マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の問題を解説するシリーズ。今回は、新人の育て方について考察していきます。

はじめに

新入社員は将来の貴重な戦力です。「人手不足」「人的資本経営」というワードが飛び交う昨今、「とにかく丁寧に育ててあげよう」、「手取り足取り指導してあげよう」という形で新人育成を行うリーダーの方も多いのではないでしょうか。それにもかかわらず「なかなか新人が育たない」「自分の指導方法がよくないのか」と悩むリーダーの方からの相談もまたよく耳にします。

今回は、識学理論を通じて正しい新人育成の考え方についてお伝えします。

「手取り足取り」の弊害

最初に、新人を手取り足取り指導する育成方法の弊害を考えてみましょう。

自ら考えなくなる

手取り足取り指導した結果、良い成果をあげられたとします。その新人が次の仕事に向かう際、どのような意識状態になりそうでしょうか。「次の仕事も上司が正解を教えてくれるだろう」と自ら考えることを放棄してしまう可能性があります。このような状態が続くと新人が自分で問題を解決する能力を育てる機会を奪ってしまい、いわゆる「指示待ち人間」をつくりだしてしまうことになりかねません。

新人が「どのようにしたら良いでしょうか?」と正解を取りに来る質問ばかりをしてくる場合は、注意が必要です。「このように進めたいですが良いでしょうか?」といったん自分で考えられるように指導しましょう。

自責でとらえられなくなる

手取り足取り指導した結果、悪い成果だったとします。その新人はその仕事に対して、どのような意識状態になりそうでしょうか。「自分は上司の言う通り行っただけであり、自分のせいではなく、上司の指導の仕方が悪いせいだ」と自らの責任としてとらえることを放棄してしまう可能性があります。

自責でとらえられないので、成果が悪い原因にある不足を自ら埋めようという意識にならないため、成長の速度が遅くなってしまいます。

指導者である上司に負担がかかる

手取り足取りの指導は、指導者である上司にとっても大きな負担となります。特に、複数の新人を同時に指導する場合、その負担はさらに増加し、指導者である上司自身の業務にも支障をきたす可能性があります。複数の新人が配属される部署の上司であるということは、その企業の中でも重責を担うポジションである可能性が高いでしょう。よかれと思って行っている手取り足取りの指導が結果的に企業全体の成長を遅らせてしまう要因にもなりかねません。

真のモチベーションが湧いてこない

手取り足取り指導した結果、良い成果をあげられたとします。その新人はその成果を自分の物として感じられるでしょうか。すなわち、自ら考え行った結果であるという「自己決定感」、「有能感」、「達成感」という、さらに自ら成長したいと感じる真のモチベーションである内発的動機の発生機会を奪ってしまうことになります。

育成=「教育」+「管理」

ここまで、「手取り足取り」指導の弊害をお伝えいたしました。それではどのように育成すればよいのでしょうか。識学では育成を教育と管理に分けて考えます。

「教育」とは、知識を与えること

教育とは、知識を与えることと定義しています。

与えられた役割・責任を果たすために必要な知識は十分に授ける必要があります。OJTも本人にとっては体験≒知識なので教育に分類されます。業務手順やマニュアル、商品知識、業務を遂行するにあたって決まり事(=ルール)の勉強会や先輩や上司への同席といったOJTを通じて知識を授けましょう。ゲームでいうところのチュートリアルのようなイメージです。

「管理」とは、経験させること

管理とは、経験させることと定義しています。

経験とは自ら行動し、その結果に対し他者から評価を受け、自らを変化させる活動です。すなわち、「手取り足取り」指導や先輩や上司が常に伴走する育成方法は本人の経験にはなりません。ゲームでいうところのプレーヤー自ら操作する本編のイメージです。

新人育成の際には上司、新人ともに「今は教育の場」「今は管理(=経験)の場」と意識上切り分けて行い、いつまでも手取り足取り指導してくれる(指導しなければならない)という錯覚を生じさせないことが大切です。

結果管理

育成を教育と管理に分けて考える点をお伝えしましたが、管理でも注意が必要です。

本人に経験させようとしても「手取り足取り」型の指導ではどうしてもそのやり方(経過)に口を出してしまいがちです。大切なのは目標を「いつまで」という期限と「どのような」という状態をセットにして設定し、期限までは口を出さずに本人に経験させることです。

しかし、まだ経験の浅い新人に目標設定し自走させるのはハードルが高いように感じるかもしれません。その場合は、期限を一人前より短く設定し、状態も一人前に求めるものより手前の工程で設定することです。新人自らが「ここまでだったら自分でできる」と思えるであろう期限と状態で目標を設定し、期限が来るまで口を出さない。これを繰り返すことが大切です。

競争環境

複数の新人がいるような場合は、競争環境を作ってあげることも有効です。競争環境が発生する前提条件は「ルールが明確」「役割が明確」「平等な采配」です。完全に平等な環境を作るのは難しいので、意識上自分が平等に采配されていると思える上司との適切な距離感が重要です。スポーツ競技を考えていただくとイメージしやすいかと思います。

競争環境が成立すると、実際にできている人についていこうと、自ら学びを獲得しに行ったり、優秀な新人を結果で追い抜いたりする現象が発生したりします。

正しい新人育成とは

自ら考え目標に向かって行動し、出た結果に対する評価を受け入れる。足りない部分はどうしたら埋められるのかもまた自ら考え行動する。これを繰り返すことで成長実感、達成感、自己決定感、有能感を感じ、更なる成長意欲が湧いてくる。

是非、そんな新人育成を実施し、チームの戦力アップはもとより、新人が充実した社会人生活を送れるような環境を整備できる上司となってください。識学の考え方がその一助となりましたら幸いです。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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