文・写真/ナガオヤヨイ(海外書き人クラブ/台湾在住ライター)

全国の台湾イベントを駆け抜ける日台ハーフのシンガーソングライター・洸美-hiromi-。歌を通して「日本と台湾の橋渡しをしたい」(台湾)

日本で高まる台湾熱

もう小籠包やタピオカだけではない。昨秋は日本橋コレド室町テラスに台湾の最新セレクトデパート「誠品生活」がオープンし、メディアも台湾を一気に特集した。全国各地では前年にも増して台湾イベントが開催され、どこも大盛況。台湾がグッと近くなっているというのが昨今の印象だ。

昨年、東京、茨城、宇都宮、富山、南三陸、仙台、福岡、神戸と、全国の台湾イベントを駆け抜けたシンガーソングライターがいる。日本人の父親と台湾人の母親を持つ「洸美-hiromi-」だ。

日台ハーフのシンガーソングライター・洸美-hiromi- 写真提供:洸美-hiromi-

日台ハーフのシンガーソングライター・洸美-hiromi- 写真提供:洸美-hiromi-

台北で初めて会った時、クリッとした丸い目と大きな口元とよくとおる声が印象的だった。台北駅の地下街で自らプロデュースしたライブで歌うというので見に行くと、大勢の人垣の向こうのステージで自由に楽しそうに歌う洸美がいた。やわらかなメロディーに透明感のある伸びやかな声。ピュアできれいな、そして少し懐かしいような旋律に惹かれて、若い人もお年寄りも観光客も足を止めて耳を傾けていた。

昨年7月に台北地下街で開催した「J-POP SUMMER FESTIVAL」は洸美プロデュースの音楽イベント

昨年7月に台北地下街で開催した「J-POP SUMMER FESTIVAL」は洸美プロデュースの音楽イベント

台湾育ちの洸美が生み出す独特の感性

洸美は台湾中部の台中で育った。マンガとアニメが大好きで、喋るのも歌うのも大好きな少女。台中日本人学校中学部の時に歌える声優になりたいと夢を持ち、それからは学校行事や歌唱大会でアニメソングやポップス、童謡など日本の歌を歌い、何度も表彰された。

歌手を目指して18歳で来日、音楽の専門学校で学び、作詞作曲も手がけるようになった。日本語と中国語のバイリンガルだが、日本語の方が気持ちを込めやすい。日常で感じたことや風景を織り込む詩や曲には、台湾のエッセンスが自然と染み込んでいる。

夜になると甘く香る花を描いた「夜来香(イェライシャン)」はしっとりと、台湾で楽しむお茶の時間を表現した「一杯茶(イベイツア)」は軽快に、あなたに会えてよかったという気持ちを中国語で書いた「有你真好(ヨーニーツェハォ)」は伸びやかに歌う。

「大好きな台湾のことを日本の人にもっと知ってもらいたい」と洸美は言う。中国語の歌でも日本語の歌でも、バリエーション豊かなオリジナル曲からどことなく浮かんでくる台湾の風景や日常。そこに魅力を感じるファンも多いはずだ。

「大好きな台湾のことを歌って日本の人にもっと知ってもらいたい」。写真提供:洸美-hiromi-

「大好きな台湾のことを歌って日本の人にもっと知ってもらいたい」。写真提供:洸美-hiromi-

日本と台湾を行き来しながら歌える喜び

昨年は6月の「南三陸台湾まつり」や10月に神戸で開催された「LOVE TAIWAN 2019 in KOBE」をはじめ、全国の台湾イベントで心を込めて歌った。9月に開催された「東京タワー台湾祭」ではテーマソング「麗しのアイランド」を制作し発表する機会にも恵まれた。各会場には台湾好きが多く訪れ、これまで以上に台湾への関心が高まっていると肌で感じている。

昨年7月に代々木公園で開催された「台湾フェスタ」。写真提供:洸美-hiromi-

昨年7月に代々木公園で開催された「台湾フェスタ2019」。写真提供:洸美-hiromi-

 

昨年10月に開催された「LOVE TAIWAN 2019 in KOBE」。海のそばの会場で、提灯屋タワーなど夜景が絶景だった。写真提供:洸美-hiromi-

昨年10月に開催された「LOVE TAIWAN 2019 in KOBE」。海のそばの会場で、提灯やタワーなど夜景が絶景だった。写真提供:洸美-hiromi-

台北では日本から音楽仲間を率いて4日間の「J-POP SUMMER FESTIVAL」を開催した。「一緒に歌って!」と呼びかけると大きな声で歌ってくれる台湾の熱いノリも日本の音楽への関心も嬉しく、それを日本の共演者たちが感じ取り、楽しんでもらえたのも喜びだった。

迪化街で行われたワンマンライブ。地元の人たちの心を掴んでお菓子の差し入れが絶えなかった。

迪化街で行われたワンマンライブ。地元の人たちの心を掴んでお菓子の差し入れが絶えなかった。

ライブ会場で販売するオリジナルTシャツは、本人が「シャレ」で描いたという日本と台湾の地図だ。「とても売れていることに本人が一番驚いてるんです(笑)」と洸美。このユーモアセンスと茶目っ気がまた人を惹きつける。

思わず買ってしまった人気の地図Tシャツ。見るたびにクククと笑ってしまう。

思わず買ってしまった人気の地図Tシャツ。見るたびにクククと笑ってしまう。

日本と台湾を行き来しながら最近思うのは、「音楽に国境はない」ということ。静かに聴き入ってくれる日本のお客さんも、一緒に盛り上がってくれる台湾のお客さんも、聴き手の反応はそれぞれに違うけれど、歌は一人ひとりの心に届いていると感じている。

今年は台湾を舞台にした邦画で挿入歌も

2月末に公開される新作邦画「恋恋豆花(れんれんどうふぁ)」では挿入歌を歌う。日本の女子大生と父親の再婚相手になる予定の女性が台湾を旅しながら関係を築いていくというストーリー。洸美も本人役でちらりと出演している。

モトーラ世理奈主演の映画は2月22日公開。写真提供:洸美-hiromi-

モトーラ世理奈主演の映画は2月22日公開。写真提供:洸美-hiromi-

台湾らしいおおらかさと日本らしい繊細さと感受性を兼ね備えた洸美。そのフットワークと前向きさをもって、今年もあちこちで開催されるであろう日本や台湾のライブ会場を駆け巡るに違いない。「日本と台湾の架け橋になりたい」という洸美のこれからが楽しみだ。

●洸美-hiromi- プロフィール

台湾生まれ・台湾育ちのハーフ。独特の情景描写や素直な感情表現を、透明感ある歌声と共に織りなす台湾系J-popシンガーソングライター。台湾で感じた物事や景色、中国語を織り交ぜた歌詞が特徴的。ライブをメインに作詞作曲歌唱・ラジオパーソナリティなど、日本と台湾を中心に活動。https://hiromi629.wixsite.com/hiromi/

●恋恋豆花(れんれんどうふぁ)公式サイト http://is-field.com/renren/index.html

文・写真/ナガオヤヨイ (海外書き人クラブ/台湾在住ライター)
15年間のアジア暮らしを経て、現在は台北在住。著書に「バリ島小さな村物語」「フェアトレードの時代」など。執筆、編集のほか、写真、ウェブデザインも行う。海外書き人クラブ(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。

 

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