取材・文/ふじのあやこ

近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。

「自分が親になるまで、親という存在は絶対的なものだと思っていました」と語るのは、麻友さん(仮名・34歳)。彼女は現在、静岡県で子育てを支援する地域活動などを行っています。ゆったりとした穏やかな物言いで、どんな話でも明るく笑顔で話すところから、周囲も元気にしてくれるようなパワフルな雰囲気を感じさせます。

父親は人に寄り添う気持ちを持っていない。小さい頃からずっとそう思ってきた

麻友さんは静岡県出身で、両親と1歳下に妹のいる4人家族。母親よりも、父親は10歳上で、2人の出会いはお客さんと店員だったそうです。

「母親は夜のお店でホステスとして働いていて、父親はそこのお客さんだったと聞いています。母親の父、私の祖父が50代ぐらいからずっと病気で寝たきりになっていて、小さい頃からお金では苦労したみたいで、高校を中退して家のためにすぐに夜のお店で働き始めました。だから結婚は早かったですよ。私ができた時、母親はまだ24歳でしたから」

一方の母親より10歳上だという父親の話を伺った時、明るい口調ながら、麻友さんはどこか少し言いにくそうに語り始めました。

「父親は自営でガスの配管工の仕事をしていました。そして、母と会う前に一度結婚していて、再婚だったんです。前の結婚のことはよく知りません。前の奥さんとは子供もいなかったみたいで、連絡を取っている感じもなかったので。

父親の性格は一言で表すと、人に寄り添う気持ちを持ち合わせていない、ですかね。ひねくれているし、頑固で短気。小さい頃に私が風邪をひいて寝込んでいても、まったく心配してくれなくて、私のことが見えていないんじゃないかなって思ったほどでした。父親には、人としての心、共感力がないんだとずっと思っていましたね」

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