オランダ、アムステルダムの中心に位置するレンブラント・ハウス美術館は、レンブラントが1639年から1658年にかけて実際に暮らした家を利用した、世界で唯一のレンブラント専門の美術館です。レンブラントによるエッチング(腐蝕銅版画)の世界有数のコレクションを中心に、同じく素描作品、さらに彼と関連の深い、あるいは、その強い影響を受けた芸術家たちの作品を収蔵しています。
一方、国立西洋美術館でもレンブラントのエッチングを重点的な収集の対象としており、代表作《三本の木》など20余点の作品を所蔵しています。

《書斎の学者(ファウスト)》
1652年頃 エッチング、ビュラン、ドライポイント
国立西洋美術館蔵
国立西洋美術館で開催の「版画家レンブラント 挑戦、継承、インパクト」は、この2つのコレクションを中心に、レンブラントのエッチングと、それが同時代の及び続く時代に与えた影響を検証する展覧会です。(7月7日~9月23日)
本展の見どころを、国立西洋美術館の主任研究員(本展担当)、中田明日佳さんにうかがいました。
「1606年、オランダのレイデンに生まれたレンブラントは、17世紀オランダを代表する芸術家で、《夜警》などの大作で知られます。版画制作にも情熱を注ぎ、エッチングと呼ばれる技法に取り組みました。
16世紀以前のエッチングでは、直線優位で、ともすれば単調な線描表現が基本となっていました。ところが17世紀初頭、オランダの作家たちの中から、伝統を逸脱する自由な表現を試みる動きが現れます。レンブラントは自身もそこに参入し、やがて牽引者としてエッチング技法の可能性を拓いていきました。

《自画像、口を開けた顔》
1630年 エッチング レンブラント・ハウス美術館蔵

《アムステルダムの眺望》
1641年頃 エッチング レンブラント・ハウス美術館蔵
スケッチ風の自在な線から、面的広がりを表す線のネットワークまで、その表現は多彩さを極めます。ニュアンスに富む陰影のグラデーションを追究する中で、後期には、しっとりとしたインクの滲みを生み出すドライポイントの導入や、和紙など東洋の紙への印刷も頻繁になされるようになりました。

1900-03年 ドライポイント 国立西洋美術館蔵
レンブラントは、わがものとした革新的な造形語彙を駆使して、野心的に版画制作に挑み、その作品は、ゴヤやマティス、ピカソを含む後世の作家たち、さらにユゴーやゴーティエら近代の文豪たちにも重要な感化をもたらします。本展では、こうしたレンブラントの版画制作における様々な挑戦と、その継承、インパクトを、版画作品はもちろん、書籍やポスターなども交えて見ていきます」

《三本の木》
1643年 エッチング、ドライポイント、ビュラン
国立西洋美術館蔵
レンブラントの芸術は《夜警》だけでは語れないことが分かる展覧会です。会場にぜひ足をお運びください。
【開催要項】
版画家レンブラント 挑戦、継承、インパクト
会期:2026年7月7日(火)~9月23日(水・祝)
会場:国立西洋美術館 企画展示室
住所:東京都台東区上野公園7-7
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
公式サイト:https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2026rembrandt.html/
開館時間:9時30分~17時30分、金・土曜日は~20時(入館はいずれも閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし7月20日、8月10日、9月21日は開館)、7月21日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝











