マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の用語や問題を解説するシリーズ。

新卒採用は企業の未来を支える重要な施策の一つですが、多くの企業が「即戦力化」に課題を抱えています。新卒社員はポテンシャルは高いものの、実務経験がないため、適切な育成環境がなければ、期待通りの成果を上げることができません。そこで、本記事では、新卒社員を早期に戦力化するための仕組みづくりについて、育成、フォロー体制までを具体的に解説します。

新卒社員を戦力として活躍させるためには、これから解説する2つのポイントを押さえることが重要です。

ポイント1:企業文化への適応(ルールの浸透)

新卒社員が企業文化に馴染めないと、せっかく採用しても早期離職につながる可能性があります。社内の価値観や働き方を理解し、組織の一員として活躍できるようにすることも戦力化の一環です。

そこで、まずは「組織」について解説します。

組織とは、「一定の共通目標を達成するために、成員間の役割や機能が分化・統合されている集団」と辞書では定義されています。そして、組織は「機能体」と「共同体」に分かれます。

機能体とは、そもそも外部に目的があって、それを達成するために作られた組織です。例えば、社会に価値を提供することで利潤を上げるために存在する企業や、戦争などの有事に備えるために存在する軍隊などです。

共同体とは、組織内で個人の心地良さ、好みの充足を満たすために作られた組織です。例えば、家族、地域社会やクラブ、同好会、そしてネットでつながるSNSやフォーラムも、これにあたります。本来は、血縁、地縁などをもとに、自然発生的に作られる組織ですが、インターネットによる知縁(共通の知識が繋ぐ縁)をもとに、意図的に作られる共同体も増えています。

まとめると、機能体とは目的達成組織であり、共同体とは居心地追求組織です。

新卒社員は今まで共同体の組織に属している経験が長く、機能体の組織体の経験が少ないため、まず会社が何を目的としているのかを伝え、組織の一員としてのあるべき姿(=ルール)を明確に伝える必要があります。

近年、多様性や個性、自由の尊重というワードが頻繁に使われており、多くの新卒社員に誤解を与えたり、早期離職につながったりするケースが見られます。しかしながら、多様性や個性を大切にすることは、あくまでも組織の一員として最低限のあるべき姿を揃えた上でのものであり、それをまず理解させる必要があります。

そのため、新卒社員への研修では、以下のような内容を組み込むと効果的です。

・会社理解(企業理念、会社ルールの理解、合わせる力の重要性)
・ビジネスマナー研修(メール、電話対応、報連相の重要性)
・コミュニケーション研修(ロジカルシンキング、プレゼンテーションスキル)

ポイント2:期待値の適正化、明確な目標設定・管理

企業側と新卒社員の間で「何を期待するのか」「目指す姿」を明確化することも重要です。また、時間軸が長い(1年後、3年後の目標)ことや「即戦力」を求めすぎるとミスマッチが生じる可能性があるため、「成長しながら戦力化する」という考え方を持つことが重要です。

業務の手順を伝え、一通りの流れを理解できているようであれば、実務を行う際は本人に任せて行動させることが大切です。

自身の業務に入る際は、迷う時にはいつでも声をかけても良いことを事前に伝え、サポートする姿勢を示しておくと新入社員も安心して取り組めます。

3か月後の目指す姿を明確にし、それを1か月、1週間に分解し、PDCAを回すことにより、成長感を与えることが重要です。不足に対しては、過度に見守るのでなく、本人に考えさせることで本人の成長に繋げられます。

新卒社員の成長を阻害する5つのNG

ここでは、新卒社員の育成で注意すべき5つのポイントについて解説します。

1.目的のないOJT(仕事は見て覚えろという曖昧さ)

何となくOJTをするのではなく、体系的な教育設計が必要です。「先輩の仕事を見て学んでね」という姿勢では、新卒社員は何を学ぶべきか分からず、成長が遅くなります。

OJTごとに学ぶべき項目を設定し、具体的なOJTプログラム を用意し、「1か月目は〇〇を学ぶ」「2か月目には〇〇を実践する」などのステップを明確にすべきです。

例:営業職の場合「1か月目は電話対応、2か月目でアポ取り、3か月目で訪問同行」など。

また、ステップを見える化(進捗確認表等活用)することで成長を認識させることも重要です。

2.期待と現実のギャップを放置する

新卒社員が「思っていたのと違う」と感じないように、短期目標と長期目標を分けて設定することも必要です。例えば、採用時に「やりがいのある仕事」と説明したのに、実際は 単純作業ばかりだと不満がたまるのも当然です。

現在求められる業務に集中することが、将来自分のやりたいポジションにつながるということを説明すれば、現在の業務と将来の業務をリンクさせることができます。

3.フィードバック不足

「できている部分」と「改善すべき点」をセットで伝え、成長感と不足の認識をさせることにより、自分の不足を埋めるためには何を改善すべきかを考えさせることができます。

「頑張ってるね!」だけでは 何が良かったのか分からず、成長につながりません。
「〇〇ができているのは良いね。次は△△を意識するともっと成長できるよ」のように、できている部分と改善すべき点を明確に伝えることが重要です。また、週1回のフィードバック面談を取り入れることも効果的です。

4.仕事の丸投げ(いきなり難しい課題を与える)

「段階的な成長」を意識し、小さな成功体験を積ませることが重要です。成長とは「出来なかったことが出来るようになること」であり、小さな積み重ねが成長につながります。

「新卒社員でも自走力を持ってほしい」と思うあまり、最初から難しいタスクを丸投げするのはNGです。「どこまでを自分で考え、どこから上司に相談すればいいのか」を明確にしないと、新卒社員は路頭に迷ってしまいます。

「最初は簡単な業務→徐々に難易度を上げる仕組みを作る」ことで、「ここまではやってみよう」「ここからは上司に相談しよう」と自分で考えるべき領域が明確になり、徐々に自分で考える領域を広げることができるようになります。

5.フォローをしすぎ(過保護すぎる育成)

自分で考える力を育てるために、適度な距離感を保つことも必要です。「ミスをさせたくない」と思うあまり、すべて手取り足取り教えると、自分で考えられない社員 になってしまいます。

「ヒントは与えるが、答えは言わない」 という指導が大切です。

例:「この問題、どうすればいいと思う?」と問う。→新卒社員が答えたら「なるほど、〇〇の視点も考えられるね」と導く。

過度なフォローを避け、「失敗から学ぶ機会=成長の伸び代」を与えることが大切です。

まとめ

新卒社員を戦力にするためには、「組織に合わせる力の醸成」「明確な目標設定と管理」の仕組みが重要です。この2つを念頭に置いた上で、手順やツールを活用していきましょう。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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