろうな」とドスの利いた声で問いただします。

編集者A(以下A):このくだり、『豊臣兄弟!』42回目にして、日本の歴史の中でも極めて重要な場面を描いています。重要ですので、秀吉の台詞を改めて整理します。

高山右近。所領を捨てるか、信心を捨てるか……今この場で決めよ。

南蛮人どものやり口は決まっておる。まずバテレンを送り込んで民を手なずけ、国を割る。キリシタンとそうでない者を争わせ、国が疲れ果てたところへ軍勢を送り込み、丸ごと乗っ取るのだ。かのルソンがそうであったと聞く。

この日の本を、第二のルソンにはさせぬ。わしはこの国を守らねばならぬのだ。

わしは九州で目の当たりにしたのだ。日本人を奴隷として売る商人も、長崎を奴らに寄進した大名も、すでにたぶらかされ、国を奪うための手駒となっておる。見過ごすわけにはゆかぬ。

I:信長(演・小栗旬)も秀吉もキリシタンには寛容でした。信長は安土にセミナリヨ(神学校)の設立を許可していましたからね。それが一転、「伴天連追放」に転じたのは、九州でよほど危機を感じる現実を知ったということでしょう。

A:すでに当欄でも言及していますが、九州のキリシタン大名大村純忠が、長崎の地をイエズス会に寄進していました。当然、反大村陣営と小競り合いが生じるようになりますから、イエズス会は長崎の要塞化に着手します。秀吉は九州平定のために九州に出陣して、危機を目の当たりにしたのだと思われます。もし、そうした動きが広がったら――。高山右近の領地高槻では、半数以上の領民がキリシタンだったといわれています。劇中で指摘されたように、黒田官兵衛(演・倉悠貴)、蒲生氏郷、小西行長など秀吉配下にはキリシタンがたくさんいました。官兵衛ら一部は、秀吉の棄教の命を受け入れましたが、高山右近のみ、頑として受け入れずにいたという段階です。

I:織田家にしても徳川家にしても、一向一揆との戦いを通じて、宗教勢力との戦いがいかに過酷なものに発展するかを把握していました。秀吉は九州で、その恐怖が意外に近づいていることを把握したのですね。

A:晩年の秀吉を「老害」などと揶揄する向きもありますが、日本の植民地化を防いだといわれる功績は讃えてよいのではないかと強く思います。『豊臣兄弟!』を楽しみにしている子どもたちは、高山右近と秀吉のやり取りを記憶にとどめておいて欲しいと思います。

●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2026年
11月号

サライ最新号

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Youtube
  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

花人日和(かじんびより)

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店