マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の問題を解説するシリーズ。今回は、部下の成長を阻害させる上司の行動について考察します。

はじめに

部下育成は、組織の発展と個人の成長を両立させるうえで重要な経営課題です。業績改善を追求する中、部下の育成に目を背けると組織強化は採用にかけるしかありません。ご経験があるかと思いますが、「採用」は採用してみないと評価ができません。履歴書や職務経歴書、面接だけではその方の適正や実力を正しく判断できないのが実情だと思います。その意味において「採用」は「博打」のようなものであり、「会社の持続的発展」は「部下の成長」にて実現していくしかなく、部下育成のマネジメント向上が競合他社に対する競争優位性構築となります。

今回は良かれと思って行っている上司の日々のマネジメントが逆に部下の成長を妨げている事例をご紹介し、正しい部下育成のマネジメントをご案内いたします。

(1)一個飛ばしの指示

「一個飛ばし」とは社内におけるコミュニケーションスタイルです。「社長が直部下の部長を飛び越して課長に指示を出す」などのように一個下の階層を飛び越した指示/報告の仕方です。

お客様からの依頼に速やかに対応するためには直部下を通じた指示だと時間が掛かる、直部下を通した指示だと現場に正しく伝わらない、このような背景から「一個飛ばし」を行っている会社はとても多いです。皆様の会社ではいかがでしょうか?

このマネジメントが招く一番の弊害は直部下が育たなくなることです。我関せずの指示が増えれば増えるほど直部下から当事者意識が失われていきます。直部下の成長にブレーキがかかるほど上司は現場仕事に忙殺され、上司からも中長期的な経営視点が奪われます。

(2)規則違反を見逃す

会社には出社時間や身だしなみ、挨拶、整理整頓など、経験やスキルがなくても気持ち一つで守れる規則が複数存在します。皆様の会社ではこのようなルールにおける違反を発見した際、漏れなく部下へ指摘できていますでしょうか?

部下と接する時間が長くなればなるほど上司の心に部下への情が生まれるものです。この情から「毎日一生懸命に頑張っているから今回の違反は大目に見てあげよう」「大人になってまで一つ一つのルール違反を指摘していたら、上司である自分自身も疲れるし、部下のやる気を削いでしまうので、よっぽどの時だけ指摘はするようにしよう」などと部下の規則違反を敢えて見逃しているマネジメントは多くの会社で散見されます。

この「規則違反を見逃す」マネジメントも部下育成を阻害します。規則違反を許された経験を積んでいく部下は、いずれ上司の指示を自身で守る/守らないを選択するように変化します。上司の指示を選択する仕事ぶりでは部下は正しく成長できません。

(3)事あるごとにアドバイスをする育成手法

部下の成長を心から願う現場経験豊富な上司ほど、部下へ頻繁にアドバイスをする傾向があります。しかしながら、事あるごとにアドバイスを与えると部下の成長はストップします。 

アドバイスを頻繁に受ける部下は、何か困った時にすぐに上司に助言を求めるようになります。都度ほしい助言を手にする部下は、自身で考えて行動するより、上司のアドバイス通りに仕事をした方が効率もよく、安心できるからです。

部下には失敗させたくないとの思いから行う頻繁なアドバイスが部下を受け身姿勢に変化させてしまいます。

(4)プロセスを褒める育成手法

「人は褒められて育つ」との考えを実践されている上司は多くいらっしゃいます。人には常に承認欲求を満たしたく、他者からの存在意義を認識したい本質があります。「褒められる」ことは気持ちよく、「褒める」ことは相手を尊重している証しになります。「人は褒められて育つ」とのマネジメント手法自体は誤りではありません。

しかしながら、「褒める対象」を見誤ると部下の成長は止まり始めます。生活の糧を得るために働いている職場において、社員が頑張るのは当たり前です。頑張って成し遂げた結果が給与となります。生活の糧を得る上での事実、仕組みを正しく認識できない部下を生んでしまうことになります。日々の仕事ぶりを労ってもらう経験を積む部下は労ってくれるから頑張る、労ってもらえないと頑張れないという意識に変化します。結果を成し遂げる手前のプロセスを褒められると、その部下はそこで満足してしまいます。結果を出すよりその手前のプロセスをアピールするように変化してしまいます。

(5)上司が部下の目標を設定しない

転職市場が活況を呈している中、部下には少しでも長く一緒に仕事をしてほしいと考える上司は多くいらっしゃいます。心理的安全性の確保も組織運営上大きなテーマとなっているので、今まで以上に上司のマネジメントが部下自身を尊重する傾向にあります。部下自身のやりがいを尊重するあまりに、上司が部下に目標を設定しないマネジメントが多く見られます。部下自身に目標を設定させるマネジメント、評価の仕組を取り入れているケースは多く見られます。

個を尊重すること自体は当然必要ではありますが、「上司が部下の目標を設定しない」マネジメントは、部下の成長に支障を与えます。部下自身が自分なりに設定した目標を達成できた時、部下自身が感じる達成感と上司評価とが一致しなくなり、評価に不満を感じる部下を生んでしまいます。結果を出し続ける主体性ある部下ほど定着しにくくります。

まとめ

識学社はこれまでに4,400社ほどのクライアント企業をご支援して参りました。上司が日々良かれと思って行っているマネジメントが逆に部下の成長を阻害している事象に多く触れてきました。

上司のマネジメントは、その上司が積んできた経験や獲得/吸収してきた知識が源泉となります。人の経験や知識は一様でないのが当たり前なので、上司によってマネジメントスタイルが異なることは必然です。

この上司のマネジメントの癖を矯正しマネジメント品質を標準化することは、部下にとって成長環境が整備されることになります。上司のオリジナルなマネジメントスタイルに依存している組織運営では業績の継続的発展は望めません。会社、組織の持続的発展の実現においてマネジメントを仕組化していくこと、属人性を排していくことは必須となります。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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