当代随一の陰陽師として名声を極めた、安倍晴明
安倍晴明(あべのせいめい・921-1005)は平安時代の陰陽師(おんみょうじ)。その出自は詳らかではないが、若い頃より陰陽道(おんみょうどう)を学び、占い・天文・暦などの編纂(へんさん)をおこなう陰陽寮(おんみょうりょう)に所属した。
花山天皇(かざんてんのう)、一条天皇、藤原道長などの信任を得て、当代随一の陰陽師として名声を極めた。
伝承のなかの晴明は、「式神(しきがみ)」と呼ばれる鬼神を自在に操り、悪鬼や悪霊を次々に退治するヒーローである。そのヒーローに敵対するのが、アウトローの陰陽師、蘆屋道満(あしやどうまん)だ。
晴明を蘇生させた、師匠の伯道上人
晴明と道満はことごとく対立し、たがいの首をかけて対決する。この対決で晴明は敗れて殺されてしまうのだが、晴明の師匠の伯道上人(はくどうしょうにん)が「生活続命(しょうかつぞくみょう)の法」という術を用いて晴明を蘇生させる。復活した晴明は再度道満と対決しこれを殺したという。
その際、師匠の伯道上人は晴明に「大酒を飲むな、賭けをするな、女に心を許すな」という陰陽師として守るべき訓戒を与えたという。この逸話は伝説の域を出ないが、晴明は実際に心身の健康に注意を払ったのだろう、当時としては驚異的な長寿の85歳まで生きている。
晴明の一代で安倍氏は陰陽道の権威となり、長く栄えることとなった。
文/内田和浩